478 魔道具研究にゃ~
ヂーアイの身を引く発言は仕方なく了承し、代わりの者の候補を考えておくように話をしていると、オニヒメを乗せたコリスが走って来た。どうやら晩ごはんが出来たから呼びに来てくれたみたいだ。
なので、エルフ組が帰る日取りだけを擦り合わせ、コリスに引きずられて役場に帰るわしであった。
ちなみに、エルフや日ノ本の者が滞在する屋敷には専属の料理人を派遣しているし、冷蔵庫に高級肉が大量に入っているので、大食いのエルフ達にもそこまで多く作らなくても大丈夫になっている。
お腹のすいたコリスに引きずられて家に帰ったわしは、バクバク食べながら双子王女と相談。あまり相談に乗ってくれなかったが、わしのやり方には口を出さないようだ。
それからお風呂で揉み洗いされていると、タヌキ少女つゆが疲れた顔をして入って来た。
「きゃっ! すみません!!」
つゆはわし達が入っているとは気付かずに入って来たみたいで謝ったけど、胸とかだけ隠して、出て行く素振りがまったくない。
驚いた意味も謝った意味もまったくわからないが、わしの隣でメイバイに揉み洗いされるつゆに話し掛けてみる。
「にゃんか疲れてにゃい? 大丈夫にゃ??」
「心配させてすみません!」
「謝ってないで、質問に答えてくれにゃ~」
「それが……」
いちおうつゆも関ヶ原に来ないかと誘ったのだが、わしの渡した未来の技術が楽しいからか、研究したいと言って残っていた。
その研究が楽しすぎて、わし達が戻るまで、寝る間を惜しんで研究に没頭していたようだ。
「まぁ楽しいのはわかったけど、体調を崩すほど働かないでくれにゃ。サービス残業は、給金が出ないんにゃよ?」
「こんな新技術なんて、本来ならこちらがお金を払わないといけないですよ。それをタダで教えてもらってすみません!」
「いや、休みの話をしてるんにゃ~。休んでくれにゃ~」
目がギンギンのつゆは、全然休むと言ってくれなかったが、湯船に入ったら疲れのせいで眠ってしまった。まぁ研究の成果を大声で力説していたつゆが静かになったのはいい事だ。
わし達は落ち着いて湯に浸かり、
翌朝は、皆で寝坊。元より今日は、十時頃に起こしてくれと双子王女に頼んでいたのだが、直々に起こしに来なくていいんじゃぞ?
それに、なんでわしの顔を踏むんじゃ? リータとメイバイも、わしがイジメられてるんだから助けてくださ~い!
どうやら二人は、わしが踏まれてゴロゴロ言っていたのが気に食わないようだ。そんな趣味はないから、二人して踏まないでくださ~い!!
とりあえず目覚めたわし達は、食堂にて遅めの朝食。エミリがサーブしていたので、わしは呼び止める。
「昨日はしっかり休んだにゃ?」
「はい! 一日寝てましたので、元気もりもりです!!」
エミリも日ノ本での疲れがあるだろうと、昨日は完全休業を言い渡したのだが、ちゃんと守ってくれていたようだ。
いちおうワンヂェンも休むように言って、エミリに抱かせたので、モフモフも足りていたようだ。ワンヂェンは疲れが取れなかったかもしれないけど……
「それはよかったにゃ。でも、しんどいにゃら言ってにゃ? わしも付き合うからにゃ」
「シラタマさんは仕事しましょうね~?」
「そんな理由で休めると思っているニャー?」
どうやら子供のエミリが休む事は、リータとメイバイは賛成なのだが、わしが休む事は許されないようだ。エミリより年下なのに……
食事を終えると、今日の仕事。昨日の報告で、忙しくて通信魔道具に出れなかった他国の王と少し話をして、昼食を食べたら駅に向かう。
そこで救援物資を受け取り、次元倉庫に入れておく。すでに東の国、西の国、南の国は到着していたので、残りは発送済の小国と、まだ発送していない小国の救援物資。これが揃えば、一度日ノ本に届けに行く予定だ。
これでわしの仕事は終了。お昼寝……あ! 大事な仕事を忘れていたな~。コリス、行こうぜ~!!
あまりに早く仕事が終わってしまったので、コリスを誘って走り出す。リータとメイバイが睨んでいたので致し方ない。コリスを誘えば、散歩だと思ってくれるはずだ。
巨大リスの散歩が仕事ってわけではないけど……
コリスの背には、オニヒメが乗っていたけど気にしない。モフモフ言っているところを見ると、気に入っているみたいだ。
そうして目的地に着くと、ズカズカと建物内を歩く。
「ノエミ~。やってるにゃ~?」
わしの目的地は、魔道具研究所。皆、何やらおどろおどろしい雰囲気でブツブツ言っていたから、声を掛けてみた。
「ちょっと待って。いまいいところなの」
ノエミはそう言うと、また筆を持ってブツブツ言い出したから、わしはその横に立って作業を見る。
どれどれ? おお~。獣の角に英語が事細かく書かれておる。漢字から英語への移行は上手くいったってところか。三ツ鳥居の魔力注入で忙しかったじゃろうに、頑張っておるのう。
作業を見守っていると、ノエミは額に浮かぶ汗を拭ってからわしに顔を向ける。
「ふぅ~……お待たせ」
「いいにゃいいにゃ。それで、この魔道具は、にゃんの魔法が入ってるにゃ?」
「ただの光よ。たぶんこれで、今までの三倍の時間、光っているはずよ」
「そんなににゃ??」
「まだまだよ。タマモ様が作った光の魔道具は、五倍以上の効果になってたんだから」
何その話……わしはそんな報告を聞いてないんじゃけど?
