目覚める事のない自分の側に
みし
Outer of mind
濁りきった大気をかき分け 光をみつけた
そは新たなる狂気への入り口
退廃と堕落が群れをなし 幸福の名のもとに忍びよる
肉体と魂をむしばんでいく 凌遅を受けるかの如く少しずつ
——自らを虐げながら
張り裂ける叫びは喜びを振るわせながら
求めるほどに遠ざかる桃源郷に己をおとしいれる
暗黒の業火が全てを燃やし尽くし
その後に永遠に広がる虚空の中に
蝕んだ肉体と精神を平穏に導かせる
まるで湖に朽ちて沈みゆく落ち葉のように
閑かに湖底に沈みゆく
その身は泥にまみれた湖底でゆっくりと朽ちる
汚泥にまみれながら 融合して果てる
自我と本能と己を包んでいた超自我のすべてを
息苦しいほどに歪んだ外界の出来事が
見知らぬ深淵の中でゆっくりと
そは祝福される事も浄化される事も無い
瞳孔を失った眼孔を食い尽くす
脳髄が流れでて思考を失う
すべての破壊と共に
かりそめの肉体を腐らせて
魂魄は仮初めの宿を失いさ迷える
泥縄より産まれ出た卑賎な肉体が再び泥に返り
深淵に打ち捨てられた魂魄は光を探し求める
その先にあるものが何であるか知ろうともせず
虚ろな眼差しのまま 白日夢を見続ける
黒山羊と白山羊が待ち構える
夢と希望を貪りながら怠惰を究める矮人の群れ
暗闇をかき消すような音色に喉をかきむしりたい衝動を覚え
戦慄の儀式は繰り返される
絡繰り人形の様に動きつづける物言わぬ奴隷達が
結末を知らずに左の道へ死の行進を続ける
口の端を歪めた汚らしい矮人達は真実を知ることもなく
疲れ切った下僕達を満足そうに見つめる
檻の中で見られているのも知らぬ矮人達は
冷ややかな視線を投げかけられる事も知らずに呻き続ける
限られた空間に閉じこめられているのも知らずに
自由を満喫していると思い込んでいる猿達に
鞭を食らわせようとする物言わぬ奴隷
矮人どもはその滑稽な道化を楽しみながら
次の遊戯を考えながら夢精する
汚らわしい矮人のその液体を
奴隷達が争ってそれを押し頂く
矮人どもの気紛れがその空間を血の海と変える
正義を振りかざした赤い船に乗った船乗り達が
平和の船に乗り込み血の海に漕ぎだしていく
常識と言う名の槍を振りかざし
見えない悪魔に立ち向かってい
罪無き奴隷や獣達を無造作に撃ち殺していく
矮人どもの打ち捨てられた
腐りかけた真実の鏡
そこには彼ら船乗り達が映しだされていた
その鏡は既に打ち砕かれ
破片は預言者に持ち去られて今はない
機械仕掛けの時計のように
繰り返される混沌の儀式
矮人どもは思考をやめ
船乗り達は破滅へ漕ぎだし
物を言わぬ奴隷達は終末に向かって歩きつづける
ただ何も知らぬ獣達は檻の中で嬉々としている
まどろみの中で儀式は繰り返される
終末を知ることも無く 真実を見ることもなく
ただ疲れ果てたその歪んだ空間は矮人を安楽死に追いやる
絶対零度の花びらが手元からこぼれ落ちるように
砕け散ったときすべては失われて絶望に襲われ
氷のように凍てついた心が溶ける日は来ない
溶けた瞬間に消え失せてしまう不安定なその場所に
心の外から声がする
生まれた時から既にいたもう一人の独裁者
恍惚の声が地上にこだまする
心の奥底で眠る凶器が胸の奥底に突き刺さる
ゆっくりと流れ出る青白い液体
生気を失った青い血が蒸気を立てながら地面を汚す
自分ともう一人の自分に突き刺さったままの薔薇の刺
朦朧とした意識の中で剣を交える自分と自分
もう一人の自分に突き刺さった刃が自分を殺す
作られた終末に微笑む顔は色を失う
壊れて捨て去られた昔の自分
忘れ去られたその場所に今もたたずむ今の自分
もう一人の自分が立ち上がり
けたたましく嘲笑う
交錯する光と影
明るい光はまやかし
深淵の暗黒は真実
混じりあってすべてを失う虚空の中に
ゆらめいてははじけて消える
虚無の中に漂い続ける意識
目覚める事のない自分の側に
墓標が立つ事は無い
目覚める事のない自分の側に みし @mi-si
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