ちょっと練習
夏緒
A.
とろい。
ちんたら走りやがって。
メーター無駄に上がるだろうが。
膝の上で構っていた携帯から顔を上げて、斜め前に座る耄碌面の運転手を、バックミラー越しに睨み付ける。
液晶の光が強すぎて暗がりがぼやける。
ちらりともこちらを見ないそいつは、黙ってヘッドライトの先を見続けている。
車体がガタガタと揺れるのは道の舗装が悪いのか、こいつの運転が余程下手なのか。
時折思い出したように入る途切れ途切れの無線連絡以外、車内にはラジオもかかっていない。
横に置いた荷物の鞄を気にかけながら、運が悪いな、違うのに乗りたかった、と落胆する。
出来る事ならばそもそも自力で向かいたかったが、土地勘のなさ故、背に腹は替えられなかった。
もう一度光る液晶画面を見遣る。
デジタルの時計は8時16分を表示していた。
旅館の予約まで15分を切った。
いい加減焦燥感に駆られて、無言の空間に苛ついた声を投げ掛ける。
「ねぇ、まだつかないの」
もう割と長いこと乗っている。
そんなに遠くではない筈だ。
「もうじきですよ」
行き先を聞かれた時と同じ、ぶすったれた声が返ってきた。
((これはあれだなあ、耄碌はひらがなでもうろくって書くべきだな。あと語り手が男か女か分からねえから、それ分かるような描写も足すべき。やっべぇ色々足りない。))
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