第14話 ずるい人

え? 冴木先輩のこと?


 「好きだよ、お兄ちゃんの親友だし」

私が頷くと、お兄ちゃんは真剣な顔をした。


 「そうじゃなくて、恋愛的な意味で」

「!?」

れ、恋愛的な意味で!? どうだろう。そういう目で見たことなかったから、わかんないや。どっちかというとつい最近まで、お兄ちゃんをそういう対象としてみていたわけだし。


 「い、今のところは、好きじゃない、かな」

特に隠す理由もないので、素直にそういうとお兄ちゃんはため息をついた。


 「……お兄ちゃん?」

「だったら、朱里は僕が誘ったら生徒会に入った?」


 今の私の目標のひとつは、お兄ちゃんと正しく距離をとるとことだ。だから、お兄ちゃんから誘われていたら断ったかもしれない。答えられずに押し黙った私に、お兄ちゃんは続けた。


 「……僕が誘っても入らないのに、智則がいったら入るんだ?」

へぇ、ふぅん、そう。そういった、お兄ちゃんの声はあまりにも──。


 「お兄ちゃん、もしかして、すねてる?」


 私がお兄ちゃんの顔を覗き込むと、お兄ちゃんは私の肩口に顔を埋めた。

「お兄ちゃん?」


 お兄ちゃんがこんなことするなんて珍しいな。そう思って、頭を撫でると、お兄ちゃんは大きなため息をついた。


 「朱里って、ときどき本当にずるいよね」


 まるで、子供みたいな声でそういうものだから、私は思わず笑ってしまった。


 ──でも、そのせいで更にすねたお兄ちゃんの機嫌がなおるまで、頭を撫でるはめになってしまったのだった。

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