女の子との生活は平和か?

紅鶴蒼桜

第1話 ー「ダンボール少女と出会う」ー

「貴方様は、偉大なる神の信徒に選ばれたのです」

何か宗教の勧誘だろうか。

女はまだ喋っている。

「私達の仲間は、それはそれは社会で成功をおさめた者ばかりです。貴方もその輪の一員となれるのですよしかも、私達の一員となった暁には・・・」

僕は最後迄聞かずにドアを閉めた。


部屋に戻ると、

「あ、結局なんだっの?」

むしゃむしゃと、お菓子を貪る少女が。

「お前のお仲間やお仲間の事」

「え、もしかしてロメロやクワイロとか来てたの」

「うんにゃ。只の宗教の勧誘」

「なんだ。ガッカリ」

と、肩をすくめる少女。あまり悲しそうに見えない。

「もう帰っても良いんだぞ」

「帰れるならそうしてるわよ」

これで終わりとばかりに横を向いて、お菓子を摘み口の中に放り込む。

お菓子を咀嚼する音だけ響いた。


「なあレイア、お前いつまでここに居るつもりだ?」

僕がふと尋ねると、

「何言ってるのよ健二。ずっとに決まってるでしょ」

と返す。

「せっかくダラダラ出来る環境になったのに止めるもんですか!」

「ほらゲームや漫画がやり放題、見放題。こんなのは後にも先にも今回だけなのよ」

「ほら健二、一緒に遊びましょうよー」

などとたわごとを言ってくるので無視して勉強を始める。

するとレイアが寄って来て、

「毎回思うんだけど、学校へ行ったらいいんじゃないの?こんな部屋に閉じこもってなくてさ」

僕は少し怒った様に、

「それは僕の勝手でしょ。ほらほらレイアは勉強の邪魔。サッサと出て行く」

「いやよ。勉強なら勝手にやって。私はここで遊んでるから」

と、僕とレイアがしばらく口論してたが、僕が根負けして机に向かう。

勉強時間が少なくなるからしょうがないのさ。それだけだからな!


しばらくカリカリと、ノートに書く音と、むしゃむしゃとお菓子を貪る音だけが響いていた。


「よし、今日はここまで」

とノートから顔を上げると、

チュ。

何故かレイアの顔が目の前にあった。

「ふふふ」

と、不気味な声を出して唇を拭う。

「何やってんだよ、もう」

と、僕も口を拭う。


「でも本当に何で学校に行かないの?逆に家にいるなら勉強なんてやらなくていいでしょ。どうしてなの?」

「いいだろ、そんな事」


むくっと立ち上がり、荷物を取る。

「どこへ行くの?」

「ちょっとスーパーへ買い出しに。あと、本屋で立ち読み。それと、お前はついてくんなよ」

「はいはい分かりました」

とこちらに手をヒラヒラさせて。

「いってらっしゃい」


本屋で少し立ち読みしてからスーパーで必要なものを買って、家路を急ぐ。


歩いていると、

なんかデカイダンボールが。

無視して通り過ぎると、

ダンボールから足が生えて、スタスタと僕の進む方向へと。

そしてストンと足を引っ込める。

僕はまた無視をして通り過ぎる。

するとまたダンボールから足を出して前方へ。

今度は堪らずダンボールへ向かう。

蓋を開けると、中には何故か少女がいた。

<拾ってください>と書いてあるボードを持って。

僕は、「じゃ」と手を振ると、スタスタ逃げる。

するとやっぱりというかダンボール少女が追いかけてくる。

「ハアハア、何で逃げるのですか!」

息も絶え絶えで質問する少女に、

「いや、だって面倒くさいだろ」

と答える。

「家には既に面倒な奴がいるのに、更に増やすのは御免こうむるぞ」

「いや是非是非拾ってください、何でもしますからぁ!」

「こら、引っ張るのは止めろ!ほら周りの人が見てるじゃないか」

少女は結構引っ張る力が強くて、剥がせない。

しかも、回りではこっちを指差してヒソヒソ話しをしている。

僕は諦めて、

「分かった、分かったからもうダンボールから出て。出てこないなら拾ってやらないからな」

ズシャ

ダンボール少女はダンボールを脱ぐと、僕に腕を絡めてきた。

笑顔で。

「さあさあ、貴方のお家へレッツのゴーです」

「お前、ただのたかり?」

「さあさあ、早く行きましょそうしましょう」

グイグイと、引っ張っていく、元ダンボール少女。

「お前」

「お前じゃありません。ヒルデとお呼び下さい。で、何です?」

「家の方向が違うぞ」

「あらま」

ヒルデは空いてる手を口にあてた。


道中ではヒルデという少女が、あれこれ話していたが頭に入ってこなかった。


家に着いた。

トアを開けると、奥から声が。

「遅かったじゃん。何か面白い本でもあったの?」

本でなくて人だけどな。

荷物を冷蔵庫に入れてると、

「ここがご主人様のお宅ですか、へー」

と言う声が。

もちろんヒルデだ。

すると、ダダダッと音がしてレイアがこっちに来る。

「健二。誰、その女」

「あのな、この少女は…」

答えようとした時にヒルデは割り込んで、

「私はヒルデ。この人のペットです」

「ちょっとまて〜い」

「何なの、ぺ、ペットって、ふざけてるの、貴女」

「いいえ。私はご主人様のペットです。貴女こそ誰なんですか」

「わたしは只の居候よ!」

胸を張ってそう言った。

威張ることでもないんだが。

「出て行くつもりは無いんですか」

「貴女こそ」

と、二人の間に火花が散った様に見えた。

が、一瞬後には、二人とも頷いて、

「健二の負担が少し増えるだけで、わたし的には余り変わらないから、いいか」

「まあ、ペットが私以外にもいても、私は変わらずご主人様に忠義を尽くしますから」

何か仲良くなってた!


居候が増えて今後の生活はどうなるんだ。

ーー>続く

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