6月6日 9:30 推理小説部
朝6時に目を覚まして、ずっとスマホを見つめているせいか瞼が重くなってきた。緊張はずっと続いているせいか、3人とも全く話さなくなっていた。
突然、渉がトイレから走って戻ってくる音がパタパタと聞こえてくる。勢いよく開いた扉に、私は足の小指を打ち付けられる。
「いったい! え、なに?」
私は小指を押さえながら、深刻そうな顔をしている渉を見上げる。
「ああ、めっちゃ痛いやつだよね。ごめん! 被害者が出たよ! ニュース見て、ニュース!」
やっと来たかという気持ちと、今年も被害者が出てしまったという悔しい気持ちの両方を噛みしめながら、テレビをつける。
「速報です。Y県に今年も隔年の悪魔が出てしまいました。被害者は23歳男性。マンションのエレベーターで、朝7時頃に絞殺されたと見られています。警察は、男性の身元と詳しい状況を捜査し……」
テレビには、犯行があったと思われるマンションが写しだされる。マンション自体は分からなかったが、隣にある店には見覚えがあった。
「ここ、隣町のたい焼き屋さんだ! 昔、母さんと買いに行って昴達にもあげたところ!」
昴も大きく頷く。
「俺もここは行ったことがある。S市だな。そこから県外に出るルートで考えられるのは、高速バスか新幹線か……」
「とにかく、場所を投稿して、その付近で7時前後に撮った写真を確認していこう」
私が急かすと、渉は既にタブレットで情報を確認し続けていた。
「まずはエリアと時間で区切って、3人で手分けして確認していこう。高速バスと新幹線駅、犯行場所付近の写真で昨日から今までを確認する。顔は写ってないから、服装や持ち物で同じような人が利用してないか確認するんだ」
渉は的確に指示をだす。
「でも待てよ、明日とか明後日にY県を出る可能性だってあるんじゃないのか? 同じ服装の人が昨日から今までに、県に入って出ていくということをしてないかもしれないだろ」
昴の言うとおりだ。もしかしたら宿泊しているかも。
「その可能性は0じゃないが、少ないはずだ。わざわざ自分の県ではなく他県で犯行をしているのに、長居したらリスクが大きすぎる。必ず犯人は、急いで戻るはずだ」
確かに、早く犯行現場ひいてはY県から出たいところかもしれない。
「とにかく急いで確認しよう。土日のうちに犯人に結び付けたい」
3人で顔を見合わせてから、作業を始める。思った以上に写真は集まっていて、拡散も50万人を越えている。写真のない投稿は無視し、写真だけを黙々と確認していく。
3年間で1番充実している……不謹慎ながらそう感じていた。
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