220.アキラ、膀胱を欲す。

 鹿呼び笛、アイヌの言葉でイパプケニというものを、作ることを思いつく。作ったのは去年のことで、なんとなくだが思い出す。




「たしか、その時は、凸みたいな木の板にビニール袋を付けて、それで両端を紐で巻いてたっけ。でも、この異世界で、ビニール袋なんてないし、元は何で作ってたっけ・・・。思いだせない。」




動物の内臓を使っていたのを使っていたのは、なんだっけか・・・。と思いだせずに十分ほど、考える。




あともう少しで出そうなんだ。そう僕が苦戦している一方で、連れてきていたハチが、用を足していた。ハチはおしっこをしていた。




「おっしこ・・・!尿・・・、あっ! 膀胱だ! 」




それをきっかけに思いだす。思いだしてきたぞ、きたぞ!! いる物は、凸とした板とシカの膀胱、それに紐。さてさて、シカの膀胱はどう入手しようか。




捕らわれているオスシカと目が合う。




「まぁ、状況的に考えて君のだよね。」




と呟くと、心なしかオスシカは少し怯えた様子を見せる。まぁ、思考ラーニングが完了するまでは、生かしてやるからそう怯えなさんな。




そう思いながら、ハチをその場で見張らせて、僕は道具を取りに一旦家に戻る。




「ただいま~。」




と家についたそばから、ガサゴソと鉈やら寝袋を取り出していく。




皆が全員、不思議そうに見ている。また変なことし始めてると、誰かが呟く。おい、こりゃ失礼だな。それはそうと、




「ああ、今晩はシカを監視しなきゃだから、晩御飯はいらないよ。」




そう宣言すると、テラとまゆきが悲しそうな顔をする。他の三人が白い目でこっちを見る。まずい、取り繕わなくては!! 




「い、今からご飯とか作ってもらえるとうれしいなぁ・・・。」




とお願いしてみると、テラとまゆきの表情がぱぁ! っと明るくなり、




「すぐに、作りますね!! 」




そして、いつもより少し早いが、ふたりは晩御飯を作り始めるのであった。軽い食事を取った後、道具を持って罠の場所へと戻る。




ちなみに、食事は麦と野菜のポタージュっぽいものであった。




 そうして戻ると、オスシカは逃げておらず、その場に座ったままであった。逃げられでもしたら、大変だったのでよかった、よかった。




そうして、シカを監視しながら、近くの木を切る。のこぎりをうま~く使い、時折シカを気にしながら、小さな凸の板に切りとっていく。




しばらくの後、良い具合に小さな凸の板が完成する。後は、シカ君の膀胱だけである。




「精霊さん、今何%?」




と聞くと、




「ちょうど、35%です。」




そのように精霊さんは答える。なるほど、このままのペースで行くとなると翌朝までかかりそうだと思い、焚火の準備をし始めるのであった。


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