34.アキラ、脅される。
その時、何が起こったかわからなかった。
出会ったばかりの少女に、キスをされた。
なぜ、今この状況でと混乱に陥るが、すぐにそれは、痛みによって打ち消される。
「痛いっ。」
唇を噛まれる。キスなどしておらず、口から血が溢れだす。
それを彼女が飲み干す。
(痛い痛い痛い。)
そのような光景に、当事者であるにも関わらず、考えが追いつかない。
思考停止してまい、抗えない。痛みが消えた頃にやっと、思考が追いつく。
「な、なにやってんの!!」
イリスから顔を離し、怒る。
「すみません、急なことで怒りますよね。あなたの血が飲みたかったのです。」
まぁ、この子すごいことを言った。そう思いながら、理由を問いただす。
すると、イリスは僕に身をまかせながら、説明してくれた。
「急に唇を噛んでしまい、すみません。
あなたの血を分けてもらうことにより、少しだけですが私の中に異邦人という要素が加わり、この痛みが和らぐのです。」
初めてだったのに、とウブな心は置いといて、
緊急手段だったことを理解し、すぐに了承する。イリスの顔が、大分よくなってくるのが、見てとれる。
「大分、顔色良くなってきたね。もうそろそろ歩けるかい?」
と腕が、そろそろつらくなってきたことを暗喩して、イリスに伝える。
「はい、だいぶよくなりました。もうここまで来れば、追手も来ないでしょう。」
と言い、イリスは僕の身体から離れる。微かに手に残ったイリスの感触がウブな少年の心に残る。
すると、イリスが話しだし、
「助かりました。あなたが、まさか異邦人とは、思いませんでした。これも何かの運命かもしれませんね。」
と言い僕の手を握り、目を見つめてくる。人見知りの僕は、目を背けてしまう。そんな様子を見て、イリスはニヤついている。
「なんですか?可愛いお姿ですね、なお愛おしくなります。」
精霊さんが急に報告する。
「ハンターセンスの習練度が、向上しました。」
わかっている。何か途轍もなくやばいことが、これから、訪れることを直感が告げている。
イリスがもじもじしながら、こちらを見つめて話す。
「じ、実は、私、先ほどのような者達から追われておりました。あなたがよろしければ、私を匿ってほしいのですが、事が成った暁にはあなたには損はさせません。」
と直感が告げていた嫌な予測を言いだしたのである。もちろん、僕は即決で
「いy・・・」
と言いかけたところ、氷のつぶてが頬を掠める。どうやら拒否権はないようだ。
「はい。」
「それでは、ここに契約を致しましょう。」
と何やら、イリスが魔術の巻物のようなものを取り出すのであった。のであった。
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