711 単独行動は心配にゃ~
わし達を個別に落とし穴から落とそうとしたノルンは、思ったようにならかったから激オコ。
「第9フロアは単独で進むフロアなんだよ! 落ちないと進めないんだよ!!」
「じゃあ、みんにゃでひとつの穴に落ちたら……」
「単独って言ってるんだよ! 守らない場合は強制退場だよ!!」
「わかったにゃ~」
わしはわかったと言いつつ皆と相談。
「いちおう毒対策のマスクと、道に迷った時用のごはんは持って行こうかにゃ? 収納袋を配るにゃ~」
リータとイサベレは収納袋を装備しているので、残りに配布。そして空気魔道具内蔵マスクと食料を配る。
「すくないよ!!」
すると、今度はコリスがオコ。
「これ、一日分はあるんにゃけど……コリスはしょうがないにゃ~」
「ホロッホロッ」
「もしもの時用にゃから、食べるのはお腹がへった時だけだからにゃ?」
「ホロッホロッ」
コリスには三日分の食料を与えてしまったが、たぶん一日分ぐらいの消費で残りは戻って来るだろう。いや、あの顔は二日分……全て平らげているのは覚悟したほうがよさそうだ。
「それじゃあ、ここから落ちたらいいのかにゃ?」
「ちんたらしてないでさっさと落ちるんだよ!」
準備が整うと、すでに開いている六個の穴を指差してノルンに確認を取ったらまだキレていたので、皆も穴の前に整列させる。
「もしも合流が遅かったら、わしがここを破壊してでも迎えに行くからにゃ」
「私達なら大丈夫ですよ。ね?」
「心配しすぎニャー」
リータとメイバイに続き、イサベレやコリスもわしの助けはいらないようだ。
「オニヒメ~? すぐに迎えに行くからにゃ~?」
「私もいらない。行こう!」
「「「「にゃ~~~!!」」」」
「にゃ……」
猫パーティで一番心配なオニヒメもわしの助けは断って、皆の音頭を取り、次々に穴に飛び込んで行ってしまった。
「ほら! シラタマもさっさと行くんだよ!!」
「にゃ~……」
なので、わしはノルンに尻を叩かれて、元気なく穴に飛び込むのであったとさ。
「にゃ~~~!!」
穴の中は滑り台のようになっていて、わしは叫びながら落ちて行く。
「うるさいんだよ」
「にゃ~~~!!」
ノルンにうるさいと言われても、滑り台は嫌がらせのように回転したりするので怖すぎる。
おそらく10秒程度の滑り台を滑り切ると、わしはゴロゴロ転がって止まるのであった。
「にゃ~……酷い目にあったにゃ~」
「シラタマはあれより素早く動けるんだから、怖いわけないんだよ」
ノルンの分析は正しいと言いたいところだが、車の運転が出来る人でも、ジェットコースターは怖いもの。人の操縦しているものは怖い場合があるってもんだ。
「オニヒメ達も、さぞ怖かっただろうにゃ~」
「あの鬼っ子も、他の人も笑いながら滑っていたんだよ。悲鳴をあげてたのはシラタマだけなんだよ」
どうやらノルンは、マザーからオニヒメ達の状況を知る
「てか、にゃんでノルンちゃんはわしについて来てるにゃ?」
「パーティの中で一番強い人と一緒に行動することになってるんだよ」
「にゃんでわしが一番強いってわかったにゃ? わしって、そこまで活躍してないにゃろ??」
「誰よりもモンスターを簡単に倒してるんだから、すぐにわかるんだよ」
あ、そりゃそうか。あんなに綺麗に斬っていたら、バレバレか。
「それで……このフロアはどんにゃ感じのフロアか教えてくれるのかにゃ?」
「教えて欲しければ、ノルンちゃんかわいい~って言うんだよ」
「そんにゃんでいいにゃ? ノルンちゃん……」
「ここは……」
「言わせろにゃ!」
言わなくても教えてくれるなら有り難いとは思えるが、言わなくてもいいのなら、そんな事をわざわざ言うな!
