146.アキラ、恐れる。

 朝食も食べ終え、部屋で一人横になっていると、朝食の食器を戻し終えたリーシェが戻ってくる。




「おまたせしました。ライト様、それではこの城を案内致します。」




そう言って、僕を部屋から連れ出す。その顔は、初めて会った時よりどこか表情が明るかった。




シュラ城の内部をリーシェに案内してもらいながら、見て回る。シラ教徒が物珍しそうにこちらを見る。仮面の男というのは、目立つ者らしい。




そうして、案内されたのは大聖堂らしき場所であった。その光景に僕は息を飲む。すごい、こんなに神聖な場所は見た事がない。




それは、まさにシラ教の宗教観念を現しているようであった。この世界を表現したオブジェに、シラ教の六道を模した造形の数々。




一目で、シラ教がどういうものかわかる。リーシェが得意げになりながら、




「ライト様、これがかの有名なリリアティナ大聖堂です。」




と説明してくれる。




「おお、これがあのリリアティナか・・・。」




そう言って、話しに合わせる。たしかにこの圧倒的な造形美は有名になるなと納得する。そうして、リーシェはこの聖堂の説明をしてくれる。




しばらくその光景を目に焼き付けながら、説明を耳を傾ける。




次に向かったのは、城内に設けられている庭園だった。これまた、色鮮やかさな花々が極楽浄土を現しているようであった。




「ここは、六道を抜けた先の、死者の世界を現しています。」




リーシェはここでも、得意げにガイドをしてくれる。よく作られた順路だなと思いつつ、辺りを見物していると、ハンターセンスが異様に反応する。




僕は辺りを見渡す。すると、そこには一人の男が佇んでいた。殺気は感じられないが、この極楽浄土とはかけ離れた恐怖を一瞬感じた。




「リーシェ、あの佇んでいる人は誰だい?」




そう尋ねると、リーシェはすぐに答える。




「ああ、あの方は、アリクバートン枢機卿の弟子のゼッェペラさんです。」




その言葉に、僕は少し眉をひそめる。そして、佇む男をよく注視する。その男は、目のあたりを布で覆い、杖を右手に持っていた。




「あの人、目が見えないのかい?」




すぐにリーシェに問うと、




「はい、あの方は、杖をつきながら生活しているのです。詳しくは知らないのですが、聞いた話によると弟子になる以前から目が見えないそうなのです。」




それを聞くが、そんな男からなぜあんなに恐怖を感じたのか、この時の僕には理解できなかった。

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