2-4

 智浩は気を取り直しておでかけフェアリーサークルの前に立つ。

「待てよ。どこでも行けると言うなら、異世界にも行けちゃうのかな?」

 智浩はふと思い立ってしまった。天の財宝の力。できるのかも知れない。

「よっしゃ! 異世界旅行へゴー!」

 智浩はフェアリーサークルの上に乗った。


 ぱっと世界が変わる。空は重い曇り空。どことなく暗い雰囲気だ。

 ピカッ、と雷がひかり、雷鳴が轟いた。

「デメル、プッポ。ボポルンガ?」

 しわがれた老婆の声。

「誰?」

 智浩は思わず尋ねた。

「クックドワース。ミレルニャ!」

 老婆の声には怒気が篭っている。ガッシャガッシャと甲冑の音を鳴らして、騎士が駆け込んできた。

「うわー! 本物のナイトだ! カッコイイ! そうだ、写メに取っておこう!」

 智浩は無造作にパシャリとやった。

「ギーガー? アッタルンダ!」

 騎士は突然怒り出し、抜剣した。そして智浩へ剣を突き付ける。

「うわっ!」

 智浩は尻餅をついた。

「ポポロイ!」

 騎士は縄で智浩を捕縛する。

「な、なんだよぉ! ベルナデット、助けてぇ!」

 智浩がそう叫ぶと、フェアリーサークルがカッと輝いた。

「やっほー、智浩。今度はどこへ行った…あああ?」

 ベルナデットだった。のんきに出てきたが、状況を見るなり青ざめる。

「助けてぇ!」

「ヴァ、バルンガ!」

 老婆はベルナルドを指差し、驚愕の表情だ。

「アルベール。ローウィ」

 ベルナデットが現地語らしい言葉で話しかけた。何やら話し込んだ末に、智浩の縄は外された。

「ふぅ、ベルナデットのおかげでまた助かったぁ」

 ベルナデットは腰に手を当て、冷ややかに智浩を見つめている。

「智浩ぉ、いきなりファンタジスタに来ちゃうなんて何考えているのサ? 私がいなかったら火炙りにされていたところだよ?」

「取っておきの場所へ行きたくてさ…この世界はどんな世界なの?」

「ドラゴンや妖精が普通にいる世界なのサ! 先程の老婆は魔術師だよ。私が天使であることを見破り驚いていたよ。天使は余程のことがないと現界しないからね。智浩は世界を救うために現れた救世主となる子供だとちゃんと説明しておいたよ」

「自分の世界ですら救えるのかわからないのに、ファンタジーな世界を救える気がしないよ」

「なーに。私に任せておきたまえ!HAHA!」

 ベルナデットは陽気に笑った。

「ねぇ、妖精とか写メに撮りたいんだけど、お願いできないかなぁ?」

 智浩はスマホを手にワクワクしながら尋ねた。

「現地の人に頼んでみれば大丈夫かもね。ちょっと聞いてみるよ」

 ベルナデットは再び老婆と現地の言葉で会話を始める。しばらくして、

「この街にも妖精は住んでいるってさ。早速行ってみるカイ」

 智浩は現地の人間の案内で、街中の大きな木の麓へ向かう。そこにはたくさんのきれいな花が咲いた花畑があった。

 蝶のような羽根や薄いトンボのような羽根を持つ小さい妖精たちが空を舞っていた。

 ベルナデットは妖精たちに頼み込み、智浩は妖精たちと一緒の写メを撮った。

「凄いや! ベルナデット。これならどんな旅行先にも勝る光景だ!」

「良かった。フェアリーサークルで本物の妖精に会うとはね」

 と、智浩は大事な事を思い出す。春野バンディエッタちゃんのお土産だ。

「ねぇ、ベルナデット。この世界の土産物には何がいいの?」

「お土産かい? この世界はまだまだ観光業が未発達だからねぇ。祈りの込められたマジックアイテムの装飾品とかなら普通に見せにあると思うよ?」

 智浩はマジックアイテムと言う単語にテンションを上げた。選ぶなら、年頃の女の子が喜びそうなものを選べば良いものを、自分のセンスで選ぶ智浩だった。贈り物は相手が喜びそうなものにしよう。

 智浩は小物雑貨店を訪れる。

「あっ、お金を持っていなかった…」

 智浩がそこで無念そうに肩を落とす。

「Hey.智浩。私のUSドルと換金するかい?」

「ドル? ここでも使えるの?」

「基軸通貨だからねぇ。ここでも天界で使える護符のようなものの認識だよ」

 さすがは世界の基軸通貨だった。

「じゃあ換金してよ!」

「はいはーい。1ドル180円でございまーす」

 暴利だった。外国為替市場ではもっと円高の取引である。だが、許容範囲内とも言える設定だった。

「で、どの品が良いんだろう」

「そだねー。この中で女の子が喜びそうな物というと…首飾りとかがいいんじゃないかな」

「指輪とかもあるよ?」

 チッチッチ、とベルナデットは指を振った。

「智浩。贈る相手の指輪のサイズはリサーチ済みかい?」

「あっ、知らない」

「なら、ネックレスとかの方が良いよ。私が見たところ、この白銀の花の形のネックレスが良いと見た!」

「うーん。僕にはよくわからないからそれにするよ」

 智浩はベルナデットの勧めるネックレスを買う事にした。幸い、USドルは天で使える御札としての価値があるために智浩の所持金でも余裕で買えたのだった。

 意気揚々と帰る智浩。

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