481 日ノ本へ出張にゃ~
エルフの里から戻って我が家兼役場に帰ったら、双子王女から最後の救援物資が届いていると聞いたので、受け取りに走る。別に急ぐ必要はないのだが、明日、朝から忙しくする為には、受け取っていたほうが都合がいい。
そうして荷物を次元倉庫に入れると、我が家に帰って美味しくごはんを食べて就寝となった。
翌朝は、朝からいそいそと着替えて仕事に向かう。今日の仕事は、救援物資の配達。終わったら日の本をブラブラする予定だ。
「じゃあ、私も行こっかニャー?」
「ですね。お供します」
リータとメイバイに心の声は読まれてしまい、今日も猫ファミリーでお出掛け。直接浜松近くに転移して、走って玉藻達を探す。
浜松の住人に聞いて回るのだが、わしの顔を見て拝む人続出。被災時には、わしに感謝する余裕がなかったので、いまさら爆発したようだ。
なので、恥ずかしい気持ちを押さえつつ、先ほど侍っぽい人から聞いた浜松城跡地へと歩いて向かう。
「建設ラッシュだにゃ~」
「私達が帰ってからたった一週間ですのに、凄いですね~」
「いまは骨組みだけだけど、もう一週間もすれば住めるんじゃないかニャー?」
わし達の歩く大通りは、木材を乗せた大八車がひっきりなしに走り、道沿いには何十、何百もの木造家屋が同時平行で建てられている。
「これだと、復興は早そうですね」
「さすが玉藻さんと家康さんニャー」
「にゃはは。それを言ったら、住人全て……日ノ本の人が、真面目に復興に取り組んでいるからにゃ~」
そうして工事現場を見ながら歩いていたら浜松城に着き、侍と目が合ったら、走る者とわし達を案内する者とに分かれた。
おそらくわし達が現れたら、すぐに報告する事と連れて来る事を指示されていたのだろう。なので、その者のあとに続いて、わしが建てた四角い建物の横にある大きなテントに通された。
「おお! 久方振りじゃな!!」
「待っておったぞ」
大きなテントに入ると、玉藻と家康が椅子から立ち上がり、手を差し出して来るので二人と握手を交わす。
「二人で同じ作業をしてるとは、ずいぶん仲が良くなったにゃ~」
「不本意ながらじゃ。西から来る大工も多く居るから、
「建設工程が若干違っていて揉め事も起きるから、不本意ながら助かっておるんじゃ」
わしは嫌みで言ってみたが、どちらも不本意と言いながらも、嫌々やっているわけではなさそうだ。
「にゃははは。仲良き事はいいことかにゃ~。とりあえず、忘れない内にお土産を出すにゃ。どこに出していいか教えてにゃ~」
玉藻と家康の案内で場所を移動し、天守閣の建設予定地に到着した。
「本当に、ここでいいにゃ? 城を建てるんにゃろ?」
「いまは建てる余裕がないみたいじゃからのう」
「まずは住人の家からじゃ。お主の建てた建物もあるから、侍の住居には困っておらんからのう」
「ふ~ん。ま、それでいいにゃらここに出すにゃ~」
わしのお土産とは、もちろん救援物資。穀物に干し肉や油、服やロウソク、少ないけど光の魔道具なんかも各国は用意してくれた。
「おお~。凄い量じゃな。服も助かるぞ~」
「わはは。日ノ本だけでは集まらん量じゃ。本当に有り難い」
「お礼は、ヤマタノオロチ肉でいいかにゃ? 近々各国に行く用事があるし、急ぐんだったら、わしが配って来てあげるにゃ」
「そうじゃな……じゃが、それだけでは足りんじゃろう。何か喜ぶ物があったらいいんじゃが……」
「刀にゃんかどうにゃ? 装飾された刀にゃら、たぶん喜んでくれるにゃ~」
「なるほど……それなら、早くに用意できるかもしれん」
「刀なら、徳川からも出すぞ。となると、一度集めて、選別したほうがよさそうじゃな」
「うむ。最高の物を贈りたいからのう。ならば、やはり先行して、ヤマタノオロチを渡してもらったほうがよさそうじゃ」
「わかったにゃ~」
救援物資とお返しの話が終わると、さらなる土産の話をする。
「あと、昨日エルフの里に行ったら、木材も乾燥できてたから大量に持って来たにゃ。これはどこに出そうかにゃ?」
「お~。すぐにでも足りなくなりそうだったから、困っていたんじゃ」
「まったく、至れり尽くせりとはこの事じゃな。猫の国には足を向けて寝られないわい」
「恥ずかしいから、あんまり褒めるにゃ~」
木材は避難所近くに作業場があるらしいので、皆で歩いて向かい、これからどう復興するかの説明を受ける。その時、玉藻と家康を見て土下座をしようとする者が居たが、そんな事をせずに仕事を優先しろと叱責する一面があった。
二人に怒られて震えるかと思って見ていると、笑いながら去って行ったので、これでいいのかと聞いたら、元々ある程度落ち着くまで無礼講としているようだ。しかし、条件反射で土下座してしまう者もいるので、笑って許しているらしい。
そうこう喋っていたら、材木置き場に到着。前回持って来た材木は残り僅かだったのでそこに出すが、前回より三倍以上多かったので、
まぁ無いに越した事はない。それに、場所ならいくらでもある。また一ヶ月も経てば、足りなくなるはずだ。
「まだ必要にゃのかにゃ? 必要にゃら、ここからは応相談にゃ」
「そうじゃのう……各地からも直に届くじゃろうし、止めてもらったほうがいいか」
「たしかに、これだけの材木をタダで貰うのは気が引ける。次回、足りなくなったら金を払わせてもらおう」
「ま、その時は、ヤマタノオロチから差っ引くにゃ~」
「ちゃんと手数料も差っ引けよ? それぐらいは払わせてくれ」
「有り難く頂戴するにゃ~」
猫の国は、かなりの支援をしたんだ。無下に断る事もないだろう。それに、受け取らないほうが、玉藻と家康の気持ちが楽にならない。もちろんそのお金は、猫の国の国庫に納められる。ちょっとピンハネして……
うちには、腹をすかせたコリスとオニヒメとリータとメイバイとリンリー……大食らいがけっこう多いな。本当に切迫しそうじゃから、全部懐に入れようかな?
