B.
「うわあ!きれいだねぇ!」
両手を広げて遠い空を仰ぎ見るその幼子は、とても儚く白く見えた。
「そうだなぁ」
青さの映える草の上に寝転がって、お前もおいでと手招きをする。
きなり色のワンピースを軽く揺らして、頭を突き合わせるようにその子もころんと転がった。
まだ新しい、若くて細い草たちは、寝転んだ身体をちくちくと擽る。
軽く身を捩る度に、真新しい土の匂いがした。
「見て!青と白と緑だよ!」
高く掲げたその子の指の先には、生い茂った5月の新緑に、抜けるような濃い青空。
浮き沈んでいるようにも見える、太陽の傍の大きな入道雲。
ああ、勿体ないことをした。
こんないつものジーンズなんかじゃなくて、もっと良いやつを着てくれば良かった。
折角一緒にこんな景色を見られたのに。
左手を頭もとに動かして、自分のではない小さくて温かな頭を撫でる。
血の通った温度だ。
細くて柔らかい、長い髪が指に優しく絡み付いた。
「来年も来ような」
「うん!」
嘘を吐いたかもしれない。
来年は一緒に来られないかもしれない。
それでも、口に出したことを悔いたりはしなかった。
「病院からも見えるといいのにねぇ」
「カメラを持ってくれば良かったな。そしたら、大きく引き伸ばして天井に貼っておけたのに」
「失敗だねぇ」
「そうだなぁ」
この抜けるような青空が、永遠ならばどんなに良いか。
((浮き沈むってどういうこと……? こーれは情景描写も心理描写も足りない気がするし、背景を足したほうがいい予感))
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