紅茶とパズルと事件手帳(仮)
華夏
プロローグ
「ねぇ。私ね夜が怖いのはお化けがでるからじゃないの。」
街灯は少し先のコンビニにあるほど暗い道を私たちはキャリーバックを引きながら歩く。
時刻はもう夜の9時。歩いてる人もまばらで車も少ない。ただでさえ少ない周りの家には灯りが灯っていなかった。空き家なのか、それとも今日がお盆だからだろうか。
私は隣にいるユキに声をかける。彼女はスマホを見つめたまま無言でうなずいた。
どうやら、話は聞いているようだ。
「そりゃあ、お化けはいると思うよ?でもさ、見るやつ全部現実味がないっていうかさ…。ほら、最近の怖い動画特集みた?あれ、絶対作り物だと思うんだよね。私、あれより一昨日テレビでやってた日本を震撼させた事件ってやつのほうが怖いんだ。」
歩道が狭くなったので私は前に行き、一列になった。ガラガラとキャリーバックを引く音だけがあたりに響く。
少し心細くなってまた私は話しかける。
「こんなときに怖い話するほうが変だよね。でもさ、お化けなんてみた人いないじゃん?話には聞くけど、それってニュースにならないじゃん。犯人が捕まらない殺人事件のほうが私はとても怖いよ。」
相変わらずユキから返事はない。一人のときもこんな感じなのだと思うと痴漢に会わないか心配だ。
だが、ユキはそういった犯罪に一度も巻き込まれたことはないらしい。おそらく日が沈む前にいつも家についているからだろう。
あと、私がこんな心配してるなんて彼女に言ったら呆れられるのがオチだ。
「ユキってさぁ…。」
カンカンカンカンッツ
突然辺りに踏み切りの音が響く。そして、キャリーバックを引く音がピタリと止む。
しばらく音はなりつづけた。
そういえば、私はなにを言おうとしてたんだっけ。
少し考えたけど思い出せなかった。
まだ踏み切りの音はなる。
「ビックリしたね、ユキ。」
私はここで後ろを振り向いた。
しかし、見渡すかぎり続く一本道にユキはいなかった。
誰もいなかった。
「ユキ…?」
辺りをみる。だが、ユキもユキのキャリーバックさえなかった。
忽然と消えていたのだ。
「ユキッ!」
私の声を電車を通る音がかき消した。
「ユキッユキ、ユキ!」
何度呼んでも電車が通ったあとの一本道には私の声が響くだけだった。
私は電話をかけるためにスマホをみた。
私のスマホにはユキから一件通知が入っていた。
それを確認して私の息がとまった。
突然後ろからなにか音がした。
その音はカラカラと、まさにキャリーバックを引く音だった。
しかし、この音はユキのものではない。
ユキからの通知はただひと言で終わっていた。
「助けて。」
私は目の前のコンビニに向かって思いきりかけだした。
そのあと、私は足を誰かに捕まれた。
記憶は、そこで途絶えている。
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