旧図書館と迷える放課後

つばきの。

「――宮本みやもと花帆かほさん」


 花帆のことをなぜかフルネームで呼んだ園村そのむら先生は、花帆の顔と、答案用紙に書きこまれた名前とをまじまじと見比べた。

 中間テストの結果を返却している最中だった。

 ほかの生徒には見せなかった態度を不審に思っていると、声を落とし、さらに不可解なことを口にする。


「あの、もしよければ掃除をお願いできませんか。放課後、場所は旧図書館。そう、あの教室棟きょうしつとうに囲まれるようにして建っている古い建物です」



 これが、花帆とあの不思議な図書館との始まりだった。

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