278.アキラ、緊張する。

 翌朝、クマの肉をもらいに、馬車でリフェルベ村へと向かう。村に行くという事で、テラたちも一緒に同行することとなる。


そうして、村へと出発する。村に到着すると、村人たちがクマの解体をしている最中であった。


「アキラ様。お待ちしておりました。」


そう言って、村長の娘さんたちが出迎えてくれる。それから、村の中心の広場へと案内されて、主賓席のような所に座るように促される。


すると、村中の人々が続々と広場へと集まってくる。小さな子どもからお年寄りまで、村人総出だ。


そして、村長さんが現れて音頭を取り始める。どうやら、村全体を挙げて僕をクマ狩りの立役者として、歓迎し称えてくれるようだ。


「それでは、ここでクマを退治してくださいましたアキラ殿から、お言葉を頂戴します。」


と村長からの無茶ぶりを振られる。あれよあれよと村長の娘さんに連れて行かれる。村人全員の目が僕に注視する。


こういう大勢の前での発言は、慣れていないので変に緊張してしまい、


「ははっ・・・。どうも、紹介に与りましたアキラです・・・。どもども。」


とただの自己紹介して終わる。


一瞬、シーンとその場が静かになる。内心、これはヘタをやらかしたかと思っていると、皆から大きな拍手が沸き起こる。


結果オーライだとポジティブシンキングする。


 続いて、解体されたクマ肉が続々と運びこまれる。その場は騒然となる。


「でっかいクマじゃな~~~。」


「あんな大きなクマを弓矢で仕留めるなんて、すごいお方だ。」


と様々な声が聞こえて、テラやイリスたちからも、


「おっきいです・・・。」


「アキラ、すごいじゃない!! 」


とお褒めの言葉を頂く。そして、その肉は豪快に焼かれていくのであった。クマの良質な脂のいい匂いが立ち込める中、


狩りに同行した村人が僕の雄姿を熱弁している。


「アキラ殿の指示で、クマを追いたてると、目論見通りクマはアキラ殿の方に逃げていく!! それをアキラ殿は臆さず、一発で弓矢で仕留められた!! 」


と多少の拡大表現はありつつも、大衆に説明する。すると、村の子どもたちから、羨望の眼差しで見られる! 


うわっ! 眩し! と純粋無垢なキラキラとした目にもどかしさを覚えつつも、少し照れるのであった。


そうこうしているうちに、クマの肉はこんがりと焼かれて、村人全員と僕たちに振舞われる。初めてのクマ肉を前にする。


ほのかに漂ってくる香ばしい匂いに、食欲君がそそられる。そして、ガブリと齧りつく!! その味に驚く。


「なにこれ! うみゃい!! クマってこんなにおいしかったのか!! 」


予想に反したその味に思わず、声が出てしまう。


アルテシアたちも、そのおいしさに驚きを隠せない様子である。そして、僕はその肉をすぐに平らげてしまうのであった。

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