霧の村の見えない薔薇

キュ

薔薇紅のこと

薔薇紅が歩くと、長い黒髪が残像のように彼女のあとを追いかける。

月の無い夜よりも暗いその髪は、日に透けると葡萄色に色を変える。


「紫水晶を食べたらこうなったの」


嘘とレースは薔薇の花びらのように彼女を幾重にも取りまいている。

たとえ1つの嘘を見抜いたとしても、その下からまた次の嘘が現れる。

だから薔薇紅の嘘を見抜くことは難しい。


「大好きよ」


ささやいて駆けていく少女に、そのまま騙されていたいときには、なおさら。

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