62.アキラ、台地で一泊。
ガタンガタンとすごい揺れで、目が覚める。
「な、なにかあったの。」
と寝ぼけた様子で周りを見る。
テラが
「お目覚めですか?この辺から大分、道が平坦じゃなくなってきているんです。」
と言い、僕に状況を知らせてくれる。
だいぶ進んできたのか景色も変わってきており、峠らしきものが見えてくる。
「そろそろ、交代しようか。」
と馬車の手綱を握るイリスに休憩を促す。
本人も、そのつもりだったのかすんなりと変わってくれる。
ここから、道が険しくなることが予測されるので、気合いを入れて進んでいく。
峠を進むにつれて、道幅は段々とせまくなっていき、馬車一台が通るのがやっとの所も、多々見られる。
ここで操作をミスれば、洒落にならないことに注意しながら慎重に進んでいく。長い緊張状態が続く。
後ろのテラも、落ちやしないかとソワソワしている。
馬と呼吸を合わせながら、峠を登っていく。
馬車も通れる道ということもあってか、それほど急な坂はないようだ。
時折、下ってくる馬車に道を譲ってもらいながら、進んでいく。そして峠らしき場所に差しかかる。
そこから、景色を眺めると雄大な山々、そしてここまで歩んできた道が見えていた。4人ともしばし、その景色に目を奪われる。
「さて、それじゃあ進むとしますか。」
と進む方向の道を見る。
そこには、長い台地が広がっており、道もなだからであった。
これなら、大丈夫だろうと、イリスに手綱を渡し休憩する。周りの景色を見ると、白い岩や石があちらこちらに散乱している。
どうやら、元の世界ででいうカルスト地形か?と地理の授業がこんなところで役に立つことになるとは思いもしなかった。
どこまで続くのだろうかと思いながら、見渡す。
楽な時間はすぐに終わってしまうもので、道は尾根を伝い、谷へと続いていた。
日も傾き始めており、夜中に坂道を下るのは危険と判断し、今日はここで、野宿をすることにした。
少しくだった所に林があり、僕とアルテシアが柴刈りに出る。イリスとテラは、食事の準備だ。
「アキラ様、やっとふたりっきりになれましたね。」
と言ってくる。その言葉に少しドキっとするが、平常心を装って答える。
「ずっとみんなと一緒だったからね。この旅にも慣れてきた?」
とありふれた質問をする。僕の意図が通じたのか、アルテシアから妖艶さが消える。
「はい、ふたりとも新参者の私に優しくしてくれます。起きることすべてが、城の中では出会うことのなかったことばかりなので、毎日が楽しいですよ。」
そう嬉しそうに語るアルテシアは、小枝をせっせと集めている。
それに負けじと僕も小枝を集める。時折、ベリーなどを発見し食べれるか毒見をする。
食べれないことはないけど、めっさすっぱいものや甘い果肉のものなどを見つけることが出来た。
そのうち、甘いベリーをアルテシアにあげようと思い、手を差し出す。食べると、目を大きく開かせ、口を手で軽く押さえ、
「甘いですわ。」
と驚いた様子である。
「でしょ~。一応、俺が毒見したから大丈夫だと思うよ。」
と言いながら、キャンプに戻っていくのであった。
本日の夕食は、昨日の残りの肉片を足の部分を使っていく。中型犬、一頭くらいのデカウサギの身体は、残すところと胴体部分となっていた。
フライドチキンのような要領で焼いていく。枝を獲りに行っている間に、イリスとテラが下味に香辛料を振りかけておいてくれた。
『ジュージュー』
と良い具合に火が通り、脂が滴り落ちる。
やはり、少し土の匂いがするような気がして、イリスに尋ねる。
「もしかして、このウサギ、土属性?」
「うん、多分土ウサギじゃないかな。」
と答えてくれる。ああ、だから、土臭かったのか、それにテラが匂いで感じとって、香辛料っぽいのを見つけてくれたのか。
安全な状況を見極めて、不意打ちで頭を撫でてあげる。
「えっふぇ。。ア、アキラしゃん・・・。」
と最初は驚いたようだったが、気持ちよくなり受け入れた様子がよくわかる。そうしているうちに辺りにいい匂いが立ちこみ始める。
夕食をいただくことにしよう。ウサギの肉にワイルドにカブリつく。うん、土っぽいけどうまい!!
そして、すっぱい木の実の用途は、アルテシアがコップに入れてすり潰し、水を入れていく。それを飲むとレモン水みたいな感じでとてもいい。
「元の世界では、こういうの食ってたな。」
と独りごとがでてしまう。その言葉に3人は喰いつきどんな料理ですか?とか、どうやってつくるのですか。と聞かれたので、
「鳥を油で上げて、そこに甘味料が入った炭酸水を飲みながら食べると、最高なのよ。」
「鳥を油で揚げる、できそうにないことはないわね。でも、炭酸水は聞いたことがないわ、詳しく教えて。」
と突っ込まれたので、おいおい話していくことにして、今は眠たいことをアピールして寝ることにしたのであった。
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