338 ホワイトタイガーと戦うにゃ~
わしがホワイトタイガーに気さくに声を掛けたら、エサ認定されて囲まれてしまった。しかし、わしは諦めずに声を掛け続ける。
「まぁまぁ。挨拶しただけじゃろ? ちょっと話をせんか?」
「エサと話す事は何もない。お前達、いたぶって食ってやりな!」
「「「ぐるるるぅぅ」」」
交渉決裂じゃ。全員、ヨダレを垂らして距離を詰めて来よる。これならしょうがないのう。
わしは覚悟を決めて、腰に帯びた刀を抜く。すると、三匹のホワイトタイガーは、いきなり飛び掛かって来た。
わしは全ての牙を避け、刀を振るうが、ホワイトタイガーは素早く避け、何度もわしに牙を向ける。
うん。速いしパワーも凄い。さすがは虎。猫とは違うな。じゃが、猫科の生き物じゃから、若干、おっかさんに似ていてやり難い……
おっきいのはサイズが違い過ぎるから、なんとかなりそうか。情が湧く前に、作戦通り分断しよう。
わしは攻撃を避けながら探知魔法を使い、リータ達の位置を確認すると、風魔法を使う。
よっと。【大風玉】! まずはリータの元へ行ったな。次は尻尾二本。【大風玉】! コリスの所へ届いた。ほっ! ラスト!!
最後の一匹も、わしの放った大きな風の玉に吹っ飛ばされ、木を薙ぎ倒しながらメイバイの元へと到着した。
虎はタフネスと聞いた事はあるが、多少はダメージが入ったじゃろう。これで、みんなの援護になって、楽が出来るはずじゃ。
わしがホワイトタイガーを全て吹き飛ばすと、大ホワイトタイガーが
「その程度の魔法で、息子達が死ぬと思うなよ!」
「だろうな。でも、飛んで行った先には仲間がいるから、帰って来れないぞ」
「お前のような弱い生き物の仲間など、高が知れる。仲間もろとも食ってやる! ぐるるぅぅ」
大ホワイトタイガーの唸り声と共に、わしの戦闘が始まるのであった。
* * * * * * * * *
シラタマに吹き飛ばされたホワイトタイガーは、リータ達の元へ送り届けられ、目が合った瞬間に、激しい戦闘に突入する。
リータの場合。
くっ……速い! けど、なんとか追い付ける。これなら……
リータは腰を落としてドッシリと構え、四方から素早く攻撃するホワイトタイガーの攻撃を盾で無難に受け止め、攻勢に出ない。シラタマが来るのを待っているのだろう。
だが、スピードに慣れて来ると、少し欲が出たようだ。
鎖を脚に……おしい!
リータは攻撃を受け止めた一瞬の隙を使って、ホワイトタイガーの脚に白魔鉱の鎖を巻き付けようとする。
ホワイトタイガーもそれに気付いたのか、【風の刃】を交えながら突撃。難易度の上がった作業と変わったが、リータは焦らずホワイトタイガーの脚を狙う。
よし!
「おりゃ~~~!」
鎖が脚に絡まったホワイトタイガーは、リータの馬鹿力に引っ張られ、バランスを崩して転ぶ。ホワイトタイガーは慌てて立ち上がるが、リータはその隙を見逃さず、重たい拳を胴体にぶち込んだ。
その一撃で、ホワイトタイガーは吹っ飛び、木に打ち付けられたのであった。
「まぁこんなものかな?」
唸り声をあげて起き上がるホワイトタイガーを見ても、リータは冷静さを崩さない。力量を把握し、立ち上がると思っていたようだ。
「さあ、もう一発入れてやる~!」
リータの掛け声と共に、戦闘は続くのであった。
* * * * * * * * *
コリスの場合。
コリスもリータと同じく、ドッシリと構えてホワイトタイガーの攻撃を、二本の尻尾で弾いていた。
ホワイトタイガーより小さいが、コリスは少し強さが上回り、少し速さも上回っているので、余裕を持って対処しているようた。
あ! そうだ!!
「コォォォォ」
突如、コリスは思い出したかのように、
これをやれば、モフモフが強くなれるって言ってたもんね。
あ……それはシラタマの冗談だ。コリスの戦い方を見て、面白がって教えただけなのだが……
「え~い!」
でも、コリスは飛び掛かるホワイトタイガーに、尻尾でガードすると同時にリスパンチを入れて吹っ飛ばす。
う~ん。がんじょうだな~。いっぱい叩かないと、たおれてくれないや。
コリスは、今日は冷静に対応しているようだ。これもそれも、リータやメイバイの訓練に付き合い、シラタマともじゃれている効果が出ているのであろう。
「コォォォォ」
息吹きは関係ないのだが、本人がそう思っているなら、やらせてあげよう。
そうして何度もホワイトタイガーを吹っ飛ばしていると、ホワイトタイガーは風魔法を織り混ぜて攻撃して来る。
この攻撃も、コリスは冷静に対応。【風の刃】に合わせて【
ホワイトタイガーは、貫通した【鎌鼬】をなんとかギリギリかわすが、地力で優るコリスが追い詰めて行く。
「コォォォォ」
そうして、コリスの息吹が辺りに
* * * * * * * * *
メイバイの場合。
メイバイはホワイトタイガーと速さ勝負に挑み、牙をかわしては攻撃、攻撃をかわされては牙をかわし、二体は目にも留まらぬ速度で渡り合う。
速いけど、なんとかなりそうニャー! でも、調子に乗って無理な攻撃をすると、反撃を受けそうニャ。私はシラタマ殿と違って調子に乗らないからニャ。
うん。メイバイも冷静に対応しているけど、よけいな事も考えている。
それでも体勢を崩さないように避け、足場も気を付けて避け続ける。そうして避け続けていると、メイバイもリータ同様、欲が出て来たようだ。
一回ぐらい斬ってみたいニャー。アレ、やってみるかニャ?
