322 おニューの出番にゃ~
リータとメイバイの訓練の成果が見られたあと、二人はさらに訓練に打ち込むようになった。このままでは力を付け過ぎて、浮気認定された際に怖いので、適当な理由を言って、二人を地下空洞から連れ出す。
理由も適当過ぎると一人でやれと言われるので、ハンターの仕事なんかも積極的に行った。だが、連れ出しても獣が弱過ぎて訓練にならないと、強い獣の時に呼べと言って引きこもる。
どうやら二人は、かなりの脳筋になったようだ。にゃろめっ!
ポコポコはされなかったが、針で刺されてしまったので……いや、二人の引きこもり解消の為に、大蟻の駆除に乗り出した。
西の森は徐々にだが、軍の活躍で押し返しているので、もうしばらくしたら大蟻のテリトリーに入ってしまう。
駆除予定としては、軍が大蟻を発見したあと、報告を受けてから向かおうと思っていたのだが、二人の為に前倒しで行う事にした。
今回のメンバーは、リータ、メイバイ、コリス、ワンヂェン、ケンフ、シェンメイ。それと、軍にも大蟻の巣を見てもらおうと、コウウンとガクヒ将軍も連れて来てやった。
少数精鋭。例の如く、飛行機で巣の真上から落とし、ギャーギャー言われて戦闘が始まる。
今回も前衛が守り、クイーンのお出ましを待つ作戦で、炙り出しに成功。わしはザコの担当をしつつ、皆の戦いをフォローする。
クイーンには、コリスとリータとメイバイで当たらせ、黒蟻には、ケンフ、シェンメイをタイマン。ワンヂェンは、コウウン、ガクヒとチームを組んでもらい、こちらも黒蟻を相手させる。
結果的には圧勝。クイーンは、強くなったコリス達に、飛ばせないように羽を斬り落とされ、酸の液体もコリスに吹き飛ばされ、手も足も出ないまま、タコ殴りにあって息を引き取る。
その間、数分。手の空いた三人は、残りの黒蟻にも各個向かい、簡単に息の根を止め、ザコの掃討戦に移る。
ワンヂェン達も黒蟻をしとめて掃討戦に加わり、前回より早くに終了となった。
仕上げはわし。クイーンや大蟻を次元倉庫に入れて【玄武】を走り回らせ、穴を陥没させて埋めてしまう。
その後休憩していると、コウウンが顔を青くして質問して来た。
「戦争の時には気付きませんでしたが、奥方もお強いのですね……」
「にゃははは……はぁ」
コウウンの質問に、わしは笑って答えるが、ため息になってしまう。
「私の妻は怒ると鬼のようになるのですが、おふた方は大丈夫ですか?」
「鬼……かわいいにゃ~! 最上級より上の表現にゃ~」
「ですよね~!」
わし達の愚痴に、聞き耳を立てていたリータとメイバイの目が妖しく光ったので、おだててみた。相変わらずの地獄耳だ。にやろめっ!
心を読んで針を刺されても反省会を続け、コウウンとガクヒを各々の持ち場の街に送り届ける。
どうやらいい勉強になったようだ。リータとメイバイも、満足しているはずだ。
「あ! 新しい武器を使うのを忘れていました!」
「私もニャ! かっこよく使いたかったニャー」
いや、帰りの機内では、忘れ物に気付いて満足していなかった。しかし大蟻は、わしの精神を削る。しばらくは見たくない。
「新しい巣に攻め込みましょう!」
「試し切りニャー!」
見たくないと言っておろう! この脳筋が!! にゃろめっ!
口で文句を言うと怒られそうだったので、心の中で文句を言うが、結局、罰が下る。だが、わしも引けない。蟻の大群なんて気持ち悪いので、
その翌日も、ソウに連れて行けとうるさい二人を、無理矢理東の国に連れ出す。コリスとワンヂェンの成果報告で、ハンターギルドに行くのは仕事だからと宥めて、やっとの事でついて来てくれた。
そしてさっちゃんともお喋り……ぬいぐるみとしてモフられ、女王にもキャットトレインの運行状況を聞く……モフられ、猫の街に帰る。
今日は一日訓練が出来なかったと言われても、二人を休ませる為に外に連れ出したんじゃ。そうでもしないと休んでくれないじゃろ?
