679 合同軍事演習2にゃ~


 連合軍は王のオッサンの命令で前進。しばらくしたら、同じく前進していた大蟻軍と接触し、最前列で戦闘が始まった。


 今回の最高司令官は、王のオッサン。補佐にウンチョウが就いて助言をしている。と言っても、さすがは戦争を経験しているオッサン。ウンチョウの助言無しでも兵を上手く使っているように見える。

 一部、言う事を聞かない者が居るが、「そこは現場の判断でやっている」とウンチョウがハンカチで汗を拭いながら説明していた。


「ねえねえ? あの集団って、コリスちゃん達だよね??」


 べティが言う通り、言う事を聞かない者は猫ファミリー。


「他にも黒蟻に突っ込んでるパーティが二組いるんだけど~??」


 それと、猫の街最高パーティと、なんか東の国のハンターが突っ込んでいる。


「まぁ黒蟻は抑えとかにゃいといけないんだけどにゃ~……リータとケンフはいいとして、バーカリアンまで突っ込んで行くとは……」


 猫の街最高パーティの構成は、武術馬鹿ケンフ、筋肉猫シェンメイ、黒猫ワンヂェン、修行バカ宮本、忍者服部さん。頼りになるソウハが居ないので服部を指揮官に任命したけど、バトルジャンキーだらけなので制御不能となってるっぽい。

 まぁ、ワンヂェン以外は各種講習を受けてかなり強くなっているから、なんとかなるはず。怪我してもワンヂェンが居るからすぐに治してくれるだろう。


 もう一組は、東の国のハンターで三組だけ参加している内の一組。Aランクハンターのバーカリアンを含む四人パーティ。

 ハンターでは間違いなくトップクラスなので、大蟻をものともせずに進んでいる。


「バーカリアンって……あのひよっこが、Aランクに上がってたんだ」

「にゃ? べティは面識あったにゃ??」

「ええ。魔法が上手くなりたいとか言って、一時期付きまとわれていたの。面白いこと言ってたから、基礎は教えてあげたのよ」

「あ~。だからあんにゃに魔法が上手かったんにゃ」

「シラタマ君は戦ったことがあるの?」

「わしもにゃん度かからまれてたんにゃ~。てか、面白いことって、イサベレと結婚したいとかにゃろ?」

「あはは。それも知ってたんだ。イサベレ様に勝つなんて無理よね~……ん??」


 バーカリアンの夢を笑っていたべティは、わしの顔をマジマジと見て来たので不思議に思う。


「にゃに?」

「まさかだと思うけど、シラタマ君って……イサベレ様と戦って倒したとか言わないよね?」

「まぁ……そのせいで、わしは付き纏われているんにゃ」

「うっそ……妻子が居るのに……それはアカン!」

「わしは手を出してないにゃ~」


 べティがわしの浮気を疑って来るので、イサベレは自称「わしの愛人」と名乗っているとか言ってみたけど「ヒューヒュー」とか言ってからかうだけ。

 なので、懐からピストルを抜いて「パンパン」と撃ってやった。


「なっ……何してるのよ!」

「大蟻にゃ。トドメ、よろしくにゃ~」

「キモッ! キモキモキモッ!!」


 別にわしはべティを黙らせる為に撃ったわけではない。大蟻が近付いて来たから撃ったのだ。しかし、こんな小さな口径の銃では複数当たってもトドメにまで持って行けなかったので、べティに任せてみた。

