109.アキラ、研ぎ澄ます。
なんとか、スキル【頑丈】習得したことにより、大分、怪我がし難くなり、痛みも和らいでいく。
日が落ちてきたところで、今日の練習は終わりとする。ミユにもたれ掛かりながらも、ミユの住んでいる小屋に辿りつく。中には、誰もいない。
「あれ、お母さんたちは?」
そう無意識に聞いてしまう。
「いませんよ、母は私が幼い頃にどこかへ行ってしまいました。父は知らないですし、私を育ててくれたのは、おばあちゃんだったんです。そのおばあちゃんももういないんですけど・・・。」
「ごめん・・・。」
無意識に聞いてしまったことに対して、礼を詫びるも、
「いいえ、気にしてませんし、大丈夫ですよ。それよりも、主は早く身体を休めてください。明日の朝しか練習する時間はないですよ。手紙の期限はその日が最後になっているんですから。」
そういって、僕の身体を気遣ってくれる。そんな彼女に甘えながらも、僕は眠りの中へと落ちていくのであった。
翌朝も、森で練習をする。だが、頭の中では、町だ。木々は手すりに、太い枝は屋根の淵だと思い込んでいく。
ぴょんぴょんと昨日とは違いすばやく移動できるようになる。そして、昨日苦戦した、木への飛び移りもコツを掴んだので、ダメージが少なく行えるようになった。
全身で飛び移るのだ。そして、勢いを殺し、すぐに行動できるようしたのであった。パルクールを若干齧った程度にはできるようになってきた。
後は、本番のみ。失敗しないように願いながら、夜が来るまで町を偵察するのであった。大体の町の様子はわかり、構造も頭に入った。
路地裏を抜け出てきた場合どう追うかのルートも理解できた。あとは、もし門番が、イベラ邸に入って行った場合は、壁を這っていって追い掛ける算段になった。
イベラ邸は難易度が高いため、あまり行ってほしくないのだが。
次第に、夜も更けてくる。
「ミユ、馬は隠した?」
「はい、主、言われた通りの場所に」
「準備は万端?」
「はい、私は血を渡したら、すぐに馬のところに行き、主を待ちます。朝日が昇っても帰って来ない時は、見捨てて逃げるとのことでございますよね。」
「完璧、僕は情報を聞きだしたら、急いでミユの元へ行って、雲隠れする。」
事前に腹ごしらえは済ましており、これが最後の打ち合わせだ。
「それじゃあ、健闘を祈る・・・。」
「主様こそ、御武運を・・・」
そう言って、ミユは血の瓶を持って門番のところへ行く。僕は、覚えたばかりのパルクールで家々を音の出ないように慎重に登っていく。
高い景色だ。ここが正念場だと全神経を研ぎ澄ませて、血の向かう先へと挑んでいくのであった。
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