第13話 大事な話

 その後に、スーパーミラクルドジッ子の愛梨ちゃんが途中で、もう一回コードに引っ掛かりかけたときは、本当に焦ったけれど、書類をこまめに印刷することによって、何とか無事一日が終わった。


 そのことに心底ほっとしつつ、帰りの準備をしていると、冴木先輩に話しかけられた。

「もう、本当に、朱里ちゃんが来てくれて良かったよ! おかげで、大魔王も降臨しなかったし」

だから、大魔王って誰なんだろう。そんな名前の人はいなかったから、おそらくあだ名なんだろうけれども。


 「でも、私、大した仕事はしていませんよ?」

「いやいや、本当にありがとう!」

よくわからないけれど、役に立てたなら良かった。


 話しているうちに、帰りの支度も終わったし、帰ろうかな。お兄ちゃんとなるべく目が合わないようにしながら、生徒会室から出ようとすると、誰かに手首を捕まれた。


 「!?」

反射的に顔をあげると、きらきらした瞳と目があった。

「小鳥遊先輩の妹さん……なんだよね!?」


 私が戸惑いながら頷くと、目の前の人物──愛梨ちゃんは、弾けるような笑顔を向けた。


 「もし、良かったらお話しない?」


 美少女に笑顔で誘われて、断れるはずもなく、頷くと、後ろに引っ張られた。振り向くと、お兄ちゃんがにこにこしながら立っていた。

「悪いけど、朱里は僕と大事な話があるから、また、今度にしてもらえないかな」


 「え、でもお兄ちゃん」

話なら家でできるんじゃ……、と言う前に、愛梨ちゃんは頬を染めて首を縦に振った。

「──わかりました。残念だけれど、じゃあ、また今度、ええと……朱里ちゃん!」


 そういって、ひらひらと手を振りながら、離れていく。ちなみにその間、愛梨ちゃんは何もないところで二回ほど躓いた。


 大事な話って何だろう。それに、なんか、笑ってるけど、元気ない?

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「朱里は、」

「うん?」


 「──智則のこと好きなの?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る