歪み

tsugumi

第1話

「右側がかなり凝ってますね」


心地よい眠りから覚めた私に

ありとあらゆる助言をくれた彼女は

マスク姿で、よく顔が見えない。

部屋は暗くぼやけて、まるで幽霊だった。

今の私には、彼女の言葉や存在が、

少しおせっかいに感じられる。


23歳、新・社会人。

8900円のヘッドスパと足ツボで

贅沢な無駄遣いを経験した。

施術中のほとんどが眠りに落ちていたから

どれだけ気持ち良かったのか、気持ち悪かったのか、

何も覚えてない。

記憶のない時間にさえ、お金は存在する。

別に、お金が有り余っている訳ではないのだが、何時も、虚しさは有り余っていた。

その虚しさは、いつまでも記憶にあるものだろう。


入社して3ヶ月で、異動になった。

どうやら、人間関係を拗(こじ)らせたようだ。

「拗らせた」とたった一言。

それが社会の評価というものらしい。


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