311 川を探すにゃ~
麦の収穫大会が行われた翌日、種植え大会が行われ、滞り無く終わる事となった。
お母さんはホッと胸を撫で下ろしていたが、近々、米の収穫大会、ジャガイモ収穫大会もあるので気が抜けないようだ。
しかし、一度経験した事だ。次はもっと上手く人員を操れるだろう。
だから今日は休んでね? 息抜きも大事だからね? みんなも休みだからね? リータ~! お義母さんを休ませて~!!
まだ働こうとするお母さんは、ドクターストップでリータに止めさせる。今日は家族水入らず、ゆっくりして欲しい。メイバイにも家族とゆっくり休むように言ったので、わしはコリスと共に街を出る。
ガシッ!
出ようとしたら、リータとメイバイに捕まって、問い詰められた。
ソウには行きませんって~。今日はラサに行くんです~。仕事なんです~。ダメなら休みます~。
一瞬、キャバクラ通いを疑われたが、仕事をちらつかせると、笑顔で送り出された。信用はないけど、休むぐらいなら仕事に行けとのこと。
コリスと街を出ると、ラサの街まで追いかけっこ。到着したら、ここでも歩いてセンジの屋敷に向かう。
当然、コリスが驚かれるけど、わしも驚いたり拝まないでくれる? あ、久し振りに見たからですか。そうですか。
そうして屋敷に着いたら、センジとウンチョウに若干キレられた。
「コリスちゃんと、ここまで歩いて来たのですか!?」
「連れて来るなら、連絡を入れてください!!」
とのこと。わしは二人を
「コリスも我が国の国民にゃ。だから、制限は付けたくないにゃ」
「そうですけど……」
「センジだって、かわいいって言ってたにゃ~。それなのに、驚かれたり騒がれたりしたら、かわいそうにゃろ~? にゃ~?」
「ホロッホロッ」
「わかりました……」
わしがコリスを撫でまくり、ご機嫌な声が出ると、センジも渋々だが了承してくれる。どうやら、コリスが害のないリスと書いた立て札を、街に立ててくれるようだ。
皆が落ち着いたところで、会議室に居た猫耳族の男が何者かと聞くと、ウンチョウの息子、名をチョウシュンと言うらしい。現在、センジの元で勉強をしているようだ。
そこで、わしの街の代表が変わった事を思い出したので説明する。
「先日挨拶した他国の者を代表にですか……」
「そう言えば、ウンチョウには紹介はしたけど、役割を話していなかったにゃ。まぁ不安視するのはわかるにゃ。でも、この国の事を知らないから違う意見を聞けて、次の猫会議は面白くなるかもにゃ~」
わしの言葉に、軍を統括するウンチョウが意見する。
「何を
「そこは、わしがしっかり手綱を握るにゃ。出したくない情報は、わしの街では行わないからにゃ」
「上手くいけばいいのですが……」
「心配しなくとも大丈夫にゃ。あ、それと、街の代表をツートップにしようと思うにゃ」
「ツートップですか?」
センジが質問するので、わしは詳しく説明する。
「なるほど……二人で案を出し合い、議論するわけですか」
「頭がひとつだと、得手不得手も出るにゃろ? それを解消する策にゃ。まぁその下に、もっと案を出す人が居ればいいんにゃけどにゃ」
「街の発展に、多くの良い案が生まれそうですね。でも、割れる事もあるのでは?」
「割れた場合は、チェック機能のわしを使ってくれたらいいにゃ。その決定で、わだかまりは無しにゃ」
「それなら問題なさそうですね。わかりました!」
センジの決定にウンチョウも頷き、チョウシュンが代表として、センジと並ぶ事となった。
「ところで、ウンチョウの居場所はここでいいにゃ?」
「と言うと?」
「猫の街と、ラサで仕事をしたにゃろ? どっちが軍を指揮するのに、適していたにゃ?」
「ああ。そうですね……ラサのほうが、国の中心に近いのでやり易いと思います」
「にゃるほど。じゃあ、ここを軍の本拠地として、建物なんかも新設したらいいにゃ」
「たしかに、軍の宿営地があったほうが都合がいいですね」
「センジ達と相談して作ってくれにゃ。それと……」
わしは、東の国にあるハンターギルドの説明をし、狩り部隊を新設するように指示を出す。これは各街が関係する事なので、次の猫会議に間に合うように、案をまとめておいてくれたらいい。
宿営地を作るとなれば、資金は必須なので、帝国金貨を半分ほど吐き出す。かなりの大金だが、軍に従事する者は多く居るので、武器や備品、食事に給料と使えば、一年も持たないかもしれない。
お金の話になると、まだお金を使った事の無いウンチョウの顔が曇ったので、ソウから奴隷商人を派遣するから金勘定は任せるように指示を出す。それと、センジにも協力するように言っておいたので、なんとかなるはずだ。
わしは何もしないのかじゃと? したじゃろ?
金を払っておしまいじゃと? 指示もしたじゃろ?
もっと何かしろじゃと? わ、わしは忙しいんじゃ! リータとメイバイにチクらないでくださ~い。
結局わしも、ちょくちょく顔を出すように言われて、涙を呑んで受ける事となった。
それらの話が終わると、今日来た本題に入る。
「センジ。麦の成長具合はどうにゃ?」
「あ! 猫陛下が撒いてくれた水のおかげで、もうじき収穫できる事となりました。ありがとうございます!」
「あ~……喜んでいるところ申し訳ないんにゃけど、ちょっと分けてもらうにゃ」
わしは賠償金の話を持ち出し、収穫量の見込みを聞くと、約半数を奪い取る事を決定する。
「猫の街は収穫した物を全部払うんだから、勘弁してくれにゃ~」
「仕方がない事ですよね。わかりました」
「まぁもう一度収穫すれば、来年まで余裕で持つし、今年は飢える人がいなくなるにゃ」
用件が終わるとまた来ると言って、コリスを連れて会議室を出る。
ガシッ!