 べティはおもちゃのピストルを構えて放つが、それは弾丸ではない。風の刃を撃ちまくり、一発でよかったのに無駄撃ちしていた。


「それが銃か……魔法にしか見えなかったぞ」


 わし達が騒いでいたら王のオッサンが寄って来たので、べティの頭を撫でながら応える。


「この子のは魔法にゃから忘れてくれにゃ。パンパンと鳴ったほうが銃にゃ~」

「やはりか。しかし見逃した。ちょうどいいのが近付いて来たからもっと見せてくれ」

「わかったにゃ。でも、さっきの銃は効きが悪かったから変えるにゃ~」


 次に取り出したりますは、サブマシンガン。皆には耳を塞いでいるように言って「ズガガガ」っと連射したら、数十発掛かってやっと大蟻は止まった。


「う~む……女王陛下から聞いていたより威力が弱いな」

「だにゃ。思ったより使えないにゃ~」


 何故、わしが銃のお披露目をしているかと言うと、女王に試し撃ちをオッサンに見せてくれと頼まれていたからだ。

 別に輸出させるつもりはないが、先見の明のある女王はどれぐらいの驚異があるか知っておきたいとのことで、軍事スペシャリストのオッサンから意見を聞きたいと言われたのだ。


「ちょっと参考にするには、虫だとマズかったかもにゃ。あいつら、痛みにうといからにゃ~」

「まぁ鎧を着込んだ人間と仮定したらこんなものだろう。そのサブマシンガンとか言う武器なら、人間相手なら使えるな」

「やらんからにゃ?」

「わかっている。次を見せてくれ」


 次の火器は大きいから準備と人員が必要なので、オッサンには指揮に戻ってもらっている間に設置。そしてウンチョウを呼んで、べティと一緒に撃ち方を教える。


「じゃ、ちょっと行って来るから、わしが戻ったらオッサンに伝えてにゃ~」


 それだけ告げたら、わしは消えるように移動。戦場を駆け巡り、探知魔法を放って、残っている中で一番大きな黒蟻の目の前まで一気に近付いた。


「わっ! シラタマさん!?」

「それ、私達の獲物ニャー!」

「ゴメンにゃ~。説明で必要にゃから、譲ってくれにゃ~」


 しかし、猫ファミリーとバッティング。リータとメイバイに「にゃ~にゃ~」文句を言われてしまったが、なんとか譲ってもらえたので、黒蟻は土魔法で拘束。そして担いで本陣に戻るわしであった。



「「「「「ええぇぇ~……」」」」」


 連合軍に迷惑を掛けてはいけないと思って遠回りして本陣に戻って来たら、一同ドン引き。8メートル近くある黒蟻を、こんな小さな猫がお持ち帰りしたから引いてるっぽい。


「ウンチョ~ウ! オッサ~ン! 準備が出来たら撃ってくれにゃ~!!」


 いくら拘束しているとはいえ、こんなデカイ蟻を放っておけないので遠くから叫んでみたら「ズガガガ」っとガトリング砲が火を吹いた。


 けど、幼女のべティが撃つかね~? こっち来た!?


 ガトリング砲は固定はしているから反動は大丈夫だと思うが、それでも幼女の筋力では狙いが定まらない。わしを狙っているんじゃないかと思うぐらい追って来ていたけど、ウンチョウが代わってからは、黒蟻に集中砲火となった。

 しかしガトリング砲は、黒蟻に傷を負わしただけで撃ち止め。まだまだピンピンしているので、次の兵器を催促した。


 次は「ドッカーン!」と爆発。ロケット砲だ。一発でかなりのダメージが入ったと思うがまだ命に届いていなかったので、もう二発撃たしてから、わしが念の為トドメを刺して戻るのであった。



