294.アキラ、砕く。

 「や・・・、や・ど・、・・・し、宿・!! 宿主! 起きてください!! 」




精霊さんの熱烈なコールが、冷たい眠気から僕を目覚めさせる。しかし、異様な眠気と頭痛がひどく、意識がはっきりとしない。




「宿主、しっかりしてください。仕方ないですね・・・。」




そう言った途端に、身体に激痛が走り、目が覚める。




「痛ぁ・・・。ああ、おはよう精霊さん・・・。なんだか、頭がぼぉーっとするよ。」




「それもそうでしょう。なんせ今、逆さまなんですから。」




ああ、納得。だから、鶏みたいに足を固定されて、木に逆さに吊るされてるのか・・・。




「この状況、まずいなぁ・・・。」




「その通りです。」




周囲の状況をなんとか理解し、逃げようと足を動かすが、天井に靴底が氷漬けにされており動かない。




「ううううううう・・・、全然動かない。」




それでも、なんとか脱出できないかと、足にマナを集中して放電する。




『ビビビビビリリリビリビリビリビリビリッ!! 』




音を立てて、氷が徐々に解け始める。しかし、その音は周囲に大きく響き渡たる。




 すると、




「ハハハハハハハ・・・。」




どこからともなく、あの不気味な笑い声が近づいてくる気がする。まずいまずいと、まだ完全には解けきってはいない足を必死に動かす。




「ハハハハハハハハハハハハ。」




次第に笑い声が大きくなってくる。必死の抵抗により足が氷が外れる感触が伝わってくる。吊るされた上半身を腹筋でも持ち上げ、氷を叩く。




『キキ・・・パキ・・・パキ・・・パキパキパキパキッ!!』




と氷は音を立てて砕ける。次いで、身体が重力に引き寄せられて落下していく。




「ゲフッ!! 」




カッコよく一回転もできず、腹から地面に着地する。しかし、すばやくその場から、立ちあがり、ひたすら逃げる!! 




脱兎のごとく逃げる、逃げる!! 




しかし、不気味な笑い声はどんどんと近づいてくる。ここまでかと思った瞬間、閃き、魔術の電流で次々と、木に火をける。




火は勢いよく燃え広がる。この冷た気温では空気中の水蒸気は、結露になっているため、乾燥状態になる。そして、今燃やしているのは、松で燃えやすい。




それらの要因が合わさり、木は勢いよく燃える。そうすると、笑い声は徐々に遠のいていく。




気が付くと、僕は森の中を抜けていた。ハンターセンスも警告を告げず、危険は去ったと感じる。




「助かったのかな・・・。」




そう独りごとを呟くと、




「どうやら、そのようですね。」




そう精霊さんは答える。そうして、なんとか不気味な笑い声から逃れるのであった。

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