591 桜を見る会終了にゃ~
源斉は作業を始めてしまったので、ちびっこ天皇と玉藻の苦情はわしに集中する。どうも源斉には話が通じないから、話の通じるわしに当たっているようだ。
ガミガミ苦情を言って来る二人は適当にあしらいながら歩き、源斉の奥さんの所へお邪魔する。そこで、日ノ本ツートップを前に恐縮する奥さんと交渉。
「うちでも太陽光発電を作るから設計図を貸してくれにゃ~」
わしの無茶振りに奥さんでは即決できないらしく、ちびっこ天皇と玉藻を見たら、玉藻が答えてくれる。
「そりゃ無理な相談じゃな」
「ちょっ、わしのアイデアで作ったんにゃから、そういう契約になってるんにゃ~」
「そうなのか?」
玉藻は詳しい話を知らなかったので、ちびっこ天皇に話を振る。
「うん。シラタマから案を買ったようなものだ」
「にゃ~?」
「しかしじゃな……」
「別にタダというわけじゃないにゃ~。フィルムと同じようにするんにゃ~」
「フィルム?? そう言えば、そちは勝手に売っておったな……」
「もう! 玉藻じゃ話にならないにゃ~!!」
「実はだな……」
玉藻は最新の情報を知らないので、わしがイライラして貧乏揺すりを始めると、ちびっこ天皇はフィルムを各国で作っていると説明してくれた。
「そんなことになっておったのか……」
「それで財政がかなり潤っているんだ」
「にゃ~? 太陽光発電も作り方を輸出したら、日ノ本が儲かるんにゃ。てか、平賀家だけにやらしても、日ノ本発電計画が遅れるだけにゃ~」
「う、うむ……確かにそうかもしれん」
「もういっそ、開発部門と製造部門は分けたらどうにゃ? 浜松だって復興するにゃら、仕事があったほうがいいにゃろ? そうすれば、電車をもっと多くの土地に繋げられるにゃ~」
わしの案に二人は唸りながら話し合い、しばらくして結論が出た。
「作るのはいいのじゃが、日ノ本へ輸出なんかはできんか?」
「それが条件ってことかにゃ?」
「うむ。遅れていた電車の工期が早まるというのなら、こちらとしても有り難い。本州を端から端まで繋げられるからな」
「う~ん……ちょっと待ってにゃ」
わしは一度席を外して、外の空気を吸いながら考える。
わしも熱くなっていたか……。よくよく考えたら、日ノ本の仕事を奪う事を平気で言っておったな。電車が繋がるって事は、移動の時間が減るって事じゃろ? そうなったら失業者が増える。
わし達の地ならば、土地も広いし獣も多いんじゃから、やろうと思えば仕事はなんぼでも作れる。事実、各国は土地が広くなって、新たな街を作る計画が出てると聞いたな。
日ノ本の事を考えたら……うん。技術大国にすれば、なんとでもなるか。
考えがまとまったわしは玉藻達の元へ戻ると、紙を広げて話を再開する。
「今後の話にゃんだけど、美味しいから聞いてくれにゃ」
「うむ……」
「まずは発電所にゃろ。そこで必要にゃのは新型電池にゃ。そして電気自動車と作っていくにゃ。さすれば、他国に発電所を作らせても、仕事は減らないと思うんにゃ」
わしが紙に思い付く案をちょちょいと書いて繋げていくと、玉藻達にも言いたい事は伝わったようだ。
「つまりは、車を輸入しなくていいようにしろということか……」
「だにゃ。うちの車は魔力で動くけど、日ノ本では完全に電気で動くようにすれば差別化が
「内需だけでなく、外需もか……しかしそんなことをすれば、そちの車が売れなくなるのでは?」
「それはわからないにゃ。もしもの場合は、需要と供給を見て判断するにゃ。ハイブリット……とと、アイデアを奪われるとこだったにゃ。にゃはは」
わしが笑って誤魔化すと玉藻達は聞き慣れない言葉に反応していたが、これほど協力しているので追及は来なかった。
「まぁざっくりした未来図はわかったにゃろ。できれば、新型電池も猫の国でも作らせて欲しいんにゃけど……」
「貯める物もないと太陽光も宝の持ち腐れか……」
「太陽光発電の製造は、うちで講習会をやって広めてやるからお願いにゃ~」
「うぅぅむ……」
太陽光発電と新型電池のロイヤリティも日ノ本に入るのだと説得を繰り返すと、ようやく玉藻が折れた。
「わかった」
「やったにゃ~!」
「しかし、そんなに新しい仕事を増やして人手は足りるのか?」
「最近人手……ウサギの手が増えたから楽勝にゃ~」
「ウサギの手??」
「こやつはな……」
わしが言い直すとちびっこ天皇は首を傾げるので、玉藻からウサギ族の説明を受けていた。その間、わしは……
いよっしゃ~! 早くもウサギの仕事、ゲットだぜ!!
