第8話 従姉



『お従姉ちゃん。相談があるので時間がある時に返事ください』


 意を決して従姉にメッセージを送る。

 むこうはたぶんお昼過ぎ。非常識な時間ではないはずだ。


 ほどなくして従姉から返信があった。文面からだけでもあの陽気な性格がうかがうことができた。久しぶり、なんて他愛のない挨拶を交わしたあとに、すぐに本題に入った。


『お従姉ちゃんのオートバイ、もしよかったら譲ってほしい』


 もちろん無料でとはいわない。ただ予算に上限があるため、できるだけお安く済ませたいところだった。従姉は『忘 れ て た ☆』『放置してたから動くか分からないよ?』『もしかして恋人さんの影響ですか?????? おじさーーーーん! メグちゃんについに恋人がーー!! キャー!』などという従姉ワールドを展開し始めたが、何とかして話を本筋に戻した。


 そして従姉からの答えは。


『いいよ。あげる。どうせ乗ってないし』


 来た。


『ほんと? ありがとう』


『でも無料ってもの良くないよね。そうだねー……』


 30秒くらいしてから追加のメッセージが表示された。


『5万くらいでどう? ほぼ乗ってないから20万とかいいたいところだけど、現状渡しだし、そのくらいなら払えるでしょ? 整備とか名義変更とかはそっちでやってね』


 願ってもない条件だった。


『それでお願いします。支払いはお金を叔母さんに預ければ良い?』


『コードでくれる? 推しをお迎えできてないんだよね』


「……」


 この従姉は……。


 しかし気まぐれな従姉の決心が変わらない内に支払いを済ませるべく、コンビニへ急ぐ。ATMで引き出した5万円を、そのままプリペイドカードへ変換する。購入する時に店員さんが若干引いていた。


 コードを送ると、従姉から返信があった。


『おっけー。じゃあお母さんに言っとくから、都合のいいときに迎えに行ってあげてね。あと点検してもらった方がいいよ。あのバイク買ったお店に連絡しといてあげる』


 何から何まで頭が下がる。


『ありがと、お従姉ちゃん』




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