第166話 神奈川三浦エリア:その質問私にはしてくれないのか……?
三笠公園を出て次の目的地を目指す。
「もうカレーの香りがする気がする!」
気持ちはわからんでもない。というかこの街には数多くのカレー店があるので、カレーの香りが本当にそこらを漂っていても不思議はない。
「このお店、前から行ってみたかったのよねー、楽しみ!」
「……ボリュームがすごいとか?」
「メグの中の私の印象どうなってるのよ」
残念ながら大喰—— いつも栄養を大量摂取しているヤツという印象だ。まぁ人によって必要なエネルギー量は違うので彼女にとってはあれが適量なのかもしれない。いやまじで。現に太っているどころか抜群のプロポーションなわけだし。
「ところでお店どこ」
「すぐそこ」
三笠公園を出て歩くこと数分。目的地のお店は米軍基地のすぐそばにあった。白と青のカラーリングが海辺の街っぽい小じんまりしたお店だった。
「……」
「おー」
「これは期待できそうね!」
三者三様の反応。その原因はというと――行列だった。もちろんお目当てのお店に連なる行列だ。
「ミソラは行列平気?」
「? 別に大丈夫だよ? これくらいなら行列っていうか待ちのお客さんがちょっと出てるだけでしょ? それにビッグサイトの即売会と比べればね」
「なるほど問題ないわね。じゃあレッツゴー!」
その質問
お店の外まで伸びていた最後尾に並ぶ。人気店だ。行列も人混みの一種なので苦手だが、期待できることには違いない。
「1人だったら並ばないかなぁ、たぶん。即売会とゲームの発売日以外じゃどこにも並んだことないかも。ほら、1人だと肩身狭いし」
同意しかない。つい無言で首を縦に振ってしまった。待った末に通された席が4人席だったりして周囲の団体客から(順番なのはわかるけどそこ1人で使うのか……)という視線を向けられるシチュエーションを想像しただけですでに気が重い。
「じゃあ3人で来て良かったじゃない」
フィリーが言った。それはまぁ……そうかもしれない。仮に一人で来ていたら諦めたであろう所へ行ってみようと思えるのだから。
「おしゃべりでもしてたらあっという間よ。私たちジョシコーセーなんだし」
友人と一緒に行列に並ぶ。なんだか女子高生みたいだ、なんて思っていたけど、すぐに自分は正真正銘の女子高生だったことを思い出した。もう少し社交性があり、人付き合いというものができるような人間であったのなら、彼女たちや他の誰かと一緒に、浜松のタピオカ屋さんとかに並んでいた景色もあったのかもしれない。
「恋人同士とかだったらもっと早いかも!」
「そういう経験あるの」
「ない!」
つくづくコイツはいつもテキトーにしゃべっている。ただ、それも才能といえば才能だ。私には真似できないことは確かだし。
「それにしても楽しみだわ。写真は何度も見たけど味や香りは分からないもの。私は断然、カレーは辛口が好き! あと具がたっぷりのやつ!」
「わ、わたしはできれば甘口くらいの方が良いかなぁ」
「なるほどね~。メグは」
「メグちゃんは」
「「どっち?」」
油断していたらまた妙な張り合いが始まってしまっていた。しかし残念なことにカレーの好みとかは別になかった。いつも弟がこだわりのスパイスをブレンドして作るオリジナルカレーを出されるがまま食べているので、味が毎度
「お待たせしました~。次の方どうぞ~」
何て考えていたその時、私たちの順番が回ってきた。お店に入れるようだ。
「確かに早く感じられた。行こう」
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