アメリカ天狗殺人事件
ごま忍
第1話動き出したら止まらない
【1】
「殺されたのはレノン・ビートルズ氏。この【はひふへホテル】には先月から滞在していた様です。」
「ふむふむ。そして凶器は…、この灰皿だな?という事は計画的な犯行ではないのか?」
「さすが警部補!その線が強いですね。突発的な殺人に良くあるパターンです。」
さすがと褒められニヤついた顔を隠せないでいるのは、ハンバーガーが良く似合うおっちゃんおなじみ佐藤警部補である。
「えーと、所で君は…、誰だっけ?」
「あ…、申し遅れました。本日付けで殺人課に配属されました。ヤス・ポートピアと言います。
先に言っておきますが、背中にアザがあります。それと目標はズバリ警部補です。よろしくお願いします!」
「ふん!背中のアザ?ようわからんし、それにお世辞などいらん!現場は常に自分との戦いだ!それを肝に命じておけ!」
「あっ、はい…。すいません…。」
佐藤は強い口調でその新米刑事に言ったのだが、先程よりさらにニヤついており、説得力が全く無かった。
「警部補~!!」
「おっ、バカメロン刑事のお出ましか…」
そう佐藤の元に駆け付けて来たのは、メロン大好き花上刑事であった。
「警部補!犯人がわかりました!」
「なに!?」
「清掃員の女性が証言しました!犯人は天狗です!」
「天狗?天狗っていう名前の奴か?」
「いえいえ、人間ではありません。この地方は出るらしいんですよ…。妖怪の天狗が!」
真面目な顔で話す花上に対し、佐藤の口はポカンと開いていた。
「しかも、アメリカ出身のアメリカ天狗と言うらしいです!」
佐藤はさらに呆れた表情を見せた。
「しかも!その天狗はですね!蝶の様に舞い、蜂の様にハチミツ好きな様で…」
「もういい!もっと有益な情報を持ってこい!」
と怒鳴り付けられた花上だったが、次の瞬間情報はまんざら的ハズレでは無くなったのであった。
「警部補!これ見て下さい!」
鑑識の一人が壁を指差した。
「ん?なんだこれ?【A・M・E・R・I・K・A】アメリカ…?」
死体の側の壁に残されていた【AMERIKA】の文字は、被害者のダイイングメッセージとも取れるかの様に、おびただしい血で書かれていた。
「アメリカ…?アメリカ天狗?」
事件が動き出したのであった…。
【2】
「早月さんこっちに来て貰えますか。」
鑑識係の小杉が何かを見つけて、手を上げ早月メイを呼んでいる。
ここはホテルより離れた河川岸。現在殺人の容疑者がこの河川岸での殺人の発言を受けて、捜査課の刑事早月メイが捜査していたのだ。
「酷いわね、これで何人目。」
「そうですね、3人目ですね。」
メイと小杉の足元には土に埋もれた腐乱死体があった。
「この状態だと死後、1週間という所ですね。」
「あいつが捕まる直前の反抗ね。」
メイが腕を組んで考える。
「所で早月さん」
「何?」
「さっきから頭に乗せてるの何ですか?」
メイの頭の上にはEXILE探偵事務所の二番助手こと、ロボットのコロ助がしがみついていた。
「清野探偵さんに頼んで捜査協力してもらってるの」
「あの、ドラクエホントはクリアしてなかった事件を解決した探偵さんの助手なんですか!凄いなぁ!」
コロ助はメイの頭から降りて、小杉の前に立った。
「君が小杉君ナリか」
「はい!」
「あの事件は我輩が解決したようなもんナリ」
コロ助は大きく胸を叩いた。
「ええっ!」
「コロちゃん、あんまり小杉さんをからかわないでね」
「そうなんですか?」
「そんなことはどうでもいいナリ、そこに何か落ちてるナリよ」
「そんなことって…」
死体の側に汚れた布に、赤い血で何やら書いてあった。
「A・M・E・R・I・K・A、アメリカかしら?」
「スペルが違いますね」
その時、無線から情報が流れた
現在殺人事件の容疑者、天童弘助(てんどうこうすけ)が拘置所より逃走。繰り返す…
「天童ってこの殺人事件の犯人ナリね」
「大変、一度捜査本部に帰りましょう」
「ちょっと待つナリ」
そういうとコロ助は、指がないのに音を鳴らした。
べちゃ!
