水辺で始まる異種友情

@shibirou

第1話

 小さな小さな森の中、そこには小さな小さな池がある。


「どうしてヒダカは人を食べるの?」


「栄養源だから」


「他の生き物じゃダメなの?」


「人間を食わないと、力も弱まるし、存在自体が消えてしまう」


「ふーん。じゃあどうして、人を飼わないの?ヒダカにはヒダカだけの世界があるんでしょう?そこで人を食べる分だけ作ればいいじゃない」


「めんどくさい。こっちに来れば、人間はいっぱいいる」


「じゃあ、私のことは食べる?」


 ヒダカは少女の首あたりに鼻をよせ、スンスンと匂いを嗅いだ。


「まずそう」


「……そう。私はあなた達の腹の足しにもならないのね」


 少女は何処か悲しそうに言った。そこへ、


夜季よき、またここにいたのか。おいで、診察の時間だよ」


「お父様……」


「そんな悲しい顔をするな。今度のお医者様はきっとお前を良くしてくださる」


 父は娘の手を取ると、娘を連れて庭に作られた森から出ていった。


 夜季が振り返った時には、ヒダカはもういなかった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る