「ガトリング砲は足止め程度、ロケット砲は数発使えばってところだにゃ~」


 わしが本陣に戻ったら、オッサンとウンチョウとスティナが話し込んでいたので話に入った。


「うむ……街の防衛用に配備するなら使いようがあるが……スティナ。ハンターの意見はどうだ?」

「狩りでは使えませんね。どれも音が大きいから、下手したら強い獣を呼び寄せてしまいます。あとシラタマちゃん。あの黒蟻、もう少し近くで見せてくれない?」

「わかったにゃ~」


 スティナのお願いに応えて黒蟻を担いで戻ったら、また変な目で見られてしまった。

 しかし、スティナは真面目なもの。黒蟻を色々な角度から見て判断を下す。


「やっぱり……弾が残っていたり焼けたりしているから、売り物にするならかなり値が落ちますね」

「そうか……これを買ったところで、使い道がかなり限定されるな」


 オッサンの限定は、おそらく獣の襲来と防衛戦と言う事だろう。


「まぁにゃ~……防衛だけにゃら使い道はあるかもしれにゃいけど、一番使われるとしたら、犯罪だろうにゃ」

「たしかに……街中で使うほうがよっぽと使い道がありそうだ」

「うっわ……そんなの取り締まりが面倒よ。私はいまのままがいいかも??」

「にゃはは。みんにゃ乗り気じゃなくてよかったにゃ~」


 わしがちょっと考えを修正してやったら全員に銃の危険性が伝わったので、普及は思い留まってくれたはずだ。


 よしよし。これで銃なんて作ってもいい思いをしないと刷り込めたじゃろう。本当は、弾丸を鉄から黒魔鉱に変えたらなんとかなりそうなんじゃけどな。

 ま、コスト面を考えたら、マシンガンは無理じゃ。そんなバカバカ撃てるほど余っておらん。単発のライフルならアリかもしれんが、誰が教えてやるか。


 わしがほくそ笑んでオッサン達の話し合いを見ていたら、べティに袖を引っ張られたので皆から距離を取る。


「にゃに?」

「黒魔鉱を弾丸に使ったらいけそうじゃない?」

「正解にゃ~……って、オッサン達に言うにゃよ!!」

「あ、やっぱりシラタマ君も気付いてたんだ。これは異世界人の発想なのかな?」

「どうだろうにゃ~……ヤベ。徳川が黒魔鉱の弾丸使ってたにゃ。オッサン達と接触したらマズイかも……」

「徳川家康、策士よの~。まぁその辺はシラタマ君が頑張って止めてね」

「にゃ? べティも銃にいい思い出ないにゃ??」

「そりゃ同じ日本人だもん。空から降り注ぐ機銃掃射は、いまでも思い出しただけで涙が出そうよ」

「べティも苦労したんだにゃ~」


 わしとべティがオヨヨヨっと戦時中の話をしていたら、軍事演習も大詰め。デカイ白蟻、クイーンとキングのお出ましだ。


『出たぞ! 前線を下げろ~~~!!』


 するとオッサンはすかさず指示。クイーンとキングの戦闘区域に連合軍が入らないように前線を下げる。

 そこに果敢に飛び込むのは、猫ファミリーとイサベレ隊。クイーンには猫ファミリーが向かい、キングにはイサベレ隊が向かった。

 ちなみにイサベレ隊の構成は、イサベレとオンニの二人のみ。精鋭中の精鋭で挑むようだが、戦力が足りないと思うので、リータが助太刀に向かった。


 猫ファミリーはコリス主体にクイーンをタコ殴りにしているから、すぐに終わりそう。イサベレ隊はリータを盾役に集中させて、オンニに経験を詰まそうとしているのか、時間が掛かりそうに見える。

 そんな戦闘をわしが双眼鏡で見ていたら、べティによこせと言われたので貸してあげる。


「わ~お。気持ち悪いは置いておいて、よく物怖じせずに突っ込んでいけるわね」

「わしらは慣れてるからにゃ~……でも、オンニの活躍は想定外にゃ」

「オンニって、あの白い大剣の男? うわっ! 斬ったところが破裂した!!」

「気功もマスターしてたようだにゃ~。さてと、そろそろ終わりそうにゃし、べティも掃討戦に加わるにゃ?」

「うっ……ちょっとだけやろっかな? ついて来てくれる??」

「無駄撃ちだけはするにゃよ~?」


 わし達が喋っている間に、クイーンとキングは撃破。オッサンが掃討戦の指示を出し、わしはべティを背負って戦場を駆け回るのであった……


「だから無駄撃ちするなって言ったにゃ~」

「えへへ。てへぺろ」


 しかし、大蟻を気持ち悪がって魔法を乱発するべティは、すぐに魔力切れ。かわいこぶりっこしてムカつくべティを背負って、すごすごと本陣に戻るわしであったとさ。

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