147.アキラ、理解不能。

 その男からは、一瞬だが異様な恐怖を感じた。しかし、すぐにその恐怖はなりを潜める。僕は精霊さんに問う。




「精霊さん、今のはハンターセンスの不調かい?」




「いいえ、ハンターセンスは正常です。」




と精霊さんは言う。信じられない、弓兵の僕が目隠しをした男に恐怖を感じるなんて。鼓動が早まるのを感じる。その男をじっと見つめる。




「ライト様、ライト様!!」




リーシェの問いかけにハッと気付く。ゼッェペラもそれに気付き、立ち上がる。そして、杖で自分の身体を支えながら、こっちにやってくる。




そして、僕たちの近くまで来て、




「すみません、大聖堂はどちらですか?」




そう尋ねてくる。それにリーシェが答える。




それにゼッェペラは礼をして、ヨタヨタと杖で身体を支えながら、大聖堂の方に向かっていくのであった。




どうやら、目が見えないのは本当らしい。




 その後、リーシェに連れられていろいろなところを見て回り、この城の大体の構造は把握した。教徒のための宿舎があり、食堂があり、浴場は、少しはずれた湖の近く。




そして、僕はシカ教の幹部が住まう場所の入り口に案内される。




「ここが最後の目的、シカ教の大司教区になります。」




なんとも、厳かで質素な場所だと印象を抱く。そして、リーシェはその中に入っていく。僕もその後を追う。




連れられたのは、ひっそりとした木の木陰であった。そこには、老人が佇んでいた。リーシェはその老人に近づいていく。




「ウグリナス様、ライト・ライザー殿をお連れしました。」




と言う。老人もそれに気付き、こちらを見る。




「やぁやぁ、ライト様。遠路はるばるご苦労様です。」




そう言って、僕に握手を求めてくる。僕はそれに応じる。




「アルテシア様の使いで来ました。我が主はウグリナス殿を支持し、援助を惜しまないとのことです。」




アルテシアと別れる前に、馬車で覚えさせられたセリフだ。それを聞くと、ウグリナスは喜ぶ。




「ところで、異邦人の方は息災でありましょうか。アルテシア様から何か聞いてはいませんか?」




と聞いてくる。異邦人つまり、僕のことだ。その問いに、




「元気に暮らしていると聞きました。」




と答える。どうやら、異邦人の噂は海を隔てたこの城にも広がっているようだ。




「外の世界の異邦人の婚約者が、味方についたとなれば、わが陣営も勢いを取り戻すでしょう。」




とウグリナスは大いに喜ぶ。どうして、そんなに異邦人を有難がるのか、僕には理解できなかった。




それでも、この世界にとっては、ありがたい存在なんだなと思うのであった。

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