第77話 高速道路:合流
興味深いスポットを見つけたので目的地を清水に定めた。
これから初めて高速に乗ろうかというヤツが目指すにはやや遠い気もする。が、料金を支払うのであればどうせなら遠くへいってしまいたい。それに、仮にダメそうならいつでも引き返せばよいのだから。
「よし」
買ったばかりの工具をバッグに詰め、そのバッグはネットでシートに括り付けた。バッグにはタオルやら飲み物やらが入っていて案外膨張している。ぶっちゃけ学校へ行くときより荷物が多い。いよいよ容量の大きいバイク用バッグを導入した方がいい気がしてきた。灯火類のチェックをしたあと、ミラーがきっちり固定されていることを確認して出発する。
県道65号線に出て北上。下池川町の交差点以上にトレーラーや貨物自動車がひしめいていて、高速道路のインターが本当にすぐそこなのだと伝わってくる。
(こっちの方はあんまり来たこと無かったけど、すごい交通量だ)
学校は市街地方面。そして買い物なら市街地か市野か宮竹の方、あるいは天竜川駅の方だろうか。いずれにせよ高校生がこちらの方面に来る理由はあまりない。産業展示場に併設されている図書館には用があるかもしれない。
周囲には運送業者の巨大な倉庫やそれに付随するような企業のオフィスなどが軒を連ねていて、町名はその名も流通元町。とてもよく似合う。高くそびえる倉庫を信号待ちで見上げていると、その遥か上空を航空自衛隊のエーワックスがちょうど横切っていた。
グリーンでペイントされた分かれ道が高速へと続く道だった。なだれ込む大型車両たちにまじって、潰されないように左折する。ETCは搭載されていないので、一般のレーンに進路を向けた。
発券機の前で一旦停止。同時にべろんと通行券が発行された。ちんたらしていると渋滞を引き起こしてしまいそうだったが、そもそも一般レーンに来る自動車が他に居なかった。みなさんETC搭載済みらしい。うらやましい限りだ。
(高校生じゃETCカードがなぁ……)
などと考えつつ、通行券をジャケットのファスナー付きポケットにしまった。深いポケットなので曲がりはするが折れないだろうし、ファスナーをきっちり閉めればそう失くすまい。それにこんな場所でノロノロ財布を開いていたりしたら迷惑この上ない。グローブもはめたままだったが何とかなった。
この猛暑に春物のジャケットを引っ張り出してきたわけだが、狙い通りだ。ペラペラのパーカーと比べれば厚手なジャケットは、防御力という点でも幾分か心強い。まずはこちらの作戦勝ちのようである。
(第一関門クリアってことで)
発進する。ETCの恩恵で料金所をスムーズに通過する自動車たちの速度は高い。まずその速度に追いつき流れに乗るのが大変だった。エストレヤは加速が苦手なのでなおさらだった。
道路はやがてループを描いて伸びる。左回りに旋回すると進路は90度変わっていて、東西に延びる高速道路へと道は連結した。すぐ隣の車線では時速100キロで車が走り回っていた。
速度が40キロに制限されていた区間が終了することを示す道路標識。それを通り過ぎたところから速やかに加速する。本線上の車と速度を合わせ、素早く本線へと合流した。
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