黒幕系仮想聖女のリベリオン

飴玉鉛

第一章 イリオンの黒聖女誕生秘話

一話 異世界侵略型デスゲーム




 【玉無し】

『意味』そのモノの良さを失っている事。

『補足』翻って男性が臆病な様を、痛烈に侮蔑する用語としても用いられる。




   $ $ $ $ $ $ $ $ $ $ $




ついてない・・・・・!?」


 あんまりと言えばあんまりで、しょうもないと言えばしょうもない。しかし軽く流すには無理のある失態に、俺は悲痛な声をあげてしまっていた。

 ついてない――字面にして表すと、運がないのを嘆いているように聞こえるかもしれない。だが俺が狼狽えてしまったのは、運気云々に不服があるからではなかった。


 文字通りついて・・・いなかったのだ。全人類の標準的な男性には年齢の区別なく、股間にぶら下がっていてしかるべき俺の太陽マイ・サンが。


 太陽なのに股間にあるとはこれ如何に。その疑問は女性には答えられずとも男性なら『あっ(察し)』となるぐらいには簡単な例えだろう。

 太陽は英語でsunサンと書くが、正しくはthe sunとなる。しかし前者でも通じるため、息子を意味するsonサンとも掛けられて、意味深な表現のもとになったりしたのだ。

 女性の方にはますます意味が分からないかもしれないが、ここまで言って分からない男性はほぼいないと言ってもいい。股間にぶら下がるマイ・サンとは下ネタの化身であるからして。


「うわぁ……キャラクリ(※キャラクタークリエイトの略)ミスって性別の欄を女にしちまってたか……!」


 俺は自分の間抜けさを呪った。

 よりにもよってキャラクリのやり直しが不可な仕様の、『Erosionreality』技術によるゲーム『Olympusオリンポス』で致命的なミスを犯してしまったから。

 個人が必ず一つだけ所有する遺伝子情報アカウントを認証に使っているため、複垢(※複数アカウントの略)は実現不能。もし抜け道を見つけて複垢を成し遂げたとしても、運営に露見すれば政府を通して垢BAN(※アカウント剥奪という意)される素敵仕様だ。

 この垢BAN、分かりやすく言い換えれば極刑に相当する罰則である。一言でいえば冗談抜きに殺される。根性入った輩でも、無駄に殺されるリスクを犯してまで複垢を用意しないだろう。ER技術を適用したゲームという、普通に死の危険を犯すゲームで、ゲーム外でまで死のリスクを負うなんて馬鹿げているからだ。


 俺は進んでそんなリスクを負う勇者じゃないし、そもそも複垢を用意できるコネはおろか、技術も知恵も持ち合わせていなかった。だもんで、俺は一度きりのキャラクリでミスってしまったことを悔やむしかない。

 だがそれよりもなお、慄かざるをえない現実がある。今、俺は男から女へ素敵なジョブチェンジを果たしてしまったのだ。

 そう、このギリシア神話に類似している『オリンポス』で! 女に! なって! しまったのだ!


「ほぉりぃしっと……!」


 欧米チックに遺憾の意を表明する。

 ギリシア神話で女性の扱いは色んな意味でヤバイの一言。綺麗で可愛ければ男でも下半身的意味でヤバイ世界、それがギリシア神話。ノーマルな性癖の持ち主にはオススメできないバイオレンスな代物だ。

 なぜよりにもよって、こんな笑えないミスを犯してしまったのか。それはひとえに、俺が浮かれていたからと言わざるを得ない。

 何せER技術によるゲームとは、文字通りの『デスゲーム』であるからだ。自分で好きこのんで命懸けの遊びを行なうのである。この事実を前にすれば、多少浮足立っていても仕方がないだろう。