はひふへホテルでシリアスな演技をしていた佐藤警部補の顔に、大量のパイが叩きつけられた。
【3】
「警部補!連れて来ました!」
ヤスの隣には七三分けの男が立っている。彼はこのホテルの支配人、星野花瓶(ほしのかびん)。殺されたレノン氏を発見したのも彼である。
「いつもお客様は、午後になるとラウンジにコーヒーを飲みに来るんです。その間にベッドメイクをすることになっていまして…。今日に限ってお見えにならないものですから、どうしたのかと思い訪ねてみたら…」
「そもそもレノン氏は何故長期滞在を?」
「いやそこまではわかりません…」
佐藤と支配人星野のやりとりが続いた。すると、
「警部補!連れて来ました!」
今度は花上が関係者を連れてきたようだ。
花上が連れて来たのは、クマのぷーさんのお面を付け、手には怪しげな壺を抱えた人物だった。その人物は壺の中に手をつっこみ、その手についた黄色の液体を舐め始め、
「はちみつ、うめぇー」
と言い出した。
「なっなんだ。こいつは…」
驚きを見せる佐藤。さらにその人物は
「どうもーアメリカ天狗でーす。」
と陽気に挨拶をしたのであった。
ハチミツ男はその場で緊急逮捕され事件は解決した。
【4】
それから数日後…。
「警部補、ここですね」
EXILE探偵事務所の所長こと、探偵の清野耕助と佐藤警部補はあるビルの前に立っていた。
「探偵、事件は解決したんだぞ」
「しかし、まだ自供はしてないんでしょ。黙秘したままって聞きましたよ」
「全く誰に聞いたんだ!」
「サッカーカードを手に入れたので…」
「花上か…」
「黙秘しているのは、くまのお面とはちみつ取り上げたからじゃないですかね?」
佐藤はやれやれという仕草をし、清野の口元はニヤついている。
「お待たせしました!」
後ろからメイが手を降りながら走って来た。
「あれ警部補、招待状は二通だけですよ」
笑顔で佐藤に話し掛ける。
「事件が絡んでるんだぞ。しかし何で私に来ないんだ!」
そんな佐藤を無視して、メイが清野に話し掛ける。
「清野さん、ハチミツ男が捕まったのに、アメリカ天狗から招待状がくるなんてどういうことでしょうか?」
「彼は何か隠してるんじゃないかな?」
「隠してるというと?」
「天童弘助とのこととかね」
「天童って、あの逃走犯ですか?」
「この招待状にある【天狗ダーツ】に来ているという情報もあるしね」
「主催者じゃないかって言われてますね」
「まあ、行ってみなけりゃわからないか…」
「そうですね。あれ警部補?」
見渡すと佐藤が柔道の構えをして立っている。その先にはEXILE探偵事務所の一番助手で佐藤の好敵手、納谷ルミコが戦闘服を着て構えている。
「タライ女、ここで決着つけてやる!」
「笑止…、ブタゴルファー猿が!」
ルミコは両手を顔の前で広げて
「太陽拳!」
その瞬間辺り眩しすぎるほど光る。目が眩んだ佐藤の後ろからコロ助が襲いかかる。佐藤は前に吹っ飛ばされ倒れた。
「敵は前からだけじゃないナリ!」
ルミコとコロ助は親指を立てて、同時にうなずく。
「2人とも遊んでないで行くぞ」
「はぁ~い!」
2人は素直にいうことを聞いて、戦闘服を脱いで清野とメイに近寄る。
「さて、行きますか」
三人は【天狗ダーツ】が行われるというビルへ入って行った。
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