226.アキラ、塩せきする。

 塩が入った壺を両腕に抱えながら、森を抜けていく。ミユは天秤はかりを大事そうに両手で抱えて、僕の後をついてくる。




10kgはありそうな壺を抱えているので、上腕のいいトレーニングになりそう。そうして、肉が待つ家路に帰る。




「ガッツ! ガッツ! ネバー! ガッツ! ガッツ! 」




そんな言葉を呟きながら、弱音を吐きそうな腕にガッツを込める。




森を抜け、家が見えて来る。最後の力を振り絞って進む。あと一息! あと一息! 




そして、ようやく家に着く、その頃にはもう夕方であった。




「た、ただいま~。塩買ってきたよぉ・・・。」




と僕は塩の壺を置いて、イスに倒れ込むのであった。ミユも天秤を置いて、イスに座る。お疲れのごの様子である。




それでも、買ってきた天秤をいじりながら、嬉しそうにしている。ミユが嬉しそうで何よりだ。




一方で、僕達が村に行ってる間に、5匹のシカすべてはきれいに解体されていた。皆、シカの解体慣れたよね・・・。と彼女らの適応力の高さに驚かされる。




 しばらく休憩した後、解体した4頭のシカ肉に塩を漬け込む。後は、天日干ししたり、燻製にしたりと、いろいろとやってみればいい。




そうして、塩を漬け込んだら風通しのいい場所に、1頭分の肉を干す。これは干し肉。その一方で、壺に3頭分の肉を別々に漬け込んでいく。




これは、ふたつは塩漬け肉、もうひとつは燻製肉。これで当面のお肉の心配はいらないはずだ。塩って本当に大事やね・・・。




一層のこと岩塩でも見つけた方が、いろいろと便利じゃないかと思い始めるほどである。




そうして、シカ肉の加工がすべて終わる。手が塩でシワシワになっていた。すると、テラがペロっと指をなめる。




「アキラさんの手、しょっぱいです。」




と顔をしかめる。まぁ、さっきまで塩、揉みこんでましたからね。




そんな光景を見たのか、ハチが、指を舐めて来る。ああ、そんな一度に舐められるなんて、ああああああああ。




と興奮しそうになるが、そこはスキル【平常心】君が、どうどうと感情君を抑えてくれる。ははは、うい奴め・・・。




彼女らは、微笑ましそうに見ながら、残っていたシカ肉を使って、今日の晩御飯を作り始める。




ハチに手を散々舐められる。ハチめ・・・、しょっぱいの好きなのね。ハチにも、今日のご飯として、シカ肉を食べさせる。




そうして、家の中に塩と肉の香ばしい匂いが漂うのであった。

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