57.アキラ、魅了される。

 テラは例の如く景色を見ている。イリスは昼寝! そして、助手席に座るアルテシアは、時折僕の方を見ては微笑んでいる。




寝ぐせついたままだったかなぁ・・・?




「な、なにか?顔についてますか?」




と気になり、質問してみると、アルテシアは照れながら、




「いいえ、特に何もないのですが。将来、夫となる人の顔を、今一度確認しておこうと思いまして。もしかして、お気分を害しましたでしょうか?」




と上目遣いで言ってくる。ハァァァァイ! KAWAII!! 




「いや、大丈夫だよ。好きなだけ見ていいよ。」




そう言ってあげると、アルテシアは嬉しそうに頷くのであった。




のどかに時間が流れていく、今回はそんなに焦らずに旅ができるので、どこか寄り道でもしていこうかと思う。




暇なので、アルテシアにいろいろなことを聞いてみた。




「アルテシアも異邦人の血が流れているってことは、なにか精霊とか宿しているの?」




と聞くと、よくぞ聞いてくれました。とお上品に反応して、




「私の精霊は水を操るものにございます。アキラ様ほどの力はないにしろ、お役に立てると思います。」




と答える。やっぱ、決闘で戦ったおっさんも水だったっけか、やはり、血統で宿しやすいとかあるのかなと考える。




 その次に、異邦人の血についての質問をする。




「異邦人の血って、俺以外にも昔、そういう奴がいたの?」




と尋ねると、アルテシアはふと考え、答えをだす。




「昔の話ですが、あなた様のように強力な精霊を宿した者達がおり、今の国々に関与したと聞いたことがあります。




その者たちは他の場所から来たと言い伝えで聞きました。その血が私やイリスに流れているということです。」




興味深い話だ。これが本当だとすると自分以外にも、過去にこの世界に迷い込んだもの達がいるってことになる。




だが、彼らは元の世界には帰れずに、この土地に骨を埋めたことになる。つまりは、一方通行のままなのか。




その事実に、僕はすこし残念さを感じたが、この3人を見てその感情を払拭した。




元の世界の友人や両親には悪いが、この世界で強く生きていくことを誓うが、でもやっぱり故郷が恋しいアキラなのであった。




「ほかに、何か質問はございますか?」




とアルテシアがこちらを向いて投げかける。




豊満な胸に目がいってしまう、それに気付いたのか。アルテシアは頬を赤めながらそっと耳打ちをして、




「私はいつでも、あなた様を受け入れますよ。」




と誘ってくる。しかし、僕はその問いにNO!と言うべきはずなのだが、感情がそれを拒否し




「その時がきたらお願いします。」




と煮え切らない回答をしてしまう。




これには理性君も呆れている。男ってこういう時つらいよね。と自分を戒めつつ、後方の荷車のふたつの殺気にハンターセンスが反応しているのを僕は感じるのであった。

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