Lining Chrstmas コンダクター

日向月

楽しいタノシイクリスマス

今日は楽しい楽しいクリスマス。

窓を開けると、イルミネーションがキラキラと輝いて、空から木の上に落ちてきたお星様は町行く人たちを見守りながら、サンタが来るのを首を長くして待ちわびているようだ。

しかしここは、輝きを失っている。

明かりは何一つない。

楽しいことも一つもない。

何も変わりばえしないこの世の中は過ごし飽きてしまった。

両親はおらず、特に遊ぶ用事もないので楽しいことがない。

サンタクロースが本当にいれば、一寸ピリッとした日常を願おうか。

途端、ガラスがノックされる。

顔をガラスの方に向けると、黒に統一された軍服のような恰好をした青年が一人、笑顔で此方を見つめていた。


楽しいことみーつけた。


口角が自然に上がった。












「やあ、お嬢さん。こんにちは。」

「こんにちは。ブラックサンタさんですよね。」

「あれれ、君、僕らの事知ってるんだ。」

「ええ、悪い子に悪戯するって言われてる。けれど、本当はいい人なんでしょう?」

「まあ、そう言われてるけど、最悪この袋で連れ去ってしまうのに、どうして"イイ人"何て呼べるんだい?」

「あら、連れ去るのはどれも身寄りもなく一人寂しく過ごしている子じゃなかった?その対象に私は入ってるんですか?」

「いいや、君はそのリストには含まれてない。ただ、悪戯をするだけになってる。」

「そう。」


そう呟いて、聖歌は少し視線を外す。

そして、手を鳴らしてそうだ!と声を上げる。


「ブラックサンタさん、鬼ごっこしない?今退屈で退屈で仕方ないの。今も、この世の中も。だからね、もしブラックサンタさんがこの遊びに付き合って、もし私が負けたら、素直に罰は受ける。だけど、私が勝ったら、私の願いを叶えてくれない?」

「鬼ごっこって?君、そんな年してないでしょ。戯れ事はよしな」

「はい、スタート!」

「一寸!」


聖歌はハンガーにかかったコートをひっぺがし玄関に一直線に駆ける。

扉を開けると、もう一人、同じような恰好をした人が立ち塞がっていた。


「退いて!」

「退くわけない。」

「いいから退いて!」


聖歌がそう言うと、反射的に目の前のサンタが退き障害物がなくなる。

それを横目に駆け抜けた。

後ろで二人が口論しているが気にせず、階段を下りていく。

雪がはらはらと舞い散るなか今宵の楽しい楽しいクリスマスが幕を開けた。

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