627 アメリヤ兵と戦うにゃ~
バカ笑いしているアメリヤ兵の真ん中に、わしが手榴弾を投げ込むと……
「飛べ~~~!!」
アメリヤ兵は焦って四方に飛んで転がった。そして数秒後……
シーーーン……
『にゃはっ、にゃはっ、にゃははは。ピンは抜いてなかったにゃ~。ビビリ過ぎにゃ~。にゃははは』
静寂のあとにはわしのバカ笑い。やり返してやった。しかし、アメリヤ兵はわしの笑い方が
これでやっとスタートラインか。原住民はわしの事を怖がってくれたのに、こいつらの頭の中はどうなっておるんじゃろうか……
それよりも、ちょっと緊張して来た。大丈夫、大丈夫。わしは出来る猫……
『お前は何者だ!!』
わしが息を整えていたら、拡声器を持った上官風の男が怒鳴り付けて来た。
『わし? わしは通りすがりの猫にゃ。これだけ肉が揃っていたら、当分狩りをしなくていいから助かるにゃ~』
『俺達が肉だと……』
『ただの食物連鎖にゃ。ちゃんとわしの栄養にして、ケツから出してやるから安心するにゃ~』
『ふ、ふざけたことを……面白い生き物だから教皇猊下に献上してやろうと思っていたが、もういい! 撃て~~~!!』
音声拡張魔道具を手に持つわしの挑発に激昂した上官の指示で、一斉射撃。何十発もの銃弾がわしに放たれる。
パラララ……パラララ……
緊張感マックス、集中力マックスのわしには、銃弾は静止に近い速度で見えている。わしのスピードなら、簡単に避けられる。いつも通りなら、簡単に避けられるのだ。
ドスドスドスドス……
しかしわしの体に、数多くの凶弾が突き刺さるのであった。
* * * * * * * * *
時は
「シラタマ殿……大丈夫かニャー?」
メイバイは、昼に震えて動けなくなったシラタマを心配している。
「心配ですけど、いまは作戦に集中しましょう。もしもの場合は私達だけで救出しますので、覚えておいてください」
「わかったニャ……」
心配しているだけでは何も解決しない。リータはBプランを用意し、皆と話し合っていたら爆発音が聞こえた。
「合図です。突入準備……」
「「「「「にゃっ!」」」」」
手榴弾の音でアメリヤ兵は動き出すだろうが、すぐに向かっては鉢合わせしてしまう。しばし時間を置くと、二度の爆発音が聞こえ、うっすらと騒ぎ声も聞こえて来た。
「行きましょう!」
「「「「「にゃ~~~!」」」」」
ここでシラタマがアメリヤ兵を十分惹き付けられたと確信して、リータ達は走る。あっと言う間にあばら家の陰に隠れ、イサベレに人の気配を探してもらっていると、聞き馴染みのある声が聞こえて来た。
『にゃはっ、にゃはっ、にゃははは。ピンは抜いてなかったにゃ~。ビビリ過ぎにゃ~。にゃははは』
シラタマだ。音声拡張魔道具を使っているので、リータ達の元までハッキリと聞こえたのだ。
「元気そうですね……」
「心配して損したニャ……」
「ん。あとでモフる」
どうやらシラタマは遊んでいると勘違いされたらしく、夜にはリータとメイバイとイサベレの撫で回しの刑という罰が待っているらしい。
その直後、「パラパラ」と銃声が鳴り響き、リータ達はその音に紛れて動き出したのであった。
* * * * * * * * *
よ、避けねば……ぐっ……足が動かん……ダ、ダメじゃ……死……
わしに向かう銃弾は、感覚的にはゆっくりと迫っている。頭ではわかっているのだがトラウマのせいで、足に根が生えたかの如く動かす事が出来ない。
わしは一歩も動けず、ドスドスと凶弾が体を貫いた。
はは……かっこいいこと言っておいて、この様か。リータ、メイバイ、すまない。あとのことは頼んだぞ……わしは先に逝って、スサノオに生き返らせてもらうからな。
わしはフラフラっと、仰向けに倒れ……
なんかこないだもスサノオを頼ろうとしたような……。てか、全然痛くなかったんじゃけど~?
いや、一度死に掛けた事を思い出し、一歩下がっただけで倒れなかった。
ははは。そりゃそうじゃ。鉄の
いまは戦友の顔も殺した者の顔も二の次じゃ。この先に守れる命がある。涙する人間を減らせる。
動けわしの足!!
いまも銃弾が体に当たっているが、わしは気にせず一歩前に出る。これで振り出し。もう一歩進めばトラウマ破り。
勇気100倍だ!!
「すぅ~~~……効かんにゃ~~~!!」
わしは大きく息を吸い、両手を上げて自分を鼓舞するように叫ぶ。するとアメリヤ兵は、一人、また一人と引き金から指を離し、銃声は完全に止まった。
その中を、わしは刀をだらりと構えて進む。
「にゃはは。もう終わりにゃの~? もっと足掻いてくれにゃいと、美味しく食べられないにゃ~」
「クソッ……化け物が……撃て撃て、撃て~~~!!」
上官の悪足掻きで先程より多い銃弾が迫るが、いまのわしに怖い物はない。冷静に刀を振るい、全ての銃弾を斬り裂く。
お、おお~! わし、超かっこよくない? まるで石川さんみたいじゃ。別に当たっても痛くないんじゃけど……でも、楽しい!