 それにしたって、こんなアホ丸出しのヤラカシをやっちまうなんてな――と俺はほんの少し途方に暮れた。

 当初想定していたロールプレイ内容が、まるっと改定不可避となってしまったからだ。

 俺は嘆息してコンソールを開き、動画撮影と配信が問題なく始まっているのを確認すると、外部サイトに接続して自スレの住民の反応を伺った。


「俺氏、痛恨のミスを犯して女になっちゃったでござる。どうすればいい? 行動安価は下5で」




   $ $ $ $ $ $ $ $ $ $ $




 ――西暦23×☓年。人類は紛争、貧困、環境に始まる諸問題を解決し、恒常的な世界平和を築く事に成功した。


 『クラークの三法則』に曰く、十分に発展した科学は魔法と見分けがつかないという。以前まで解決は不可能とされていた大きな世界的困難の数々を、過去の人々からすると荒唐無稽極まりない超科学によって解決したのだ。

 諸々の法整備やらなんやらを経て、超科学によって管理される世界の下、人々は衣食住や娯楽に不足しない世界を手に入れたのである。その快刀乱麻の如き一連の流れはご都合主義じみていた。


 それからおおよそ百年。社会の諸々の世代が完全に入れ替わった頃、世界で深刻な社会問題が発生した。


 そう、VR技術――バーチャル・リアリティー技術を利用したゲームでの、俗に言うデスゲームが世界中で氾濫したのだ。

 デスゲームとはゲーム内世界で自操作キャラクターが死亡すると、リアル世界で自操作キャラクターを操作していたプレイヤー自身も死んでしまうもの。

 人類初の統一政府である『地球連邦政府』は、これを問題視してデスゲームの根絶に躍起になっていた。

 だが世間の若者層を中心に世界中の人々は、政府が予想だにしなかった反応を返してきたのである。


「折角スリル満点のゲームで楽しくやってんのに邪魔すんな!」


 簡潔に纏めると、概ね上記のような反応だったのだ。


 意味が分からない、人々は狂ってしまったのか? そうとも取れる反応だがこれには原因があった。

 それは科学技術による『死後の世界の観測』である。

 人間は死ぬと、直後に体重が約21グラム軽くなる。この21グラムを魂の重さであると確定させ、この魂がどこに流れていくかを観測し、捕捉することで『死後の世界・・・・・は実在する・・・・・と科学的に立証できてしまったのだ。


 そして死後、魂のみとなった人間が、自我と記憶の連続性を保ち、現実世界と『死後の世界』を行き来できると判明。さらにはその魂だけとなった人間を現実で観測できてしまった。輪廻転生と呼ばれる概念に似通った物も、とある天才によって存在だけは発見できてしまったのが追撃となる。

 輪廻転生する先は、無限にある世界線で時間軸を選ばずに、ある程度は任意で行なえると判明してしまったのが運の尽き。『死後の世界』に纏わる事柄を研究していた天才科学者が、この情報を大々的に発信してしまったことで、人々の死生観に大いに影響が出たのだ。


「現実で死んでもがあるなら、別に今ある命を惜しまなくてもいいんじゃない?」


 そんな風潮が蔓延り、良識や常識のある個人ですらデスゲームを容認する雰囲気が出始めた。いたるところで凶悪な犯罪も頻発し、世界は混乱と凶悪犯罪の坩堝に叩き落とされたのである。

 その状況をある程度は改善したのが、『死後の世界』の実在を証明した天才だ。彼もしくは彼女は、死んだ人間の魂を拘束、抹消、改竄のいずれかを選べるツールを開発し、これを地球連邦政府に提出して犯罪への抑止に繋げるよう働きかけたのだ。


 これにより数年の時を跨いで、ある程度は社会問題も沈静化した。とはいえ人々の狂ってしまった死生観まではどうにもならなかった。


 死んでも次がある。この意識から生死に関わる暴力沙汰にも、以前ほど抑制が利かなくなっていたのだ。人間は本能として痛みを忌避するもの、それを軽減できるVR技術を利用したデスゲームが市民権を得つつあったのである。

