325 ワニの群れと戦うにゃ~
「みんにゃ! 臨戦体勢をとってくれにゃ!!」
「「「「にゃ~~~!」」」」
ワニの群れから逃れて岸に辿り着くと、わしはすぐに指示を出す。すると皆も、気合いの入ったかどうかわからない声を張りあげる。
リータは白魔鉱の盾を悪い笑顔で構え、メイバイは白魔鉱のナイフを悪い笑顔で構える。わしとワンヂェンは
わし達が臨戦態勢を整えていたら、水面に黒い影がポツポツと見え始め、数が増えていき、その影からワニの頭が見える。
「アレはなんでしょう?」
「ワニにゃ。水辺に絶対近付くにゃ。噛まれると回転して引きずり込んで来るからにゃ」
「シラタマは詳しいんだにゃ~」
「そ、それは……おっかさんに教わったにゃ」
わしがリータの質問に答えていたら、ワンヂェンが割って入るので、ごまかして答える。
そうしていると、一際大きな影が現れ、白い頭が見える。巨大な白ワニだ。その白ワニを見たリータとメイバイは目を輝かせている。
「おっきいニャー!」
「私達が相手をしていいのですよね!?」
「う~ん……」
見た感じ、コリスと同等か……最近、二人がかりなら魔道具を使えばコリスとも互角に戦っていたな。じゃが、訓練と実戦は違う。大事を取るとなると……
「ワンヂェン。リータとメイバイを援護してやってにゃ」
「え……私達だけでも……」
「そうニャー!」
「わしの決定にゃ! じゃなきゃ、やらせないにゃ!!」
「わかりました……」
「わかったニャ……」
「まずは、ザコを減らすにゃ~!」
「「「「にゃ~~~!」」」」
わし達は、次々と岸に上がるワニとの戦闘を始める。
わしは刀を振るい、ワニの頭と体の間を斬り裂き、息の根を止める。コリスはリスパンチや二本の尻尾を落として頭を潰す。
リータも重く力強い拳を落として頭を砕き、危険があれば盾で防ぐ。メイバイは近付いて口を開けたワニを、二本のナイフで素早く斬り裂き、息の根を止める。
ワンヂェンの出番はまだまだあとなので、魔法は使わせず、後方で観察させる。
そうして川から這い出るワニを倒していると、白ワニも完全に岸に上がり、威嚇の声をあげる。
「ゴォォォォーーー!!」
デカイ! 二本の尻尾を入れたら20メートルはありそうじゃ。しかし、川から上がってくれたのはいいのじゃが、どうやってリータ達に引き渡すか……
まぁやるだけやってみるか。
わしはリータ達を下がらせ、コリスと共に前に出る。背中はコリスに任せ、わしはワニを斬り裂きながら走り、白ワニと対峙。白ワニはわしと目が合うと、大きな脚で踏み潰そうとする。
ズーンと大きな足音が響き、地が割れるが、わしはもうそこには居ない。素早い動きで後ろに回り込んだ。
「【肉体強化・マックス】にゃ! どにゃ~~~!!」
わしは白ワニの後ろに回り込むと肉体強化魔法を使い、それと同時に二本の尻尾を掴んで大きく振り回す。いわゆる、ジャイアントスイングだ。
「にゃにゃにゃにゃにゃ~~~!!」
そして、高速で回転して振り回し、勢いがついたところでリリース。白ワニは、遠心力によって遠くにぶっ飛んで行く事となった。
「ふにゃ~。あとは頼むにゃ~」
わしは速く回り過ぎて目を回し、尻餅をつく。リータ達はと言うと、わしの言葉を聞く前に、白ワニのぶっ飛んで行った方向に消えていた。
しばらく休んでいると大きな黒ワニが二匹、川から這い出し、わしを噛もうとする。
「モフモフ~!」
だが、コリスのリスパンチが炸裂し、黒ワニもぶっ飛んだ。
「お~。ありがとにゃ」
「うん!」
「そんじゃ、デカイのはコリスに任せるにゃ~」
「わかった~!」
コリスの助けがなくとも、わしは危機を乗り越えられたが、感謝の言葉を伝える事は忘れない。コリスがヘソを曲げて戦いたくないと言い出したら面倒だからだ。
そうして残りの黒ワニに向かって行くコリスを見送ったわしは立ち上がり、おしりの砂をパンパンと落とすと、ザコの掃討戦に移行するのであった。
* * * * * * * * *