メイバイはホワイトタイガーと少し距離が空くと、足を止めて腰を落とし、ナイフを十字に構える。
ホワイトタイガーは空気が変わった事に警戒し、一瞬止まるが、獣の本能からか、すぐに行動に移す。
【風の刃】を放ち、突撃した。
ニャ!? 先にやられちゃったニャー! でも……
「【鎌鼬】ニャー!」
ほぼ同時に放たれた二つの風の刃は、ぶつかった瞬間に消失。その衝撃に驚いたホワイトタイガーは急停止した。
やっぱり、私の魔法の威力じゃ貫通まではいかないニャー。でも、相打ちには持っていけたニャー。
「もう一発! 【鎌鼬】ニャー!」
メイバイは、動きの止まったホワイトタイガーに【鎌鼬】を放つ。だが、すんでのところで避けられてしまった。
もらったニャー!
メイバイはホワイトタイガーの避ける方向を予測し、回り込んでいた。しかし、ホワイトタイガーも馬鹿ではない。回り込んだメイバイの動きに合わせて牙を向ける。
それも予想通りニャー!
メイバイは斬り掛かるフェイントを入れただけで前には出ず、ナイフを十字の形にし、半歩右に避けて、ナイフから光を射出する。
狙いはホワイトタイガーの自爆。メイバイの攻撃を
あ! かすっただけニャー。
残念ながらホワイトタイガーは身を
おしかったニャー。でも、二度目は無いニャ。被弾だけ気を付けて、シラタマ殿を待つニャー。私はシラタマ殿と違って調子に乗らないからニャ。
若干、シラタマをディスりながら、メイバイの戦いは続くのであった。
* * * * * * * * *
皆が戦闘に突入する少し前、わしは大ホワイトタイガーと壮絶な戦いを繰り広げていた。
ホワイトタイガーは爪に魔力を
お互い避けきれないと判断すると、爪や刀で受け、辺りに斬激音が響き渡る。
うむ。なかなか手強い。スピードも、今まで出会った獣の中では一番じゃ。キョリス達は横にもデカイから、スピードに違いが出ておるのう。
それに弾き返しても、どんな体勢からでも飛び掛かって来る。さすがはネコ科。バランス感覚がずば抜けているから、なかなか休ませてくれない。
なんだかんだで、キョリスクラスと真剣勝負するのは、シユウを含めて二度目か。まぁこの程度なら肉体強化魔法はいらんが、皆が心配じゃし、一気に行くか!
わしは肉体強化魔法を掛けると、大ホワイトタイガーの動きに合わせて移動する。大ホワイトタイガーが前に出て爪を振るえば、同じだけ下がって空振りさせる。
大ホワイトタイガーが下がれば同じだけ前に出て、大ホワイトタイガーの爪を刀で払う。
距離を取ろうとすれば、ピッタリくっつき、刀を軽く振って防御させ、体勢を崩す。
そうしていると大ホワイトタイガーに焦りが生まれ、攻撃が雑になって来た。大振りに前脚を振るい、尻尾を振るい、わしを離れさせようとする。
わしはその攻撃を刀で受け止め、それと同時に刀を引いて傷を付ける。
予想外のダメージを喰らった大ホワイトタイガーはさらに焦り、体を反転させながら大振りの尻尾を振るった。
ここじゃ!
わしは大きく跳んで尻尾をかわす。
「馬鹿め! がるるるぅぅぅ~~~!!」
わしが跳んだ直後、大ホワイトタイガーは一回転して顔を向け、【
「ハッ! やった……」
ザシュッ!
大ホワイトタイガーは勝利に安堵した瞬間、首を半ばまで斬られ、絶命した……
もちろんわしが、光の剣で斬ったんじゃ!
大ホワイトタイガーが焦って尻尾を大振りしたところで、わしは影魔法の分身を跳ばし、自分は回転に合わせて視界の外にいた。
【咆哮】に呑み込まれた分身はすぐに解除し、大ホワイトタイガーの首の下まで移動。【咆哮】が放たれている内に【光一閃】を準備してジャンプ。
そうして、【咆哮】が止まると同時に振るった光の剣は、大ホワイトタイガーの首を半ばまで斬り裂いたというわけだ。
よっしゃ~! これで虎柄の絨毯が手に入った。手強いからどうやって綺麗なまま倒そうかと思ったが、罠にハマって大技を使ってくれたから助かったわい。
魔法書さんで、皇帝の影魔法を探しておいてよかった~。あれなら、大きなダメージを受けても無意味じゃからな。
そう言えば、今までは侍のつもりじゃったが、今回は忍者みたいじゃったな。しまったな~。決め台詞に「
て、こんな事を考えている場合じゃなかった。皆を助けに行かなくては!
「忍び走りにゃ~! ニャンニャン、ニャンニャン」
こうして戦いを終えたわしは、「ニンニン」と言っているつもりで走り出すのであった。
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