内心はホクホク。五千人もの移民を受け入れるのだ。小型家電の製造を開始しても、雷魔道具の電池も足りないので、捌くのにどれぐらい時間が掛かるかわからなかったから渡りに船。
太陽光発電セットを同時平行で売り出せば、貴族だけでなく商人にも手が届くかもしれない。首都である猫の街がバブルを迎えるのだ。これほど嬉しい事はないから笑いを
とりあえず日ノ本発電計画の進捗状況を聞き、商談の上手くいったわしは、玉藻達と御所へ帰るのであった。
「それで……今日は何をしていたのかしら?」
「ちょ~っと……観光にゃ~」
御所へ帰ると女王の尋問が始まったので、もうしばらくは知られたくないわしは嘘で乗り切ろうとする。
「嘘ね……ひーちゃん。シラタマと何の話をしていたのかな~? ママに教えてくれる??」
「まだその設定続けてたにゃ!?」
「うん! 太陽光発電を……」
「陛下も続けにゃい!」
「猫の国で作る……」
「玉藻~! 止めてくれにゃ~~~!!」
わしの嘘は女王にバレバレで、ちびっこ天皇にママトラップを仕掛けられたから玉藻を使う。さすがは玉藻、素早く動いてちびっこ天皇の口を塞いでくれた。
でも、エロガキは嬉しそうだな。玉藻アダルトバージョンの乳がそんなにいいのか? キツネ耳ロリ巨乳がタイプじゃなかったのか??
玉藻の大きい物に挟まれて嬉しそうなちびっこ天皇は静かになったが、もうすでにほとんど喋っていたので、三ヶ国の密談に発展。
太陽光発電セット製造に一枚噛ませてくれとうるさい女王に玉藻が負けて、結局は技術を流す事になっていた。
女王の口車、恐るべし……
翌日は、全ての王が御所に集まり、世界会議。と言っても、日ノ本との国交を結ぶ条約書を配布して、受けるかどうかの話し合いをするだけだ。
見本は猫の国が結んだ条約書。面倒だけどわしが司会をして、個別の質疑応答。呑めない物は持ち帰ってもらい、呑める物だけはこの場でサインしてもらう。
残りは東の国に日ノ本の特使を派遣する予定なので、勝手にやってくれ。
昼食を挟んで諸々の話し合いが終わると、わしが締める。
「これで、各国も自由に日ノ本へ行けるようになったにゃ。日ノ本の魔法使いが足りにゃいから猫の国にしか三ツ鳥居は置けにゃいけど、日ノ本への旅人には猫の国の入国税は免除するからにゃ。各国の住人にも観光を楽しませてやってくれにゃ~」
各国の王から拍手が起こる中、ちびっこ天皇からも簡単な挨拶があり、世界会議は終わりを告げるのであった。
その夜は、夜桜を見ながらの大宴会。全裸のキツネとタヌキ花魁が雪崩れ込み、酒池モフ林の乱痴気騒ぎ。西の地の者はモフモフハーレムを堪能しているようだ。
その半狂乱の騒ぎの中、わしたちモフモフ連合は離れた場所で穏やかに宴会をしている。
だって、あんな中に入ったら、キツネやタヌキじゃないのにモフられるんじゃもん。
日ノ本組もわし達と飲んでいるところを見ると、あの騒ぎは恐怖を覚えるのだろう。なので、世間話をしながら楽しく飲んでいる。
その席で、家康の台湾無双を伴奏付きで聞いたり、玉藻のハンターギルド無双なんかも聞いたりした。
ネタが尽きたら、わしの未来の話。世界がどう発展していくかわからないが、明るい未来の話は皆も面白いようだ。
そうして楽しく語っていたら、フラフラのさっちゃんがやって来て、わしを抱いてから椅子に座った。
「もういいにゃ?」
「ちょっと休憩。シラタマちゃんのモフモフでモフモフ休み」
「それ、休めてるにゃ??」
「なんか楽しそうに喋ってたよね? なに喋ってたの??」
「ちょっとした未来の話をしていたにゃ~」
「なになに~??」
さっちゃんはわしの質問は無視して答える気がないみたいなので、さっきまでしていた話をかいつまんで教えてあげた。
「ほへ~。電気ひとつで凄い事が出来るのね~」
「実現できるのはまだまだ先だろうけどにゃ~」
「ふ~ん……ま、いまは未来より現在ね。もっとモフモフして来よっと」
「にゃはは。さっちゃんらしいにゃ~」
わしが笑うと、さっちゃんは立ち上がって走り去って行くのであっ……
「こりゃ! わしは置いていけにゃ~!!」
「あはははは」
「いにゃ~~~ん!!」
さっちゃんに強制的に酒池モフ林に放り込まれたわしは、一瞬で服を剥ぎ取られ、大多数の手で撫で回され続けて気絶するのであったとさ。
翌朝は、メイバイの胸の中で目覚めた。どうやらわしは、酒池モフ林が解散したあとの爆心地でピクピクして倒れていたようだ。
ただ、メイバイとリータはモフモフ酔いに苦しんでいて、なかなか起きれないでいた。二度もモフモフ酔いになるなんて、本当にそんな症状があるのかもしれない。
東の国組も、頭を押さえて
今日は自由行動という事もあり、先日回って気に入った桜の名所を二、三回る。その時、他国の王族とも擦れ違ったのだが、漏れなく頭を押さえていたので大丈夫かと聞いたら、こちらもモフモフ酔いとのこと。
こんなに大勢がモフモフ酔いになるなんて信じられないが、発症している者がこんなに居るのだ。もう、これは、立派な病気として学会に発表しなくては!
この事から日ノ本への旅行者には、『キツネとタヌキの花魁と遊ぶのはかまいませんが、長時間のモフモフは二日酔いに似た症状を引き起こす場合がありますので気を付けるように』とのパンフレットを配布するのであったとさ。
自由行動が終わった夕方頃、五条城に集まった各国の王族は、ちびっこ天皇から有り難いお言葉と再会を約束して三ツ鳥居を潜る。
こうして第一回桜を見る会は滞りなく終わり、各国の王族は日ノ本のおもてなしに満足して自国に帰るのであった。
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