正義と元・骨がパークへ辿り着くまで

えぬけー

The Beginning of The Story

Prologue -The Friends Laboratory-

「…がッ!ぐぅぅっ!」


 日本列島、東北地方のどこか。

 そこには、研究所があった。


「おい、早く立て!どうせまだ耐えてんだろ!」


 その研究所で研究されていること。

 それは、『人間へとフレンズの力を付与する』という課題だった。


「くっ…。はぁ、はッ、ぐッ!?」


 フレンズの力を持った人間。

 それを作ることは成功した。

 しかし、その力がどのくらい元となったフレンズと違っているのか。

 それは分からなかった。


「…はっ。おら立てよ!」


 実験体となった1人の青年…。

 彼は今、その体で『耐久テスト』と称する暴力を受けていた。



 …



「…なあ、もう動けなさそうだぞ?これ以上は不毛じゃないか?」


 白衣の男が暴力を振るう男に言う。


「あぁ?…まぁ、お前が言うならそうか…。チッ、しょうがねぇな…」


 暴力を振るっていたスーツの男は、不服そうに答えた。


「…じゃあ、私はこの子を戻してくる。」


 白衣の男は実験体の青年を担ぐ。


「あーったよ。…はぁ。」


 スーツの男は溜息をつきながら部屋を出て、どこかへ向かっていった。


「…はぁ。」


 呆れたような溜息が出る。

 研究者らしくないな、と。


 そう思いながら、白衣の男は青年を『収容室』へと運んで行った。



 …




 白衣の男と青年は『収容室』へと辿り着いた。

 中には青年の物と思われるリュックサック、机と椅子、ベッドがあり、あとは扉が入口と別にあり、その中には浴室とトイレがあるのみだった。

 白衣の男はベッドに青年を寝かせた。


「おい、大丈夫か?」


 男は声を掛ける。


「…うぅ、はい、なんとか…。」


 青年は呻きながらも答える。

 男は青年のベッドに腰をかけた。


「…なぁ、別に君でなくてもいいんだぞ?フレンズの特徴は人目に付くようには出てないし、今からでも君を社会に戻す事はできるんだが…本当にいいのか?」


 男は少し辛そうに言う。

 青年は、少し迷って答えた。


「…いえ、いいんです。どうせ、僕が居なくなったら別の人が犠牲になるんでしょう?」


「…ああ。」


「なら、僕が犠牲になればいいんです。他の人が僕のために傷つくのは、まだ許せないですから。…心配してくれてありがとうございます、ケイさん。」


 青年は自嘲気味な笑みを浮かべながら言う。

 ケイと呼ばれた白衣の男はすこし呆れたような顔をした。


「…そうか。相変わらずだな。君は。」


「すいません…。僕も、これだけは貫きたいんです。」


 どこか泣きそうな感じで青年は言った。


「…じゃあ、そろそろ私も行かなければいけない。お大事にな、エイキ君。」


 ケイは立ち上がり、別れを告げる。


「はい。ありがとうございます、ケイさん。」


 エイキと呼ばれた青年は返事を返した。


 ケイは扉を開け、出ていった。

 エイキは立ち上がり、机の前の椅子に座るとリュックを漁り、少し汚れたメモ帳とペンを取り出した。


(今日は、九月九日…。9と9か。)


 彼は日記をつけていた。

 毎日欠かさず書いていることもあり、カレンダーが無くとも今の日にちが分かっているようだ。


 彼は日記に今日されたことと、ケイと話したことを書いていた。


 それを書き終わると、彼は大きく溜息をつき、自分の胸元に手を当て、黄色のハートの中に白と赤半分ずつの逆さハートが入った物を取り出した。


「はぁ…。」


(もう決意Determinationも揺らいで 、正義Justiceも不安定。僕、ここで死ぬのかな…。)


 彼は悩んでいた。

 ここから逃げることはできる。

 しかし、それで他人が代わりにあの暴力を受けていいのか。

 自分だけ逃げて、他人を犠牲にしていいのか。


 彼が悩んでも、答えは出てこない。

 そこには、深い絶望しかない。

 自分が逃げても、他人を犠牲にした心の傷は癒えない。

 自分が逃げなければ、近いうちにここで死ぬ。


 このジレンマに彼は囚われ、今日も明日も、絶望の中で命を削る。



 ………



 ……………

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