「いつの間に、そんにゃ事をしてたにゃ?」
「あ~。シラタマ君は、ここから追い出されていたもんね。あのあと、休憩時間にちょっとだけ教えてもらったのよ」
どうやらノエミはわしの知らないところで、玉藻から三ツ鳥居以外の魔道具の作り方を教えてもらっていたようだ。それを参考に、魔道具製造の練習をしていたとのこと。
「調べたところ、カンジを使わないと、効果は半減ってとこね」
ふ~ん……いろいろやっておったんじゃな。それで、英語と漢字では差が出たと。これも言霊が関係していそうじゃな。わしの魔法も、ほとんどが漢字を想像して放っておるしな。
「でも、作るのは英語のほうが早いにゃろ?」
「そうね……量産するなら英語ね。カンジが普及したらいいんだけど……」
「難しいから、にゃん年先になるかわからないもんにゃ~。三倍でもいい
「ええ。この文章を……」
ノエミから魔道具製造を学び始めると、コリスは面白くないからかお昼寝。オニヒメは気になるのか、わしの作業を見ていたから一緒に英語を刻む。文字の練習にもなるから、ちょうどよかったかもしれない。
こんなもんかな? 試しに光らせよっと……うん。違いがわからん。持続性が延びたって言ってたか。たしか、この魔法名のところを書き換えれば、他の魔法に転用できるとも言っておったな。
長い文章を何度も書かないといけないから大変じゃけど、これでキャットトレインやバスの走行距離が伸びるな。わしでは、電池を足すしか方法が思いつかなったし、玉藻様々じゃ。
お! オニヒメも出来たみたいじゃな。
オニヒメの作った魔道具は、文字が所々間違っていたせいで光が点滅していたが、褒めちぎっておいた。文字も習っていないのに、魔道具を作れたから当然だ。
でも、本人は納得していないらしく、筆を手離さないから、ノートと鉛筆を渡してこれで練習したらいいと言っておいた。
「あ、そうそう。わしも玉藻から面白い魔法を習っていたにゃ」
「なになに~??」
わしがそんな事を言うと、ノエミは興味津々。べったりくっついて、わしの作業を見守る。
えっと、紙に魔力を
折り紙は久し振りなんじゃよな~。試しに、鶴でも折ってみるか。たしかこう? こうじゃったか? う~む……なんか別の物が出来た。
「シラタマ君は器用ね~。ただの紙がお人形さんみたいになったわね」
鶴を折ろうとしたんじゃけどな~……。ヤッコサンになってしまった。ま、ノエミに言ったところでわからんじゃろうし、成功ってことで!
「わ! 生きてるみたいに動き出した。どっかに糸でも仕込んでるの??」
わしが魔力で操作すると、寝そべった体勢でいたヤッコサンは、腕を折り曲げ、体を支えて立ち上がったら、ぴょこぴょこ跳ねて前進したので、ノエミは操り人形と勘違いしたようだ。
「いんにゃ。完全に魔法で動いているにゃ。前に、猫の魔法を教えたにゃろ? それの、物を使ったバージョンって感じだにゃ」
「あ! アレね……強力だけど、魔力が大量に必要だから、乱発できなかったのよね」
「まぁやり方しだいにゃけど、この魔法を使えば、近い事がローコストで出来そうだにゃ」
「うっわ~。日ノ本の魔法……呪術だっけ? 本当に面白いわ~」
「あ、そうにゃ。黒い木は、白い木と同じように使えなかったかにゃ?」
「あ~……アレはダメ。皮は少し魔力は残っているみたいだけど、幹はすっからかん。木としてはしっかりしてるんだけどね」
「残念にゃ~。黒い木も使えたら、三ツ鳥居も安く作れたのににゃ。皮が使えるにゃら、もうちょっと研究してくれにゃ。折り紙魔法もにゃ」
「オッケー」
そうしてノエミにも折紙魔法……【式神】を教えてあげていたら、オニヒメがガン見していたので、一緒に折紙を折る。
作れるレパートリーが無いので、簡単な飛行機と、うろ覚えの手裏剣も作ってみたけど、オニヒメが一番気に入ったのは、ヤッコサン。そればかり作って、整列させたり行進させたりして楽しく遊んでいるようだ。
「オニヒメちゃん、凄いわね……」
わしが一息ついていると、ノエミはオニヒメを呆れたように見ている。
「にゃはは。本当ににゃ~」
「私でも、同時に五個を動かすのはしんどいのに、十個以上よ? 同じくらいの子なのに、どうなってるの??」
「わしのオニヒメをノエミと一緒にするにゃ~!」
「あ……見た目の話よ。見た目」
まったくノエミの奴、サバ読みやがって……四十代のオバサンが、幼女のオニヒメと一緒なわけ……
「残念にゃお知らせがありにゃす」
「急に改まってどうしたのよ?」
「オニヒメのほうが、ノエミより年上でしたにゃ」
「へ??」
「ノエミ、四十代……オニヒメ、百歳オーバーにゃ~~~!!」
「「「「「ええぇぇ!?」」」」」
わしが二人の年齢を暴露すると、この場に居た者から悲鳴のよう声があがり、ノエミとオニヒメの顔を交互に見る。反応から察するに、ノエミの年齢は誰も知らなかったようで、四十代と聞いて驚いているみたいだ。
なのでノエミは大人だと言い張り、頬を膨らませていたけど、皆に頭を撫でられていた。
「だから大人って言ってるでしょ! プンプン」
「オバサンにゃのに、かわい子ぶるから悪いんにゃ」
「誰がオバサンじゃい!!」
何を言ってもノエミは面倒臭いので、この日以降、ノエミの年齢や容姿について触れる事はタブーとなった。
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