157.アキラ、警戒させる。
「ライト様、どうか交渉が終わるまでは、このまま、待機となります。」
ユダイさんが、少し申し訳なさそうに言う。
「いいんです、ここなら、すぐにはバレないでしょうし。それでは、交渉が無事、うまくいくよう願っています。」
僕はユダイさんを労いながら、彼が持ってきた食糧や水を受け取り、ユラが匿われている家に戻るのであった。
少し、警戒区域を広げるか、そう思い始める。そして、精霊さんに鳥の言語はどれくらい学習したか確認すると、
「現在、3割ほど学習できました。」
精霊さんがそう答えてくれる。そして、僕は今出来る範囲内でこの言葉を出せるかと質問してみると、
「はい、できます。」
と言ってくれて、僕はその言葉を口笛で吹く。
「ピュッピピピ!!(周囲を警戒してくれ。お礼に餌をやる。)」
その言葉に小鳥は反応し、飛んでいく。ほかにも、鳥を呼びこんでは、この口笛を吹いて、6羽ほど、警戒の任に就かせた。
その甲斐あって、鳥の目視による警戒によって、ハンターセンスでの警戒範囲が、1.5倍ほど広がった。
なかなかスキル【以心伝心】は便利なスキルだと思いつつ、今のところ異常を知らせてくる鳥はいない。そうして、しばらく待機するのであった。
警戒中の一匹の小鳥が僕の方に降り立ち、鳴き声を発する。
「ピピピピイ、ピュプッピピピ(2組が不自然に近づいてくる。)」
その言葉に、僕はついに来たかと思い、どっちの方向から来たか?と鳥に問う。
鳥は身体を180度反転させて、位置を知らせる。
「ユラ、ちょっと僕は、外に出てくるから、君は静かにしていてね。」
と言って、僕は家を飛び出し、物陰に隠れながらその二人組を確認する。しかし、暗くてよく見えず、フードを被っているから、
「敵なのか、一般人なのか。ここからじゃ、よく見えないな。」
そう思いながら、二人組を観察していると彼らは、ユラの隠れている家に気付く。
そして、足音を立てずに近づいてくる。僕は、「ピピ」と口笛を鳴らす。二人組は、さっと剣を構え、辺りを警戒する。
そうして、一匹の鳥が、フードを剥がす。そこには、結社の仮面が顔を覗かせた。ここで、僕は、弦を引く。
突然、襲ってくる鳥たちに、彼らは混乱して、剣を一心不乱に振りまわす。すると、矢がきれいな放物線を描きながら、結社の仮面を貫通して、一人の男を葬る。
「まずは、一人。」
そして、何が起こったか理解できていないもう一人にも、矢を射る。
辺りに敵がいないかハンターセンスと鳥の見張りで、探るがどうやら、いないようだ。
遺体に近づき、何か持っていないかと、僕は探るのであった。
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