わしの苦情は無視するノルンは、ちゃんと説明してくれるのであった。
第9フロアは、上と同じく一本道。しかし、今まで倒したフロアボスが一階から順番に待ち構えているそうだ。
「パーティで倒していたボスを一人で倒さないといけないんだよ! シラタマはクリア出来るかもしれないけど、残りはどうなんだよ? きゃはははは」
ノルン、上機嫌。笑いながらパタパタ飛んで、わしの周りをくるくる回る。
「う~ん……この通路、上より狭いけど、ドラゴンとかヤマタノオロチは同じ大きさにゃの?」
「ギクッだよ」
「違うんにゃ……ま、とりあえずわしはクリアしてしまうにゃ~」
どうやらフロアボスと違ってサイズは小さくなると聞いて、少し安心。本当は皆の事が超心配なのだが、ノルンに悟られると
「は……速すぎるんだよ!!」
アイアンゴブリンから始まり、最後のヤマタノオロチゴーレムを【猫撫での剣】で小間切れにして、その先の部屋に入ったわしが皆が出て来るであろう通路を探していたら、かなり遅くにやって来たノルンは苦情。
ぶっちゃけわしの速度に掛かれば、モンスターは動き出す前に小間切れに出来るので、銅像と変わらないからノルンが追い付けない速度でクリア出来たのだ。
「どうでもいいけど、この部屋、トイレとわしが通った穴しか開いてないにゃ~。この辺が怪しいんにゃけど、壊していいにゃ?」
「いいわけないんだよ!」
部屋の調査の結果、男女共用トイレと、わしの通った通路ぐらいの窪みが九個あったので、皆が心配なわしは壊してでも通りたい。
「壁を壊したら強制退場になると説明してあるんだよ。もう忘れるなんて、シラタマの頭はパッパラパーなんだよ」
「ひどいにゃ~。口が悪すぎるにゃ~」
「黙って仲間が死ぬのを待つんだよ!」
ノルンから精神攻撃を受けたわしは、涙目でお座り。気分を落ち着かせる為にあぐらを組んでコーヒーを飲み、皆の無事を祈るのであった。
「ダーリンだけ?」
しばしノルンの質問攻撃を無視して目を閉じていたわしの耳に、イサベレの声が届いた。
「シラタマは寝てるんだよ」
「キラーン」
「にゃに!? いにゃ~~~ん!!」
いや、完全に寝入っていたので、イサベレに寝込みを襲われたわしは悲鳴をあげた。
「シラタマは、きん……」
「口に出すにゃ!」
そのせいでノルンにわしの弱点を知られる事となったので、その先は言わせねぇ。イサベレにも苦情を言ってから報告を聞く。
「アレから30分ってところかにゃ? てっきりコリスが一番だと思ってたんだけどにゃ~」
「急いだ甲斐があった」
イサベレに攻略方法を聞いたら、わしと同じく出来るだけモンスターが動く前にファーストアタックを決めていたらしい。その時、二番目のウルフが出た時点でフロアボスが順番に出ていると気付き、三番目のオーガで確信を持ったそうだ。
複数のモンスターの場合は、魔法使いを処理してから斬り刻み、魔法を使わせないように戦っていたとのこと。
一番苦労したのは、やはりヤマタノオロチゴーレム。モンスターの出現方法からラストに来るのはわかっていたので、マスクを着用してから戦闘に突入。魔法を使って来そうな頭があったら、率先して斬り落としたそうだ。
「小さかったから助かった。一撃で斬れたのは大きい」
「たしかに詰めが甘いよにゃ~」
「二人の速度が異常なんだよ」
イサベレの報告とノルンの苦情を聞いていたら、白い壁に通路が開いた。
「モグモグ~!」
その通路からは頬袋が膨らんだコリスが現れ、わしの名前を呼びながら近付いて来たと思われる。
「にゃんでごはん食べてるんにゃ~」
「モフモフがおなかすいたら食べていいっていってたから……」
「コリスはしょうがないにゃ~」
「ホロッホロッ」
お腹がへっていたのなら仕方がないこと。別行動になってからたった40分しか経っていないが、コリスの頭を撫でておいた。
いちおうわしの渡した食料を回収したら、二日分しか食べてなかったので超褒めてあげた。やはりコリスは我慢が出来るいい子だ。
ノルンには親バカと言われ、イサベレには呆れられていたので、コリスの戦闘談を聞いてみたけど苦労知らず。
フロアボスの順番とかは気にせず、出会ったモンスターは先制攻撃で、攻撃もさせる間もなく気功リスパンチで粉々。ヤマタノオロチゴーレムも見付けた瞬間にリス百裂拳で粉々にしたそうだ。
これでどうしてイサベレより遅かったのかと聞こうとしたけど、やめた。その頬袋が物語っているもん。
「「ゴールにゃ~!」」
コリスからも報告を聞き、撫でていたらふたつの通路が開いたと思ったら、リータとメイバイが同時に飛び出して来た。
「アレ……みんな居ます……」
「そんニャーーー!!」
どうやら二人とも、自分が一番だと思ってゴールに飛び込んだっぽい。しかし、コリスから遅れること10分だったので、仲良く
「えっと……にゃんか賭けてたにゃ?」
「シラタマさんの独占券です」
「一位の人にはシラタマ殿と一日過ごせるニャー」
「じゃあ、わしが一位にゃから、一日中お昼寝するにゃ~」
「私が一位!!」
イサベレが怒っているが、だからこそこの話を終わらせたいのだ。この為に急いで来たようだけど、絶対犯される。わしは一位を盾に、自分の身を必死に守るのであった。
とりあえず話を逸らそうと、リータとメイバイにもどうやってクリアしたのかと聞いたら、二人も先手必勝とのこと。フロアボスが順番に出ている事もオーガ辺りで気付いたそうだ。
ただ、リータは猫パーティでスピードが遅いほうであり、メイバイは武器の長さが短いと言う事もあって、イサベレほどあっさり倒せなかったようだ。
リータが特に苦労したのは、複数モンスター。魔法だけは威力があるので、防御重視で戦わないといけないから時間が掛かったとのこと。
イサベレの苦労したヤマタノオロチゴーレムはと言うと、炎を吐いたところを大盾で守りながら突撃。一気に距離を詰めて、首の根元に気功パンチを喰らわせて一本一本素早く潰したそうだ。
メイバイはと言うと素早さを活かして動き回り、手数が多いものの、リータより早くにヤマタノオロチゴーレムに辿り着いた。
出来るだけ早く仕留めようと首を斬っていたのだが、三回から四回は斬らないと切断まで行かなかった上に、毒ガスの頭が残っていたので時間が掛かってしまったそうだ。
リータとメイバイの苦労話を聞き終えたら、イサベレの一位問題は忘れてくれたのはいいのだが、いまだにオニヒメの姿が見えない。
わしは不安でしょうがないので、ノルンに何度も質問してしまう。
「にゃあにゃあ? オニヒメの状況を教えてにゃ~」
「無理なんだよ。てか、一分前にも同じ質問したんだよ」
「にゃあにゃあ?」
「だから無理なんだよ! どんどん質問スパンが短くなるんだよ!!」
心配なものは仕方がない。ノルンになんと言われようと、わしはオニヒメの情報を聞き出そうと頑張るのであった。
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