ちょっとしたノリで、なんとか三世に出て来る侍のマネ事をしたら超ノリノリ。しかし、数分もの間、弾丸を真っ二つにしていたらやめ時がわからなくなってしまった。
「おい、お前! サルどもを連れて来い! エサにして逃げるぞ! B隊は砲撃準備だ!!」
わしが弾丸を斬り裂きながら前進していると上官からの指示が飛び、アメリヤ兵は慌ただしく動くのであった。
* * * * * * * * *
時は少し戻り、リータ達はイサベレの案内で人質を探していた。あばら屋の陰から陰に隠れて移動して中央の広場に着くと、モノンガヘラ族が集められており、三人の男にサブマシンガンを向けられて動けないでいる。
「これで全部でしょうか?」
「いえ。あそこにあるふたつの家に誰か居そう」
「中の状況は……わからないですよね?」
「ん」
「でしたら、イサベレさんとコリスちゃんで建物に向かってください。残りで広場の男を倒しましょう。その際、笛で合図を出しますので、同時に動きましょう。コリスちゃんは、あの人達に似てる人だけ叩いてね?」
「わかった~」
「では、散開にゃ~」
「「「「「にゃっ!」」」」」
一同コソコソと広場の周りを走り、準備が整うとリータが笛を鳴らした。
リータは銃を構える男に一瞬で近付き、両腕を握り潰して地面に叩き付ける。
同じく一瞬で近付いたメイバイは、男の頭にかかと落とし。一撃で意識を奪う。
オニヒメは近付かず、土魔法の発動。男の後ろから土の板を跳ね上げ、背中を打ち付けたら時間差で、前にも板を跳ね上げて挟んだ。
建物班のイサベレは、あばら屋の入口から入らずに、壁を細身の刀で四角く切り抜いて飛び込んだ。
下半身が裸の男二人が目に入った瞬間、速度を上げて女に覆い被さった男を上から峰打ち。椅子から立ち上がった男には、腹に柄を入れて意識を奪う。
無力化すると、女に覆い被さって気絶している男をどけて、念話で優しく声を掛けていた。
もう一人の建物班のコリスも、鋭い爪で壁を切り裂き、ちょっと穴が小さかったので壁を破壊して突入。
こちらも下半身裸の男が二人いたのだが、コリスを見た瞬間固まった。その隙に、ダブルリスパンチ。男達は左右の壁を突き破り、吹っ飛んだ。
それを見た全裸の女は悲鳴をあげるが、あばら屋は大きな穴がみっつも開いて今にも崩れそう。なのでコリスは、女を抱いて脱出した。
集落の中に居たアメリヤ兵は、猫パーティの大活躍で無力化。リータがモノンガヘラ族に念話で説明し、オニヒメが土魔法で拘束していたら、二人の男を引きずって女を連れたイサベレと、女を抱いたコリスが戻って来た。
「あれ? コリスちゃん、誰も居なかったの??」
「ふたりたたいたよ~」
「そっか。女の人は私が受け取るね。コリスちゃんはイサベレさんの連れて来た人を拘束してくれる?」
「わかった~」
「イサベレさんとメイバイさんは、男を連れて来てください」
リータはコリスを怒るでなく、適材適所に人を割り振る。そちらのほうが早いと判断したのだろう。
事実、モノンガヘラ族に女を返して説明している間に、全てのアメリヤ兵は拘束されたのであった。
モノンガヘラ族への一通りの説明が終わった頃に、イサベレから誰か来たと聞いたリータは、コリスと共に走り出す。
しばらく走るとアメリヤ兵と鉢合わせとなりサブマシンガンを撃たれたが、リータの大盾に全て弾かれて後ろに一発も通さない。
そのまま前進したら、コリスの射程範囲。一人は【風玉】を喰らって撃沈。もう一人は尻尾でベチコーンッと叩き潰された。
二人とも広場に連れて行かれて土の
「さてと……こちらは終わりましたね。あとはシラタマさんだけなんですが……」
リータは手をパンパンとはたいてオニヒメを見る。
「パパ、動いているみたいだから大丈夫だよ」
「そう……じゃあ大丈夫そうだね。こちらは怪我人の手当と見張りをしておきましょう」
アメリヤ兵に恨みを持つモノンガヘラ族を野放しにしているのだ。いくら説明をしたところで怒りをぶつけるのは確実。リータ達はモノンガヘラ族を宥めながら、シラタマの戦闘の終わりを待つのであった。
* * * * * * * * *
一方シラタマは……
「ロケットランチャー……放て~~~!!」
数多くの銃弾を刀で斬り裂いていたら、三発のロケット弾が迫っていた。
これ……斬っても大丈夫じゃろうか? 石川さんは斬っていたよな? アニメじゃけど……信じておるぞ!!
わしは疑いを持ちつつもロケット弾を刀で斬ったら、ふたつに分かれて後方に飛んで行った。
ドンドンドドォォーーーン!!
セ、セーフ! 本当にアニメ通りになった……
後方で爆発が起こる中、わしは胸を撫で下ろしながら歩を進める。
「ば、化け物……。た、退避……逃げるぞ~~~!!」
わしに敵わないと察したアメリヤ兵は、銃弾を放ちながら後退する。なのでわしはちょっと速く動いて、進行方向に回り込んでやった。
「せっかく腹いっぱいの肉があるのに、逃がすわけないにゃろ~」
「ヒッ……どうしてそこに……」
わしが声を掛けてあげたら上官は小さく悲鳴をあげた。
「答える義理はないにゃ~。【落とし穴】にゃ~!」
土魔法で一網打尽。後退しながら集まっていたアメリヤ兵は、それが仇となって、突如地面に大きく開いた穴に落ちて行くのであった。
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