一方その頃リータ達は、遠くに放り投げられて、木を薙ぎ倒して止まった白ワニに追い付いた。
「ワンヂェンさんは後方で、視界を奪うように魔法を使ってください」
「わかったにゃ~!」
「メイバイさんは、いつも通りお願いします」
「オッケーニャー!」
「では、行っくにゃ~!」
「「にゃ~~~!」」
皆は気の抜ける掛け声を出すと、リータを先頭に駆ける。リータ達が接近する中、白ワニは目を回していたのか、まだリータ達に気付いていないようだ。
「【エアブレード】にゃ~!」
「喰らえニャー!」
「どっせ~い!」
白ワニは隙だらけだったため、皆は集中砲火。ワンヂェンは風の刃を飛ばして弾かれるが、メイバイのナイフは白ワニの鱗を斬り裂き、リータの拳は白ワニを少し押し飛ばした。
「ぜんぜん効かないにゃ~」
「斬れたんだけど、ナイフじゃダメージになってないかニャ?」
「私も、効いた感じがしません。メイバイさん。肉体強化の魔道具を使いましょう!」
「わかったニャー!」
「にゃ……シラタマを呼んだほうがいいんじゃないかにゃ?」
「大丈夫です! ワンヂェンさんは、視界を奪い続けてください」
「……わかったにゃ」
ワンヂェンの心配を他所に、二人は黒い笑みを浮かべて走り出す。その頃には白ワニも復活し、リータ達を敵と認識して大きな脚を振り落とした。
「ぐっ……いまです!」
「任せてニャー!」
リータが白ワニの脚を受け止めるとメイバイが後ろから飛び出し、ナイフに光を
リータはその瞬間に後ろに跳んで、踏み付けから脱出。そこにワンヂェンの【エアブレイド】が、白ワニの顔にヒットし、目を
その隙に、メイバイはもう一度光の剣を数度振るって戻って来た。
「どうですか?」
「斬れたけど、もう何度か斬らないと、脚を潰せないニャー」
「でも、戦えていますね」
「そうだニャ。このまま繰り返せば、私達でも倒せるニャー!」
「ですね……あ! 横に跳んで!」
リータがメイバイに指示を出し、メイバイが跳んだ直後、大口を開けた白ワニが迫る。リータはギリギリまで引き付けると、メイバイと同じ方向に跳んで、土魔法を使う。
「【土槍】! ワンヂェンさん。風の猫を入れてください!!」
「わかったにゃ! 【風猫】にゃ~!!」
「私も行くニャー!」
大口を開けた白ワニは、リータの【土槍】によって口が閉まらなくなる。そこにワンヂェンの、風の刃渦巻く【風猫】が喉の奥に消えて行き、体内で暴れる。
白ワニは痛みに苦しみながらも【土槍】を砕くが、メイバイが傷を負った脚を光の剣で何度も斬り付け、再び痛みに苦しむ。
「やったニャー! たぶんこれで、一本の脚は使いものにならないニャー」
「やりましたね。でも、油断は大敵です」
「そうだニャ。何かやりそうニャー!」
「メイバイさん、後ろへ。ワンヂェンさんも、私の後ろについてください!」
リータは、二人が後ろに隠れると盾を構え、さらに光盾を二重に展開する。その直後、白ワニの口から、魔力の塊が放出されるのであった。
* * * * * * * * *
一方その少し前、わしとコリスはワニの掃討戦も終わり、次元倉庫に入れている最中であった。
「ホロッホロッ」
コリスの頭を撫でながら……
さてと、これで全部じゃな。この半分をソウの街に
もう半分は、ハンターギルドに卸せば、スティナからの苦情も来ないじゃろう。これだけ働いておるんじゃし、わしの懐も温めておかないと、猫の国からは給金が出ないからな。
リータ達は……少し離れているけど、見に行くか? う~ん。行ってしまうと、手を出してしまいそうじゃし、そうなったら怒られそうじゃ。
なんとか戦えておるみたいじゃし、心を鬼にして、休憩にするか。
「コリス~。ジュースにゃぞ~」
「あまいの! のむ~」
コリス専用特大コップにジュースを入れて手渡し、わしはお茶をすする。そうして二人でまったりとしていると、リータ達の居る方向から、大きな声が聞こえて来た。
あ……今の声は……ヤバイ! 【光盾】!!
