181.アキラ、こぼす。

 今晩の食事も、シカ肉。完全に干し肉になっていて、噛むとうまみ成分が溢れだす。うら若き少年が、異世界に来て、干し肉しゃぶってるなんて、誰が想像しようか。




剣と魔法の世界?何言ってんだんよ! こちとら、炭と干し肉の世界だよ。そんな愚痴をこぼしながら、水をぐいっと飲む。




「淋しいなぁ・・・。」




とこの生活初めての本音が出る。そりゃ、近くにヒトが住んでいる街はある。だが、そこにいれば、奴らに確実に、見つかる。情報を小出しにしながら、こちらに注意を引き続けるしか、今は取れる手段がない。




ああ、なんと惨めか。それもこれも、僕に力がないせいだ。もっと力があれば、そう願う。




「宿主、そんなに力がほしいのですか?」




そう精霊さんが、問いかけてくる。




「ああ、ほしいな。もしかして、その方法があるの?」




と恐る恐る聞く。もしかして、身体の一部を代償に、力を得るのだろうか、そんな恐ろしい考えが過る。




「あるわけないじゃないですか。宿主と私の親和性は、日々の生活の中で、伸ばしていくしかないのです。」




そうバッサリ切られる。まぁ、そっかそんなのあれば、最初からしてるかと、ガッカリするも、どこか安心する僕であった。




 そんな様子を見てか、ハチが近くに寄ってくる。おお、ハチよ。僕を慰めてくれるのか、お前はいい奴だなと思いながら、身体を撫でる。




そして、ウサギちゃんも




「プープー(オレモナデロ、ナデロ。)」




と催促をしてくる。あまりにも、はっきりと意味がわかることに、少し驚く。ウサギの言語ラーニングしていたことを、すっかり忘れていた。




「あまり、重要ではないと考えて、そのままにしておりました。」




とまさかの発言に驚く。精霊さんもしかして、ウサギのこと本当に、狩猟対象物としか、見てないかのように思える。




そんな精霊さんの裏の顔を見てしまいつつも、ウサギちゃんもヨシヨシと撫でる。ウサギちゃんは、




「クゥクゥ(イイヨ、イイヨ)」




と言いながら、顔をとろんとさせるのであった。その時、自分の孤独が癒される気がした。ああ、僕は独りじゃない、僕にはペットがいるじゃないか! そんな気持ちが芽生えてくる。




そう物事をポジティブに、捉えることができるようになる。これも、ハチとウサギちゃんのおかげによるものだ。そして、もう少しだけこの生活を耐えていこうと、決心するのであった。

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