40.アキラ、感じる。

 前方を警戒していたはずが、現在、僕は後ろの荷車に乗せられている。




従者の人達から、




「さすがに、5時間も警戒してもらったので、少しお休みください。」




とイリスの横に誘導された。イリスはおもちゃが、やってきたかのように、




「ねぇねぇ、アキラの世界では、どうやって人達は移動してるの?」




と現世の世界について、さっきから引っ切り無しに聞いてくる。めんどくさいので、全部、人工知能が人類を支配していていることにした。




テラは相変わらず、ずっと外の景色を見ている。景色好きなんだね。




精霊さんは時々、感覚性の習練度が、向上したことを報告してくれる。




そのおかげか段々と酔わなくはなってきている。




「宿主、親和性が高くなってきたので、スキル会得モードをアップデートできますが、更新しますか?1日ほどかかります。」




唐突に更新アップデートを求めてきた。




精霊さんが言うからには、何かメリットがあるのだろうと了承する。すると、身体から力が抜ける。




本当に、1日間アップデートするみたいだ。




「うぅっ・・・」




酔いがまた襲ってきて、急ぎ助手席へと戻る。このまま何もないことを祈るのであった。




のどかな馬の旅が続く。運転席のカルラさんと話してわかったのだが、カルラさんは、昔からずっとイリスに使えているらしい。




昔はもっと優しいかったらしいが、兄弟や諸侯との政治的争いで狡猾にならざる負えなかったんだとか、イリスはああ見えていろいろ苦労してるんだな。




「イリス様があんなに楽しくお話されているのは、久しぶりに見ました。




いつも落ち込んでいる顔ばかりだったので、よほどアキラ様達といるのが楽しんだと思われます。




どうか、最後までイリス様の味方であってください。」




と頼みこまれる、そう言われちゃうと断れないじゃないか。




「ええ、まかせしてください。」




と了承する。




 そうしている内に夜になる。街道沿いの道端に、馬車を泊めて、今日の移動は一旦、終了する。僕は酔いからか、すぐにダウンして、死んだように眠ってしまった。




 「起きて、起きて、周りが大変なの。」




テラは、慌てた様子で僕を起こす。慌てて、周囲を見るが特になにもないじゃないか。だが、テラは




「周りにすごい殺気がある。怖いよ。」




と言う、初めての夜が怖いのかと思ったが、テラは獣人の血が入っているので、そういう点では優れていることを考慮する。




あながち間違いではないかもしれない。精霊さんに急いで尋ねる。




「・・・・」




応答なし・・・。




「鷹さん?」




「鷲です。なんでしょうか?」




とすぐに起きてくれた。テラの様子を伝えると、




「急ぎこの場を離れた方が、よさそうですね。」




なかなか危険な状況であることを察してくれた。




「今、使えるスキルはある?」




と聞いてみたところ、




イーグルビューは固有系統スキルなので使えるそうだ。




それを使ってみたところ、藪の中の人型の足跡が無数に浮かび上がるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る