110.アキラ、盗み聞く。

 ミユが門番らしきものと話している様子が見える。そして、血の入った瓶を門番が受け取ると、裏路地に入っていく。




どうやら、対象物は、城壁内の建物にいるようだ。それを上から追跡しながら、追っていく。




門番は裏路地を縫うようにして、走っていく、かなりの土地感がないとやってのけれない芸当だ。もしも、地上で追跡していたら、見失うところだった。




僕も、屋根の上を伝いながら、追い掛けていく。向こうはどうやら、こちらの音には気付いていないようだ。




それでも、できるだけ音を立てないように慎重だが、速く追い掛ける。裏路地を抜けて、大通りに走っていく。




だが、そこは大きく飛び越えなければならないほど、建物と建物の間が空いていた。




「よぉし・・・いくぞ・・・。」




そう言って助走をつけて、ジャンプする。落ちたら死ぬような高さをジャンプしていることに、脳が反応し、大量のドーパミンを放出し僕は興奮状態になる。




そして、壁の淵に手をかける。なんとか、飛び移ることができた。しかし、感傷に浸っている場合ではないので、すぐに壁を登り門番を追い掛ける。




イベラ邸にどんどん近付いているので、向かっている可能性が高い。




そのことを考慮しつつ、ルートをイベラ邸に一番向かいやすい場所を通りながら、追っていく。




「ハンターセンス性の向上により、スキル【ソフトムーヴ】を習得しました。」




精霊さんが。事後報告をする。先ほどの、大ジャンプでちょうど習練度が上がったのだろう。




新しいスキルを習得する。どうやら、スキル【ソフトムーヴ】は先ほどまで、意識していても、多少は音の出ていた状態から、意識しなくても音が出ないようになったのだ。




ナイスタイミングと思いながら、一気に追うスピードを上げる。門番は、まっすぐにイベラ邸に向かって走っていく。




これは決まりだな。と確信し覚悟を決める。




全身に電流を通わせ、助走をつけて走っていく。そして、ジャンプ!!身体を大きく開き、壁に這うような形で、町のランドマークのそびえ立つイベラ邸の石壁に貼りつく。




そのまま、蛙のように、ペタペタと登っていく。イーグルビューで血を持った門番を追跡してみると、足跡が上へ上と上がっていくのが見えた。




それを追いかけるかのように、どんどんと登っていく。そして、最上階に来たのだろうか、上へ上へと上がっていた足跡が横に移動し始める。




その足跡に近づきながら、進んでいくと、ここの主であろう者の部屋の前で止まる。




 すぐに、自分もその部屋の壁に張り付く。そして、壁に耳を当てて、盗み聞く。




「お前が来たということは、血は入手したのか。」




「はい、ここに。」




「うん、只の血ではなさそうだな。」




と邸宅の主の男はそう言う。




「これは、一体何なのでしょうか?」




そう門番が聞くと、男はその門番に近づき、首を腹にナイフを刺す。




「君には、関係のないことだよ。」




そう言って、門番を窓から外へ放り投げるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る