異世界転生させられた魔術師、女神と世界を歩く

アザラシ好き

第1章 領都サルファでの生活編

プロローグ


 俺の名前はライルだと思う。姓もたぶんある……と思う。何故こんなに曖昧かと言えば、俺はどうやら現在赤ん坊であるからだ。


 それは大きな女性(きっと母)に、抱かれてあやされている最中であることから推測できた。名前が分かったのもその母と思われる女性が、あやしながら俺の名前(たぶん)を呼ぶからだ。姓があると判断したのは、俺を抱いている女性に付き従う人がおり、更に室内の家具や調度品に品があるからだ。


 それにしても状況がよく分からない。そもそも何故赤ん坊なのに、何故こんなにもハッキリと自我があるのか。分からん。分からぬ。分かりませぬ。なので――


 「だぁーー!(何故だー!)」


 疑問の叫び声を上げてみる。誰に対しての問いなのかは不明だし、答えが返ってくることに期待した分けでもない。ただ叫びたかったのだ。この意味が分からない状況に対して。 しかし、俺の魂の問いに思わぬところから返ってきた。


 『それは貴方が転生したからです』


 脳に直接響くように返事があった。どこから来たのかと、思わず母を見上げて見るが、


 「よしよし、ライル~私がママですよ~~」


 ニコニコ笑顔でそう言っているだけで、その言葉も耳から聞こえてきている。先ほどみたいに脳に直接響くような感じではない。


 (どこからだ? そして誰なんだ?)


 疑問が心の中で渦巻く。


 『えっとー、私は女神様です。あなたの頭に直接語りかけてます。思うだけでこちらに通じますよ』


 当然のように返事が返ってきて驚くが、同時に思う。自分で様付けとか、アホっぽいし嘘っぽい。


 『聞こえてますよっ! 誰がアホですかっ!』


 ふむ、思うだけで通じるのは確かなようだ。ならば――


 (状況を説明してくれ。手短にな)


 『ぐぬぬぬぬう、なにを偉そうにいいい』


 (もう化けの皮が剥がれてしまったり?)


 『…………おほほほほ。さて状況の説明ですね。貴方は前世に不幸な事故で亡くなられて今世に転生しました』


 長い沈黙の後、気合いで不満を押さえ誤魔化し笑いをしながら切り替える。短気なのか胆力があるのかハッキリしてほしい。それは置いておいて。


 (前世の記憶が全く無いのは普通なのか?)


 『そ、それは、少々手違いがありまして……その、はい』


 急に威勢が無くなる。怪しい。


 (それで、その手違いとは?)


 少し強く念じてみる。


 『あのぉ、そのぉ、怒りませんか?』


 (取りあえず言ってみな)


 すると、コホンとわざとらしく咳払いをした後語り出す。


 『前世の貴方が亡くなられた事故ですが、実は私のミスで起きた事故でして。それを慌てていんぺ……もとい処理しようとしたところミスがありまして。その、あはははは。それで、色々あって処置が遅れまして前世の記憶のところが欠けてしまったのです。本当は前世の記憶も残る予定だったんですが、まあ仕方ないですよねっ! 気にしたらダメですよっ!』


 この発言に俺は絶句し思わず――


 (最低だよこの女神。他の女神とか居ないのか? いるなら変えてくれっ!)


 本気でそう念じてみる。しかし、その想いは無情にも届かなかった。


 『あはは。他の女神も居るには居るんですが、上司から貴方の担当は私と決められちゃいまして……ハイ』


 (その上司を呼んでくれないか? 詳しく話を聞きたい。先ほど隠蔽と聞こえたような気もするしな)


 『ぐぬぅ、そそそそれは……』


 (そろそろ観念したらどうだ?)


 『は、ハイ。…………正直に話しますと』


 それから女神がポツポツと語り出した。


 大まかには先ほど語った通りだが、事故を隠蔽したのは良いが結局上司にバレた。その後俺の魂をお詫びに転生させようとしたが、時間が立ちすぎていて一部記憶が欠けてしまったのだ。そのことを上司に告げると、上司は大変怒り、この女神に俺をサポートするように命じたらしい。期間はおよそ安心して独り立ちができるくらいで、上司が許可を出すまでとのこと。


 『でと、私はこんな面倒な仕事から早急に解放されたい! なのでビシバシ行きますよっ!』


 (それについては同意する)


 こんな女神とは一刻でも早く縁を切りたい。


 『同意が得られたところで早速行動開始です。とは言っても現在赤ん坊です。できることはほとんどありません。なのでまずはステータスチェックをしたいと思います。ステータスと念じてみてください』


 言われた通り、『ステータス』と念じてみる。



名前:ライリール=グラン=オーガスト

職業:伯爵家三男  種族:人族

年齢:0歳  性別:男

クラス:なし

レベル:0

状態:健康


ボーナス ()内はBP補正/スキル補正。ユニークや固有は除く。

耐久:+150(+0/+0)=150

魔力:+200(+0/+76)=276

体力:+80(+0/+0)=80


筋力:+5(+0/+8)=13

器用:+5(+0/+21)=26

敏捷:+25(+0/+21)=46

精神:+35(+0/+17.5)=52.5

知力:+25(+0/+48.5)=73.5

感覚:+40(+0/+48)=88

幸運:+25(+0/+0)=25


残りボーナスポイント:0


スキル:

(影魔術LV10)、(水魔術LV8)、(風魔術LV8)、(闇魔術LV6)、(地魔術LV6)、隠蔽LV7、隠密LV9、短剣LV8、危険感知LV6、魔力回復量上昇LV8、魔力感知LV7、気配察知LV6、投擲LV6、罠LV7、計算LV7。


残りスキルポイント:0


ユニークスキル:女神アルテナの加護、第六感、魔法の素質。


固有スキル:女神アルテナの寵愛、女神アルテナの贖罪、魔法の才能、暗殺者の心得、転生者、転生者への加護。


称号:なし



 ステータス表示により分かった事、まずは自分のフルネームだ。ライリール=グラン=オーガストで伯爵家の三男のようだ。伯爵家三男が職業かどうかはこの際置いておこう。0歳なのにスキルがあり過ぎだろ……。


 『それはですね。前世のスキルを引き継いでるんです。ホントはもっと沢山あったんですけど……例の件のせいで魂に良く馴染んでいる、LV6以上のスキルしか残りませんでした』


 (おい、例の件とか言ってるが……もういいや、スキルの()付きはなんだ?)


 『あ~そのスキル、<影魔術>などの魔術はこの世界で使用できないんですよねー。何しろ魔術がありませんから』


 (意味無いじゃねーか! 15個中5個のスキルが……)


 『意味無くは無いですよー。スキルは使えませんが、ステータス補正はされてますから。魔力は+76、知力が+38分、足されたりしてますね。かなり大きいですよっ』


 (そう言われるとかなりでかいな。だが、それよりもだ。もの凄~く眠い。これはなんとかならないのか?)


 『まあ、赤ちゃんですからね~。今回はこのくらいにしましょう。おやすみなさ~い』


 そして俺は睡魔に敗北し眠りについた。


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