その時彼女は飛んでいた

七島新希

プロローグ

 彼女は窓の外――空を飛んでいた。セーラー服の襟をスカートを、さらに胸まであった長い黒髪や、すらりと伸びた手足をもたなびかせながら。


 普段から見える空と、遠くにあるマンション等のビル群。そんな窓の外の景色に今はセーラー服の同級生が加わっている。


 それはありえない光景だった。なぜならここは三年三組の教室。つまりは四階。その窓の外を彼女は飛んでいたのだから。


だが今、その光景は確かに目の前で繰り広げられ、焼き付けられていく。


 遠野久志(とおのひさし)はそんな永倉喜美枝(ながくらきみえ)に完全に目を奪われた。


 そこに自由が見えた気がしたのだ。


 彼女は今、全てから解放された。


 しかしそれも長くは続かなかった。喜美枝は一瞬にして、窓の外から姿を消した。正確には下へ下へとあっという間に、目にも留まらぬ速さで落下していった。

 










 

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