第3話 真実

魔女の家の周りには、枯れた花や草木。

不気味な程に静かで、古ぼけた家が一つだけ建っている。


ルアは、家の周りに魔法陣を一瞬で描き上げる。

そして呪文を唱えようとした瞬間に、ルアの右手を魔女が掴む。


「愛しの恋人を救う王子のつもりかい?」


捕まれた手を解き、

一気に魔女に襲い掛かるも

魔女は霧のように消え再び、ルアを捕まえる


「全く、愚かな人間よの。親子揃いも揃って。同じ結末を繰り返すのか?」

ルア必死に抵抗するも、魔女の魔法によって動けなくなる。

そして魔女は、再びルアに囁くように

「そんなに。わらわの血が欲しいか?」

「そして禁術で、この村を救う気か?」


その言葉に対し、ルアは、描いた魔法陣で魔女に、

攻撃をするも、全て掻き消される。

そして、魔女は、ルアの右腕に、とある魔法陣を描く。


「愚かな人間には、最高のプレゼントをね。クックック」

魔女は、嬉しそうに、微笑み続ける。



《儀式まで、あと4日》


イリョスは、寝れずにいた。

昨日のルアの発言、態度。

約束は、したが、何か嫌な予感がする。

その予感は、現実の物となっていた。


牢屋の外で、何やら騒がしくなっていた。

それは、イリョスの元に、ルアの母親が、訪ねてきたのだ。


「イリョス君に、逢わせて!!」

「しかし・・・!」「お願い!!」


息を切らしながらも、ルアの母親は、牢屋の中に無理やり入ってきた。

必死で大人達が止めようとしている中、イリョスは、声をかける。


「待ってください!! メーゼさん!!」

「ルアの母ちゃん?」

「イリョス君!!ルアが消えたの!!」


その一言で、イリョスの頭の中が、真っ白になる。


「多分、あの子。魔女の家に向かったんだと思う!」

「このままだと、ルアにも。私と同じ哀しみが・・・!!」

「メーゼさん!!早く下がって!!」

「お願い!ルアを・・・」


「その人から 手を離せよ。」


イリョスの抑えきれない怒りが、殺気に代わり。

イリョスは、大人達の動きを止める。

それを見たメーゼは、その隙に、大人たちに魔法をかけ拘束する。

そして、メーゼは、イリョスの魔力に可能性を感じる。

何故ルアが、イリョスを選んだのか。


「イリョス君」

メーゼの一言で、再び我に返るイリョス。

「一緒に来て!」


メーゼの魔法で、牢屋の扉を開け、魔女の魔法を解く、

そして二人は、あの洞窟へ向かう


「懐かしい場所ね。よくあなた達二人で、ここで遊んでたっけ。」

イリョスは、ルアとの思い出を振り返る。

いつも一緒にいて、この村で一緒に育ち、自分を本当に大切にしてくれていた事。

そして、あの頃は、あんなに近くにいた事。

「この場所、すぐにバレるんじゃ。」

「大丈夫よ。結界を張っておいたわ」


イリョスの中で、疑問が生まれていた。

瞬間魔法は、魔女にしか出来ない上級魔術。

今まで、当たり前すぎて、気にしていなかったが、魔女程ではないが、ルアの魔法は、

通常の魔法使いよりも、早く魔法を唱える事が、出来ている

それに、先程の自分にかけられた”呪縛”と牢屋にかかった魔法も、

魔女にしか解く事の出来ない魔術のはずなのに。

意図も容易く、メーゼは、解いた事。


イリョスは、メーゼに問いかけた。

「結界魔法って、上級魔法じゃ」

それに対し、メーゼは、溜息をつき、イリョスに真実を語ったのだ。


村の呪いをかけた魔女の正体、

それは、メーゼの妹で在り、ルアの叔母。

元々、2人は、上級魔法使いの家計に生まれ、共に、【永遠の魔法】を追及していた。


しかし、2人の仲を切り裂く出来事があった。

それは、2人同時に同じ男性に、“恋”をした事。


その男性は、太陽の様に明るく、村の中心人物だった。


妹である魔女は、必死に、自分を磨き、

その男性に振り向いて貰おうと努力した。

しかし。その男性が、選んだのは、魔女では、なかったのだ。


優しく、自分を磨こうとせず、【永遠の魔法】を追及し続けたメーゼを選んだのだ。


その後、二人は、結婚し、子供が出来、幸せを掴んだはずが。

妹は、2人を恨み、悪魔と契約を交わしてしまった。

その契約を交わす条件が。


“最愛の人の命を捧げる事”


その条件を満たした妹は、晴れて魔女となり、

二度と明るい世界が、来ない様に。陽を封印したのだ。


その呪いは、あまりにも、代償が大きく。

力を得た魔女一人でさえ、継続出来ぬ禁忌。


そこで、魔女は、悪魔の助言によって ある儀式が生まれた。

毎年その村で、一番意気のいい青年を生贄に捧げる事。


そして、初めの生贄に捧げられたのが、イリョスの父。

それに反対した母親も、魔女によって殺されたのだ。


真実を聞かされたイリョスは、何とも言えぬ感情に、なっていた。

両親の敵である魔女。しかし目の前にいるルアの母親の妹であり、ルアの叔母。

この事は、ルアは、知っていて向かったのだろうか。

それに、こんな自分が止めれる相手なのだろうか。


「お願い、妹を倒して」

「そんな事を聞いたら」

「あなた達が、わざわざ禁術をする必要はないわ」

「私と・・・でする!」


イリョスは、動揺していた。

突然の事が、多すぎて。

しかし、メーゼは、優しくイリョスに、言った

「大人の役目でしょ。子供達を未来へ導くのは」

イリョスの中で、まだ整理し切れていなかった。

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