 死をスリルのハイエンドだと認識したのだ。個人でゲームが簡単に作れる昨今、いくらデスゲームを法律で禁止しても無くなることがなかった。これに連邦政府は頭を抱え、仕方なくデスゲームを合法化し自分たちが管理運営することを考案した。


 そのためのER技術の転用である。


 ER技術とはErosion侵食 reality現実技術の略称だ。それは文字通りの意味で、他の世界を侵食する・・・・・・・・・もの。

 並行宇宙パラレルワールドは無限に存在する。その並行宇宙のいずれかにプレイヤーの化身アヴァターラを作製し、化身の中へプレイヤーの魂を送り込むことで、活動制限の存在しない『デスゲーム』を行なうのだ。


 元々は政府が並列宇宙への軍事行動を行なうために研究・開発していた、なんて噂も立っているER技術。これによる『デスゲーム』は合法化され、命をチップにした『デスゲームを楽しめる人』はこぞって飛びついたものである。

 並列宇宙では何をしてもいい。生きるも死ぬも自己責任。なんて素敵なのかと。――過去の人々が見れば、気が狂っているとしか言えない光景が広がっていた。


 必要なものはたったの三つ。

 一つがER技術適用のゲーム媒体、『人体量子化転送装置』だ。これはカプセル型のボックスであり、ちょうど人が一人だけ入れるもの。それによりプレイヤーの肉体を量子化し、並列宇宙に送り出すのだ。もちろん高価である。

 二つ目が複垢を防ぐためのアカウント、遺伝子情報の提出。偽造がほぼ不可能であることや、政府による管理運営の容易さを助けることが目的だ。

 三つ目が、転送先の並列宇宙を選ぶためのソフト。これがなければ冒険が始まらない。ただ体を量子化させただけでは、現実世界へ復帰後の体が健康体に戻っているだけに終わる。


 ――それらを揃えた少年が、ここにいた。


 今年で十五歳になったばかりの少年は、名前を山口賢民やまぐち・けんみんといった。日本自治国の広島区出身で、ゲーマー界隈ではちょっとした有名人でもある。

 知己の間柄の相手からはヤマグッチャンなどと呼ばれる彼が、狭い界隈とはいえそれなりに名の知れた存在へなれたのにはもちろんワケがある。

 個人制作の小さな物とはいえ、彼は四度にわたるデスゲームの生還者であると同時に、四度とも自身の配信している生実況の動画でとある方式を実行していたのだ。


 山口賢民は自身の行動をとあるネット掲示板で募集し、指定されたものを絶対的なものとしたのである。

 合言葉は『安価は絶対』で、中には当然無茶苦茶な指示があった。それでもルールを遵守し、四度のデスゲームを生き残った彼は、狭い界隈の中でだけとはいえ英雄扱いされている。

 それで彼は調子に乗ったのか、今度は政府が運営しているERゲームに手を出した。ソフト名は『オリンポス』――賢民の世界線では有り得なかった、神が実在している並列宇宙における紀元前1300年頃。ギリシア神話に類似する世界だ。山口賢民はその世界を冒険することに決めたのである。




   $ $ $ $ $ $ $ $ $ $ $




88:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 うぉいw いきなりトチってんじゃないよw


89:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 いきなり安価w 待って、何も考えてないw


90:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 おwんwなw ギリシア神話風世界で女w 難易度ルナティックw


91:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ちょっと待って。カメラの位置おかしいからイッチのアバターが見えん!


92:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 自分のアバターを確かめろ。そんでそれを俺らにも見せて。




「あ……カメラおかしい? ちょい待ち、すぐ直すから。……どうよ?」


 賢民は自スレの住民からの指摘に慌てて対応した。

 入出力装置コンソールを呼び出してカメラ配置を操作し、自分にカメラが向くように調整する。そうしながら動画を見ている住民に向けて、傍目には独り言を呟いているように言った。


「でもちょうど良さげな安価取れたな。カメラ直して皆に俺のアヴァターラを見せつつ、ついでに自分でアヴァターラを確かめりゃいいんだし」


 言いつつ、初期装備の一つである手鏡を、アイテムボックスの目録インベントリから取り出した。コンソールで選択し、呼び出すだけで所持アイテムを出せるのだ。実際とても便利である。

 アヴァターラを西洋風に『アバター』と呼ぶ人もいるが、俺は公式が言うアヴァターラの方で通すことにしている。その俺のアヴァターラは、いわゆる中性的な美少女といった風情だ。


 ショートボブの黒髪は毛先がカールしていて、涼し気な目鼻立ちは晩秋の月のように薄い冷気を有している。長いまつ毛の下、アーモンド型の大きな碧眼が瞬きで見え隠れしていた。

 スッと伸びた手足はしなやかで、胸はほんのり膨らんでいる。身に纏っているのは世界観に合わせた一枚布の衣服、キトンだ。身長は賢民と同じ170センチほど。しかし体重に関しては軽くなっているだろう。腕を上げたり振ったりしてみた感じ、体のキレもそうとういい。




93:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 うわスッゲェかわいいんだけど。……え? これ設定ミスってなかったら男キャラだったの?


94:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 おいイッチ! ワレェなに美形になろうとしとるんじゃ! 等身大の自分で行けや!




「あーあー、何も聞こえませーん。元の俺の顔面偏差値上げただけなんだから別にいいだろ。スキルのせいでなんか女っぽくなっとるし、半分罰ゲームみたいなもんだぞ、これ。とりあえず次の安価、下3な。右も左も分からんから何するか選びたいし」




95:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 地味に間隔短くすんのやめろw


96:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 今までの配信でもう慣れた(古参面)

 イッチ、とりま裸になれ(ゲス顔)


97:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 拙者『オリンポス』のシステム知らない侍。そこらへんの基本システムと、ついでにイッチのアバター名も教えて。




 お、と賢民は眉を動かした。どうやら安価を取った住民は、賢民が実況する『オリンポス』のことを知らないらしい。

 無理もないことではある。何せERソフトは万に近い種類が販売されているのだ。

 これを機に説明しておこう、もしかすると気になった住民が『オリンポス』に来てくれるかもしれない。そう思い賢民は一つ咳払いをして口を開いた。


「『オリンポス』ってのは、政府が観測した並列宇宙ナンバー2020の、いわゆる神様って奴が実在しちまってる世界線だな。……なんか自分の声が超かわいいのは気になるよ、うん。んで……システムとしては自由度100パーセント。年齢制限に引っ掛かるようなことでもオールオッケーな代わりに、ゲームスキル的なもんで戦闘とか生活とかをサポートはしてくれない。全部自分のセンスで立ち回らなきゃならん。

 そんで原則として政府、つまり運営だな。これが禁止してんのが、神様みたいな超自然的存在がいる並列宇宙内で、リアルの世界のことを意識的に伝えることだな。リアル世界にどんな影響が出るか分からんから……らしい。だから俺はとりあえず、自分で設定したキャラクターをロールプレイする形で身バレ防止しようとしてた。

 あとゲーム内スキル、剣技とか魔法とかの補正がない代わりに、アヴァターラに関する身体的な才能をパッシヴスキルとして所持できるな。俺の場合だと『人体の黄金比』とか『未完の大器』みたいな。前者がアヴァターラの状態を健康に保ち続けて、痩せ過ぎたり太り過ぎたりしない上に美形になる。んで後者が反射神経と動体視力の向上、体を動かす才能全般の上方修正。体動かす系だと万能の天才になるスキルだな。で、俺のアヴァターラの名前だっけ? 『ニコマ・ソクオーチ』だ。イかしてるだろ?」




98:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ニコマw ソクオチ?w 

 日本風に名前弄ったら即落ち2コマwww


99:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ☓イかしてる

 ○イカれてる


100:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ばっかじゃねぇの? いやバカだろおまえwww


101:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ゼウスかポセイドンあたりに襲われて、『絶対〇〇○なんかに負けたりしない!』→『〇〇○には勝てなかったよ……』されそうw


102:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 だが待ってほしい。イッチは男、名前は即落ち2コマ。ここから導き出される答えとは?


103:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ……おまえホモかよぉ! 



「失敬な。俺はそこらへんに偏見はないぞ。ビバ自由恋愛。あと名前に関してはただのネタだ。ログアウトしたら戻れるけど今は女になっちまったし、親しみを込めてニコちゃんと呼ぶことを許す」




104:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ニコちゃん。……かわいい。かわいいけど待って。

 人体の黄金比? 未完の大器? ……ゲームだと糞スキルっぽいけど、リアルにあるとめっちゃチートスキルやんけ!


105:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ログアウトできるのかよ!

 とりあえずイッチ……もといニコちゃん。『オリンポス』ってなんか行動指針みたいなのないの?

 ストーリーシナリオとか。サブシナリオでもいい。

 それがなかったら安価決めづらいんだが。




 序盤にしては意外とまともなレスがついた。いや当たり前の疑問ではある。

 俺は「んー……」と唸りつつ、記憶を掘り返して肯定した。


「ストーリーシナリオ……とは違うけど、それっぽいのはあるよ。ERゲーム全体に言えることらしいけど、その世界の成り立ちや文明レベルとかを調査したり、リアルの歴史に近い並列宇宙だとデカいイベントに関わって活躍するのが推奨されてる。あとゲーム内での独自の資源とかを収集したりして、データを集めるのもアリっぽい。

 特にファンタジー要素がある並列宇宙なら、そこで使われてるエネルギーを調べたりとかな。魔力とかね。そういう調査系がクエストとして配信されて、クリアするとボーナスポイントを手に入れられる。そのポイントで後天的に身体能力とか才能を強化できるし、なんならパッシヴスキルを手に入れられる」




106:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 へー……。

 リアルにゲーム要素足したようなもんなんだな。


107:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 ERゲーム知らんヤツに言っとくと、ゲーム内でも普通に腹減るし眠くなるぞ。疲れもするしな。時間経過もリアルと同じだ。

 で、ゲーム内で飯食うと、リアルの自分の体も栄養摂取したことになる。

 なぜって? 人体量子化転送装置の中に入るとな、量子化した自分の体を並列宇宙に送り出して、そこで元の体をデザインし直したアバターにプレイヤーの魂が入るからだ。

 つまりこのニコちゃんの体、イッチの元の体を素材にしてる。


108:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 》》107 長文兄貴説明ご苦労さま。

 で、結局何が言いたいの?


109:名無しに代わりまして英雄志望がお送りします

 》》108 つまりだな、ニコちゃんは飢えるし喉乾くしおネムしたくもなるし催したりもする。

 紀元前とかいう未開の地で、だ。神話世界っぽくても未開の地でだぞ。

 ……餓死とかしたくなかったら早く人里に行くんだよぉーっ!




「あっ」


 せや、こんなとこで管巻いとる場合やない!

 俺は長文兄貴の指摘に目からウロコを落としつつ、早速とばかりに安価を求めた。


「これから俺は何をするか、以下の三つから選んでくれ。聞き逃すなよ。

 一、ニコちゃんは無難に最寄りの人里を探してさまよう。

 ニ、『人体の黄金比』スキル持ちのニコちゃんはおもむろに裸になる。

 三、冴えてるニコちゃんはギリシア神話の神様にお祈りしておねだりする。

 下10で頼む」


 スレの中で住民の一人が言った。

 ギリシア神話だとどれも地雷安価にしか見えない件について、と。

 たしかにその通りだなと俺も思った。だが一度出したからには、安価は絶対である。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る