わしの優しい言葉を聞いたリータとメイバイは、感動して……
休むから、地下空洞に家を建てろじゃと? どうなさるのですか? 泊まり込むのですか。そうですか。
こうして、ソウの地下空洞には別荘が建てられ、見晴らしが悪く、職員が仕事をする様を見ながらお茶をすするわしの姿があったとさ。
別荘が建てられた事によって、二人はよりいっそう地下空洞にこもろうとするので、積極的に外に連れ出す。
今日は、北に湖があった事を思い出したので、飛行機で探す事にした。今年は雨がそこそこ降っているが、また水不足に
リータ達もそれならばとついて来てくれたが、なんだか目的が違うっぽい。武器を眺めて妖しい笑みを浮かべているから、ちょっと怖い。
前回調べた川は距離があるし、東に向かって流れていたので、水を引くとなると大きな工事が必要だ。わしがやれば、一ヶ月も掛からず出来るだろうが、それでは民の為にならない。
東も森の押し返しをしているので、近くなってから、街を作るなどをして水を引けたらベストなのだが、何年掛かるのだか……
それならば、報告のあった別の水場も全て調べてから、猫会議で方針を決めようという考えだ。
今回も飛行機で飛んで来たが、前回の白ペリカンの反省もあり、小回りの利く小型機。小さい理由は、外装に黒魔鉱を使っているため。薄くコーティングしただけだが、わしの魔力を注げば強度を増す。
さらに、魔道具を多数設置したので、探知魔法も攻撃魔法も、わしが外に出なくとも、敵の察知が出来て攻撃まで出来る優れもの。
小型機にしたので中は少し狭いが、椅子は小さなわし専用コックピットしかないので、大きなコリスが入っても問題ない。それに、大きなコリスソファーもあるので、座り心地も問題ない。
さあ、鳥ども……わしの戦闘機に恐れおののけ! 空の覇者が誰だか、思い知らせてやる~!! わ~はっはっはっはっ……
「あ! アレ、湖じゃないかニャー?」
「今回は鳥も現れなくて、順調に発見できましたね」
わしが心の中で高笑いしていたら、どうやら到着したようだ。性能を確かめたかったのに……
二人に降りないのかと何度も言われ、わしは渋々、白い輪に囲まれた湖の近くに降りる。そうして上部ハッチを大きく開けて、皆を降ろして次元倉庫に仕舞う。
「わ~! おっきなみずたまりだ~~~!」
「コリス! 待つにゃ!! リータ、メイバイ。コリスを止めてにゃ~!」
コリスが走り出そうとするので、二人に尻尾を掴んで止めてもらう。二人がかりなら、なんとか止められたようだが、苦しそうな顔をしているので急いで探知魔法を使う。
う~ん……近くになんか居るな。じゃが、形がよくわからん。ヘビ? ではないな。これは見ない事には、何かわからないな。ちょっと行って来るか。
わしはリータ達に、ここで待つように言って、森に入ろうとする。
ガシッ!