わしはコリスの前に立ち、コリスを守れる大きな光の盾を展開すると同時に、魔力の塊がわし達を襲う。白ワニの放ったエネルギー波、【
【咆哮】はわし達を呑み込むが、光の盾によって防がれるので、コリスはまったりしたままジュースを飲んでいる。
【咆哮】が放たれて数秒後、その軌跡は白ワニから、川を挟んだ向こう岸の森まで木を薙ぎ倒していた。
まったく……ビックリさせよって。リータ達も、もう少しわし達に気を使って戦ってくれたらいいのに。まぁそこまでの余裕は無いか。
白ワニの攻撃で邪魔な木が消えたから、皆も見えるようになったな。どれどれ……わしと同じく、リータも【光盾】で防いだようじゃな。
リータとメイバイはさっきの攻撃を見ても冷静じゃが、ワンヂェンは焦っておるのう。あの威力では致し方ない。
白ワニは……すでに脚を痛めていそうじゃ。これならわしが助けに行かなくとも、時間を掛ければなんとかなりそうじゃ。
みんな~。がんばれ~。
わしがコリスと共に、やんややんやと応援を始めると、リータ達の戦闘が再開する。
リータの指示で、皆は白ワニの痛めた脚側に回り、白ワニの正面に立たないように戦う。これは、先ほどの【咆哮】を使わせない為であろう。
そうしてメイバイは後ろ脚に光の剣を何度も振るって傷を付けるが、白ワニはそうはさせまいと長い尻尾を振り回す。
横から凪ぎ払われる尻尾には、リータが対応。土魔法で足場を作り、盾で防いで動かずに止める事に成功する。防ぐだけではなく、白魔鉱の鎖を巻き付け、尻尾の戻りを遅らせて、攻撃回数を減らす。
そうしていると、もう一本の脚は使い物にならなくなり、次の目標に移動する。移動するには、不規則に動く尻尾側より顔側を選んだようだ。
ここで活躍するのはワンヂェン。リータの盾に守られながら、風魔法を顔に放ち続け、足りなければメイバイも少し参加。難無く反対側に移動する。
移動も終われば先ほどと同じような攻撃を繰り返し、左後ろ脚も使い物にならなくなると、メイバイは白ワニの背に飛び乗り、リータは前脚に鎖を巻き付ける。
リータと白ワニは力比べを開始し、動きが止まったところでメイバイが回転しながら、首元を光の剣で掘り進める。しかし、白ワニも馬鹿ではない。リータに引っ張られている方向に転がり始めた。
リータは巨体の転がりを避けるべく、ワンヂェンを抱えて跳ぶ。メイバイも足場が傾いた時点で白ワニから飛び降りて、リータ達と合流するのであった。
「もうちょっとだと思うんだけどニャー」
「さすがに一筋縄では行きませんね」
「どうするにゃ? シラタマを呼ぶにゃ?」
「まだ私達は戦えるニャー!」
「ですね。ワンヂェンさんは、シラタマさんの元へ走ってください」
「にゃんで?」
「もう魔法の援護は要りません。ただ、無茶をするので、シラタマさんの近くにいたほうが安全です」
「そうにゃんだ~。じゃあ、行くにゃ~」
ワンヂェンは、二人の邪悪な笑みを見てそそくさと逃げ出す。
そしてリータとメイバイは、転がり続ける白ワニを見据えて叫ぶ。
「「かかってこいにゃ~~~!」」
こうして二人の戦いは続く……何故かシラタマの口癖をマネて……
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