悩み事が増えたが、黒い獣なら何百匹も次元倉庫に入っているから、当分なんとでもなるだろう。なので、迷いはちょっとだけ打ち消した。
「さてと~……用件も終わったし、わし達はさっさと行くにゃ~」
「「もうか!?」」
「長居しても、二人の仕事を邪魔するだけにゃろ?」
それに、拝む人の念仏が怖いし……居心地が悪いんじゃもん!
「もう国に帰ってしまうのか……」
「いや、二日は京で宿を取る予定にゃ~」
「シラタマさ~ん?」
「シラタマ殿~?」
わしが二泊もすると言うと、リータとメイバイがわしに詰め寄るので、京でもいろいろやる事があると説明して納得してもらった。あまり信じてなかったけど……
「京へか……妾も近々顔を出すつもりだったんじゃ。少し前倒しになるが、行って来てもいいか?」
わし達が揉めていると、それを聞いていた玉藻は家康と話し合う。
「かまわん。電報だけでは伝わらん事もあるじゃろう。
「では、すぐに準備して来る!!」
「にゃ? わしは連れて行くにゃんて言ってないにゃ~!」
勝手に二人で相談して勝手に決めた玉藻は、ダッシュで城跡に走るので、わしはしばし待たされる。なので、家康と大工見学。あまり話が弾まないので、丸太を板にする作業を猫ファミリーで手伝ってあげた。
「うお! なんじゃこの板の量は!?」
「シラタマ王じゃ……大工、百人がかりの作業を簡単にこなしておったぞ」
「どんだけ便利なんじゃ……」
「わし一人じゃないにゃ~!」
戻って来た玉藻が板の山を見て驚くと、家康がコソコソと説明し、わしを変な目で見て来たので訂正しておいた。
リータとメイバイが一本ずつ丸太を担いで土台に置くと、コリス、オニヒメで【鎌鼬】。わしの仕事は、二人の【鎌鼬】の微調整と板をどける作業ぐらいだ。【突風】を使って綺麗に積んだけど……
ただ、丸太を一人で軽々担ぐ少女と、軽々板に変える少女?に皆は驚いていたようだ。わしは……板をジェンガのように遠くに積むから、なんか器用とか言われてた。拍手とかされたし……
「さて、行こうかにゃ」
玉藻も来ていたので、あとの片付けは大工職人に丸投げ。わし達のおかげで、一週間分の作業は進んだのだから当然だ。一週間分のゴミぐらい、頑張って片付けてね~。
途方に暮れる大工達から離れ、わし達はここでランチ。玉藻はすぐに戻って来ると言っていたのに、急に決まったから思ったより時間が掛かっていたようだ。なので玉藻と家康も誘って、これからの話を聞きながら楽しく食べる。
お腹も膨らみ、話も終わったら家康の使いの者が走って来たので、どうしたのかと聞いたらお土産をくれるとのこと。
被災地からそんな物を受け取れるわけもないので断ったのだが、家康からではなく、浜松や漁村の住人からの感謝のプレゼントらしい。なので、断る事はやめて、有り難く受け取っておいた。
浜松での仕事を終えると、家康とまたの再会を約束し、わし達は空を行く。転移で飛ぶには魔力に不安があったので飛行機にしたのだが、また玉藻に
「あ、そうにゃ。ご老公から飛行機の作り方を教えてくれと言われていたんにゃ。玉藻のほうでやっといてくんにゃい?」
「うっ……操縦の仕方ならなんとかなるんじゃが……」
どうやら飛行機製造には、平賀家が大いに関わっていたようだ。わしの持たしたゼロ戦を見せ、改良して、いま乗ってる飛行機と同じ物を作ったとのこと。ただし、わしとの約束もあるので、飛行機を開発するなと脅しておいたらしい。
まぁいまの技術では、浮かす事も難しいだろう。電池の改良が上手くいった
というわけで、家康に直々に教える仕事が出来たので、また日ノ本に出張し、東北観光でもしようかな?
「シラタマさんの気持ちはわかりますけど、日ノ本へ来るのは、仕事だけにしません?」
「しょっちゅう観光してたら、猫の国の仕事が
どうやらリータとメイバイは、わしの観光を止める為について来ていたようだ。しかし、猫の国に仕事がないわしは、疎かにならないから強行できる。
「そうでした……」
「そうだったニャ……」
「あるにゃ~! あるからそんにゃ目で見ないでくれにゃ~」
わしの心の声を読む二人は、残念な人を見る目で見て来るので、必死の言い訳とスリスリ。話を聞いていた玉藻もそんな目をして来るので、「にゃ~にゃ~」言い訳するわしであったとさ。
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