だが、コリスの尻尾を掴んでいるリータとメイバイに、わしの尻尾を掴まれてしまった。
「にゃ、にゃんですか?」
「獲物が居るのですよね?」
「そうですにゃ」
「私達の獲物ニャー!」
「いや……見に行くだけにゃ~」
「それだけなら、私達が行きます!」
「いや……にゃにか得体が知れないにゃ~」
「白だったら、すぐに戻って来るニャー。だからシラタマ殿は、コリスちゃんを見ててニャー」
「はい、尻尾です」
「待つにゃ……」
二人はわしに、コリスの尻尾を握らせて森の中に消えて行った。わしは二人の事が心配だが、コリスも心配なので、探知魔法を小まめに飛ばしながらコリスと共に、湖に近付く。
ひとまずコリスには入らないように言って、わしは着流しを脱いで湖に入る。
探知魔法オーン! 湖の中には……なんもおらんのか? 反応が無い。これぐらい大きければ、魚が居るはずなんじゃが……
「わ~~~!!」
「にゃ! コリス!!」
わしが湖の調査をしていると、コリスがバシャバシャと水しぶきを上げて入って来た。すると、顔に水が掛かったコリスは顔をしかめる。
「ぺっぺっぺっ」
「にゃ? どうしたにゃ?」
「しょっぱ~い!」
「なんにゃと!?」
わしは、湖の水を指先につけてペロッと舐める。
本当じゃ! これは……塩湖か? やった! これで塩が手に入る! 南に森を切り開いて海まで繋げようと考えていたが、こっちのほうが断然早い。いい所に来たのう。ぶはっ!
わしが喜んでいると、コリスがしかめっ面で水をぶっかける。そのせいで、わしの口にも水が入ってしまい、口が辛くなる。
なので、岸に上がって水魔法でうがい。毛もガビガビにならないように水をぶっかけて、ジュースを飲みながら湖の景色を楽しむ。
湖の周りが白かったのは、塩の結晶だったんじゃな。どうりで湖の近くは草も生えていないわけじゃ。今日はその辺の塩を次元倉庫に入れて持ち帰ろう。湖を一周すれば、かなりの量が手に入るはずじゃ。
それはそうと、リータ達は……まだ獲物と接触しておらんか。まぁ二人なら、白い獣であっても大丈夫じゃろう。新しい武器もあるしな。
リータには、盾に仕込んだ白魔鉱の鎖。15メートルもの長さで先端に刃を仕込んでいるから、遠距離攻撃、敵の拘束と使える。しかも、岩のお友達の鉄魔法も簡単に習得したから、遠隔操作も出来る。
わしが重力魔法で圧縮して作ったから、滅多な事では切れる事もないじゃろう。盾にも【光盾】の魔道具を使ったので、守る面積を広げられるから、リータの鉄壁を崩す事も難しい。
メイバイには、白魔鉱のナイフに【光一閃】の魔道具を取り付けてやった。これで前に使っていた切っ先を伸ばすナイフよりも、長い剣を作り出せるから、大型の獣でも大きな傷を付けられる。
【鎌鼬】も使えるようになったし、風の強化魔道具もあるから攻撃は多彩。素早さも相まって、捉えるのは難しいじゃろう。
これだけ強敵に備えているのなら、仮に手強い白い獣でも、逃げるぐらいなら出来るじゃろうし、通信魔道具もあるから、この距離ならしばらく持たせる事も出来るはずじゃ。
わしが安心しながら二人の動向を確認していると、獲物と接触した。それから二人は何やら動き回り、獲物と戦う。戦闘音はわし達の元まで聞こえ、木が倒れる音もするので、激しい戦闘が繰り広げられているようだ。
だが、探知魔法では遠距離攻撃を多用している事に気付き、わしが不思議に思っていると、しばらくして二人は戻って来るのであった。
「シラタマさ~~~ん」
「シラタマ殿~~~」
なんじゃ? 二人とも、青い猫に泣き付く男の子みたいになっておる……倒して戻って来たんじゃないのか?
「お疲れ様にゃ。でも、浮かない顔をしてどうしたにゃ?」
「「だって~~~」」
「にゃ~~~?」
二人は言い訳をしながら森を指差す。すると、森から得たいの知れない白い生き物が
へ? 白い……スライム? いや、ドロドロしているから、アメーバか?
「「ぜんぜん攻撃が通じないん(ニャー)です~」」
うん。そりゃそうじゃ。
どうやらリータとメイバイは、大きな白アメーバに、新しい武器も魔法も通じず、逃げ帰って来たようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます