第258話 夏休みデビュー
夏休み明けの始業式。
杏里と一緒に学校に行き、教室に入る。
既に数名教室にいるが、夏休み前と比べ特に変わったところはない。
自分の席に荷物を置き、ホームルームが始まるのを待つ。
「おっす! 天童、久々っ!」
「杏里おはよー」
高山夫妻が現れた。
高山はいつも通りだけど、杉本は学校バージョン。
夏休みの間に普段着を着ている所を何度も見ており、この校則通りの格好を見ると違和感を感じる。
「おはよ。今日は朝から元気だな」
ここ最近高山は顔色が悪い日が多かった。
でも今日はそんな事もなく、顔色もいい。
目の下も黒くない。しっかりと寝たようだな。
「おう。昨日は早めに寝たからすっきりだぜ!」
そんな朝の会話も久々だ。
今日から学校かー、またいつもの生活に戻るんだな。
「おはよう」
遠藤だ。そういえば遠藤とはあまり連絡を取らなかったけど、雰囲気が変わっている。
「おはよ。髪切った?」
「髪が長いとじゃまだしね」
すっかりこの夏で黒くなった肌、逆に真っ白な歯が浮いて見える。
そして、少し長めだった髪もバッサリと切っており、イメージが変わっている。
「随分さっぱりしたな」
「まぁね。井上さんと練習するから、髪が少し邪魔だったからね。ところで、しっかりと課題は終わらせたのかい?」
「もちろん。遠藤は?」
「当たり前じゃないか。文化祭での発表が今から楽しみだよ」
おっと、すでに発表する気満々ですね。
ふん、負けるか! こっちだっていい線いってるんだぜ!
「お互いに良い結果になるといいな」
「そうだな」
そして、遠藤は自分の席に去っていく。
何だか夏休み前と随分雰囲気が変わったな。
なんだか少し丸くなった気がする。井上さんの効果かな?
「司君、課題持って来たよね?」
杏里が今の話を聞いて不安になったのか?
「大丈夫だって。今朝も一緒に準備しただろ? ほら、ここにしっかりと……」
俺の机の横には大きめの手提げがぶら下がっており、中身もしっかりと入っている。
バッグだけあって、中身が無いと言う落ちはない。
「良かった」
――キーンコーンカーンコーン
ホームルームの始まる時間だ。
少し話しこんでいたらすでにクラスメイトは全員揃っていた。
みんな変わりないね。と思ったけど、数名夏デビューしたっぽい奴らがいる。
その髪の色、黒じゃないよね?
大丈夫かな……。
っと、先生が来たようだ。先生と会うのも久々だな。
バイト以来会っていないけど、相変わらずだったのかな?
「皆さん、おはようございます。夏休みに大きな怪我や病気はしませんでしたか? みなさん、揃っていますね?」
ん? なんか先生の雰囲気が違う。
言葉使いもだけど、服装も何だか普通だ。そして、寝癖もなくしっかりと化粧もしている。
いつもの先生じゃない! まさか、偽物か!
「今日は始業式とホームルーム。後は二学期の連絡をして、下校になります。みなさん、きちんと課題は持ってきましたか?」
調子が狂う。一体何が起きている?
いつもだったら『おーし! みんないるな! 点呼終わり! 課題持ってきたか! 集めるぞー』。
とか、大声で話すのに……。
教室内がざわつく。
みんな違和感を感じているようだ。
まさかとは思うけど、先生も夏デビューしたのか?
「では、始業式の後に課題を集めますので各班は準備しておいてくださいね。では、時間になったら体育館へ移動をお願いします」
先生の笑顔が眩しい。
まぁ、結構美人な先生だったけど、言葉使いと服装、それに化粧でここまで変わるのか。
何だか、大人の女性に見えてしまう。あ、良く考えたら先生は大人か……。
軽くみんなに会釈をして、教室から出ていく先生。
もし、本物だったら大事件だ。新聞部に報告しなければ!
「て、天童……」
後ろの席の高山が俺の肩を叩いてくる。
俺はゆっくりと振り返る。
頬に高山の指が突き刺さった。
痛い。
「おい」
「冗談だよ、冗談。あれなんだ? 酔っているのか?」
高山もさりげなくひどい事を言うもんだ。
朝から酔っているはずないだろ? 寝ぼけているんだよ。
「おかしいよね。浮島先生、あんな感じじゃ無かったよね?」
杉本も違和感を感じているようだ。
「何かあったのよ」
杏里の目が鋭くなっている。
何か心当たりでもあるのだろうか?
「でも、あの浮島先生だぜ? 何があったんだ?」
「分からない。でも、人を変えるほどの何かすごい事が起きたのには間違いがない」
浮島先生の話題であっちもこっちもざわついている。
が、そろそろ時間だ。体育館に移動しなければ。
長い校長先生の話も終わり、予定通りに始業式も終わる。
そして、再び教室に戻り、課題の回収。
「はい、皆さん頑張ってきましたね。近日中に発表されますが、代表になった場合は頑張ってくださいね」
回収された課題は点数評価され、場合によっては文化祭で発表になる。
代表になった場合は体育館を使ってドドーンと発表。
文化祭で一つのイベントとなる。そして、内申点もおいしいらしい。
「では、今日はここまでで終わりますが、頭髪、服装に問題がある方が何名かいますね」
先生が教壇から教室内を歩き回る。
そして、何名か先生から肩を叩かれている。
「はい、今肩を叩かれた皆さんは少し校則違反の疑いがあります。この後、生徒指導室に行きましょう」
案の定スルーされなかった。
まぁ、夏休み明けだと良くある事らしいし、明日には元に戻っているだろう。
先生も明日には元に戻っているのだろうか……。
先生の身に何が起きたのか。
校則違反者はこの後、どうなるのか。
そして、俺達の課題の結果は……。
こうして、二学期もスタートした。
いつものメンバーに、いつもの学校。
そして、俺の隣には杏里。
二学期もよろしくなっ!
「っしゃ! 終わった! 天童、俺はさっさと帰るぜ!」
「珍しいな、何かあるのか?」
「ちょっと欲しいものあって、バイト始めたんだ」
そして、ここにも一人新しい事に挑戦するメンバーが。
何が欲しいのかは分からないけど、応援するぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます