607 毎日忙しいにゃ~
黒い森にて、玉藻との模擬戦で受けた下腹部の痛みが収まったら、元居た場所に駆ける。
「コ~ンコンコン。そちののたまう姿は面白かったのう。コ~ンコンコン」
上機嫌の玉藻と一緒に……
あまりにも笑うので「鉄扇を作らないぞ」と脅し、元の場所に戻ったらリータ達が居なかったので、狩りでも行っているのだろうと考えてお昼寝。玉藻も疲労困憊だったのか、小さいキツネの姿のままわしと一緒に座布団で丸まって眠った。
「こ、これ! どこを触っているんじゃ!!」
なんだかモフモフうるさいなと思って目を開けたら、玉藻がリータに抱かれてメイバイにもモフられていた。
「モフモフ~」
「ゴロゴロ~」
当然わしもオニヒメに抱かれてモフられていたので喉を鳴らしていた。
「その白い獣は危険じゃないんですか??」
もちろんポポルは白猫と九尾のキツネを見た事がないので困惑中。しばしわしと玉藻はモフられて時間が流れるのであった。
ようやく開放されたわし達は人型に戻って、なんで玉藻をモフっていたのか質問してみたら……
「だって~。仲良さそうに寝てるんですも~ん」
「私達の夫を寝取っていたからニャー」
「「撫でる必要は??」」
「「あるにゃ~!!」」
とのこと。リータとメイバイは九尾のキツネを撫でたかっただけなのに、わしの浮気相手に罰を与えていたとしか言わない。「帰ったら浮気の罰があるかも?」とわしも言われたので、玉藻に犯され掛けたと証言した。
「「ほら??」」
「シラタマ! そちは
売るも何も、そう言ったほうが丸く収まりそうなんじゃもん。九尾のキツネがモフれて機嫌が良さそうじゃし……
浮気疑惑はわしに来なかったが、玉藻は二人に、わしをたぶらかす
「うぅぅ……妾はシラタマなんて襲っておらんのに……」
ソウの別荘に帰って晩ごはんにしたのだが、玉藻は元気がない。冗談でも冤罪を掛けられた事が、元名代として恥だと思っているようだ。
「まだ言ってるにゃ~? これ食べたら鉄扇作ってやるから元気出すにゃ~」
「おお! そうじゃった。頼んだぞ!!」
現金な玉藻は一瞬にして元気になったのでモリモリ食べる。わしも急かされたので急いで食べて、デザートとコーヒーはゆっくりいただき、ポポルの情けない話を聞いていたが、また玉藻に急かされて訓練場に移動する。
ちなみにポポルの初狩りは酷いもの。ポポルが酷いんじゃなくて、リータ達が酷い。10メートルの黒い獣の前に放り投げられたら、普通にビビッて動けなくなっても仕方がないわ~。
「そうにゃ。せっかくにゃし、リータの盾も新調しようかにゃ?」
「いいのですか?」
「白魔鉱にゃらいっぱいあるからにゃ~」
玉藻だけでなくリータにも意見を聞きながら作る物の形を決めると、次元倉庫から白魔鉱の矢の残りと、適当な錆びた白魔鉱の武器を取り出す。
「ほう……これが白魔鉱か。採掘量は少ないと言っていたのに、けっこうあるんじゃな」
「まぁ掻き集めてやったからにゃ。ちょっと熱いから離れておいてにゃ~」
玉藻にはチェクチ族の集落はまだ秘密。勝手に取りに行くとは思っていないが、絶対うるさくなるからの配慮だ。
皆が離れると高火力の【火球】を出して、その中に白魔鉱とヤマタノオロチの魔力の集まる素材を投入してこねくりまわす。江戸一番の刀鍛冶に習った通りこねくり回すが、盾は簡単だけど鉄扇はパーツが多いから難しい。
何十回もこねくり回し、形を整えて焼き入れ。しばし休憩してから、重力魔法で圧縮。盾は上手く出来たが、やはり鉄扇は難しい。
二度目の焼き入れのあとにパーツを合わせてみたけど、上手く嵌まらなかった。
「にゃ~? くそっ……」
わしがガチャガチャとてこずっていたら、玉藻が声を掛ける。
「失敗か?」
「失敗っちゃ失敗にゃけど、これぐらいにゃら削ったらにゃんとかいけそうにゃ。
「わかった。楽しみに待つとしよう」
「リータはいいにゃよ~」
リータ用の盾は、前よりかなり大きくなった大盾。リータの身長ぐらいあるので、自分一人ぐらいなら丸々守れる。下は尖らせたから、魔力を流せば斬れと思う。
重力魔法で三倍圧縮したので、研いだら白銀に輝くかもしれない。もしかしたら、重みだけで弱い白い獣なら貫通するかも。ちょっと危険なので、研ぐのは追い追いだ。
それに合わせて三倍圧縮の超長い白魔鉱の鎖を仕込んだからかなり重くなったが、リータなら軽々持てるだろう。
ある程度動きの確認をしたリータに問うと、意外と軽いとのこと。なのでポポルに大盾を持たせたら潰れた。
「お母さん! 手当てしてあげてにゃ~!!」
「あなた、任せて!!」
もう妻気分のルルは無視。ツッコんでも気持ち悪い笑い方するだけなので、あまり話をしたくないのだ。
とりあえずルルの的確な回復魔法のおかげでポポルも復活したようなので、ポポルにも質問。
「そう言えば、ポポルは剣を使っていくのかにゃ?」
「どう言うことですか?」
「剣は下手くそだったにゃろ? 他の武器も試したほうがいいと思ってにゃ~」
「そう言われてもどうしていいか……」
「また先生を用意するにゃ。それで得意武器を見付けてくれにゃ。帰る時にはいい武器をあげるからにゃ」
「ありがとうございます!」
ポポルが礼を言うと、ルルがわしの腕に絡み付く。
「お父さんにいっぱい甘えるのよ~?」
「はい! お父さん!!」
「だからわしには妻子が居るにゃ~~~」
わしを寝取ろうとする
二人はなんだか撫でたいようにしか見えないが、久し振りの訓練で疲れていたので強くツッコめず、わしは泥のように眠るのであった。
翌朝はお寝坊。しかし仕事があるので、リータに叩き起こされて朝ごはんを食べる。準備が済むとホウジツにポポル用の先生を送るように頼み、地下空洞に戻って猫の街に転移。
何故か玉藻だけついて来たので不思議に思ったら、侍講習を受けたいらしい。なので、ゲストルームに寄生しているアイパーティに押し付けて仕事に向かった。
今日のお仕事は、また工場建設。それと、ウサギ居住区に行ったら作業が遅れていたので、二軒ほどアパートを建てておいた。
お昼を食べに役場に戻ったら、モグモグしながら双子王女と打ち合わせ。移住第四弾が迫っているので、まだまだわしは忙しいのだ。
お昼を食べたらお昼寝したいところだが、玉藻の事も気になったので訓練場に顔を出した。
「お~。やってるにゃ~」
普段は、侍講習を受けてマスターした生徒がわかりやすく授業をしているなのだが、今日は宮本
その地獄のような光景を見ながらわしは進み、突っ立ている玉藻の隣に行くと話し掛ける。
「侍の剣はどうかにゃ?」
「面白いは面白いんじゃが……さっぱりわからん!」
「にゃはは。最初はそんなもんにゃ。玉藻にゃら斬られても痛くないんにゃし、わしみたいに直接喰らったらどうにゃ? 早く覚えられるかもしれないにゃ」
「服が斬られたらポロリするじゃろうが。お主と一緒にするな」
「わしだってポロリしてたにゃ~」
わしのアドバイスはあまり聞き入れてくれない玉藻は、また宮本の殺気の剣に斬られに行った。なのでわしは、倒れて動かないアイ達の元へ寄ってみる。
「お~い。生きてるにゃ~?」
「な、なんとか……」
いちおう全員息があったので、アイの手を取って体を起こしてあげた。
「みんにゃ、ちょっとは使えるようになったかにゃ?」
「ええ。でも、ミヤモトって先生には一太刀も入れられないわ。気付いたら斬られているの」
「アレは別格にゃ。あの域に達しなくても、獣相手にゃら必ず決まるから自信を持つにゃ~」
「あ、そっか……あの人を倒さなくてよかったんだ」
「切っ掛けさえ掴めれば、あとは自分しだいにゃ。訓練にゃんてどこでも出来るからにゃ」
それからアイ達と喋っていたら気功もマスターしたと聞いたので、そろそろ追い出そうとする。
「近々ソウのハンターギルドも開くし、行ってみにゃいかにゃ?」
「ソウ?」
「北にある街にゃ。行ったことあるにゃろ?」
「ああ。あの街ね。猫の街より立派な……」
「まだ負けてるけど、うちも頑張ってるにゃ~」
猫の街が
まぁうちから出て行ってくれるなら、それでいい。ハンターギルド開始の日に送って行くのも、まぁいい。でも、今まで寝泊まりした請求書は受け取って欲しいな~?
格安にした請求書は受け取ってくれないので、ゼロを一個足すと言ってみたら渋々受け取ってくれた。本当に安かったので、エレナ以外は納得して支払ってくれる流れになるのであった。
皆の訓練を見ていたらわしもちょっとやりたくなったので、宮本に何度も斬られた。一発は入れられたからよかったものの、下手に大衆の前でやるんじゃなかった。
めっちゃ期待して見てるから緊張するんじゃもん。斬られる度にめっちゃ落胆の声を出すんじゃもん。一発入れたら、まるで優勝したみたいに胴上げするんじゃもん!
どうやら皆は、いつも宮本に一方的に斬られているから、恨み辛みが溜まっていたらしい……
少し遊び過ぎたので、急いで次の仕事。白い森にエサを持って出向き、地下室に入れておいた大量の三ツ鳥居を回収したら、日当たりのいい場所でお昼寝。帰ったらごはんを食べて就寝。
日を空けてウサギ族移住第四弾に挑み、揉み洗いの洗礼を受けるウサギ族。アイパーティもまざっていたが滞りなく終わり、仕事がまた増える。
仕事の合間に玉藻達の武器を作ったり訓練したりお昼寝したり。そうこうしていたらソウのハンターギルドが開業となり、アイパーティを送って行ったついでにわしも出席してお昼寝。
毎日忙しく過ごし、ウサギ族移住第六弾も乗り切ると、お昼寝の時間が増えるわしであった。
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