だが、センジとウンチョウに肩を掴まれた。どうやら、コリスと街を歩く事を危惧しているようだ。
街と農園を少し見学する予定だったので、「やっぱり……」と呆れられた。なので、お目付け役のセンジと共に街を歩く。
お昼になっていたので買い食いをするが、猫の街と食べている物が同じだったので、コリスと一緒にガッカリする。
気落ちしたわし達をセンジが慰めるが、食糧難なので、悪いのはわし達だ。逆に謝ると、秋にはラサ特産の料理が復活するから、待っていてくれと言われた。
その言葉に、わしとコリスは「ひゃっほ~」と小躍りしていたら、センジに笑われる事となった。
そして農園見学が終わると、さっちゃん2に変身したコリスをお姫様抱っこして走り出す。もちろんコリスは、初めての経験でご満悦。
でも、途中で変身魔法を解かないで欲しい。大きさが倍も違うから、前のめりに倒れてしまった。コリスも地面にバウンドして止まって「ムキー!」となる。だけど、怒るのは筋違いだ。
ちょっとした冗談のつもりだったようだが、大事故に繋がり兼ねない。コリスも学習したので、これからは抱いている時は、そんなお茶目な事はしないだろう。
それからも、わいわいと猫の国での生活を送り、ジャガイモの収穫の終わったある日、わし達は飛行機で東に向かう。
同乗者は、リータ、メイバイ、コリスだ。コリスの定位置は最後尾だったが、わし達と離れているのは寂しいだろうと思い、運転席の真後ろにしてある。
今日は東にあると聞いていた川の探索。上空から探すので、すぐに見付かるだろう。
「「「うわ~~~」」」
「真っ黒です……」
「落ちたら戻って来れなさそうニャー」
「モフモフ~」
数時間のフライトを続けると、リータ達から感嘆の声が聞こえる。
飛行時間から察するに、人の足でおよそ十五日。これは直線距離なので、森を歩くとしたら、その倍以上を要するだろう。
「たしかに、ここまで真っ黒だと怖いにゃ~」
「こんな所に、着陸は出来るのですか?」
「まぁ穴に見えるけど、地面はあるにゃろ。その心配より、川を探してくれにゃ~」
皆には望遠鏡を渡しているので、左右をチェックしてもらう。しかし、黒い木が思ったより大きいのか、なかなか発見できずにいる。
「ぜんぜん見付からないニャー」
「う~ん……もっと高度を上げてみようかにゃ?」
「ニャ!」
「見付かったにゃ?」
「違うニャ! 鳥ニャー!!」
「そんにゃの、どこにだっているにゃ~」
「いないニャ! 白い鳥ニャー!!」
「シラタマさん……しかも、こっちに向かって来ています!」
「にゃに~!?」
わしが左を見ると、巨大な白い鳥はかなり近くに迫っていた。
「凄いスピードニャー!!」
「みんにゃ! しっかり掴まっているにゃ~!!」
「「はい(ニャ)!」」
「モフモフ~」
コリスの返事らしき声を聞いて、わしは白い鳥を振り切ろうとする。外に出て戦いたいところだが、発見が遅れたので外に出るのは難しい。地上に降りて戦いたいが、降りる場所も見付からない。
なので、逃げるように操縦するが、白い鳥に後ろにつかれてしまい、追い掛けられながら川を探すように指示を出す。
「どうにゃ? あったにゃ?」
「いえ……あ! あそこ! 川じゃないですか?」
「本当ニャー!」
「じゃあ、そっちに……」
「「キャーーー!」」
わしが川を滑走路にしよう考え、機首を向けると、機内に衝撃が走る。白い鳥の放った【風の刃】が直撃したからだ。
追撃があるかもしれないと感じたわしは、右に左に機首を振って飛行機を蛇行して飛ばす。すると、【風の刃】が前方に何度も消えて行った。
「さっき、どこに当たったにゃ!?」
「わかりません……」
「じゃあ、翼を確認してくれにゃ!」
「「はい(ニャ)!」」
わしが慌てながら指示を出すと、リータとメイバイは機内を走り、翼を観察する。
「左翼は問題ないです!」
「右翼は……亀裂が入っているニャー!」
「わかったにゃ! すぐに直すにゃ~!」
飛行しながらだから難しい修理になるが、集中すればなんとかなるはずじゃ。どこじゃ? 右翼のこの感じは……ここか!
「ニャ! 折れたニャ……」
「にゃんですと!?」
時すでに遅し。わしが亀裂を見付けた瞬間、メイバイの目の前で翼は「バキッ」と折れた。その結果、飛行機は右に傾く。
「「キャーーー!」」
飛行機の傾く中、もう一度機内に衝撃が走り、二人の悲鳴があがる。【風の刃】が、今度は左翼に当たって、そのまま翼が折れたようだ。
「シ、シラタマさん!」
「わかっているにゃ! 緊急着陸にゃ~~~!!」
飛行機は翼を無くし、弾丸のように飛ぶ。そこを白い鳥が追撃する為に追い掛け、【風の刃】を放つ。
幾度かの衝撃音が機内に響く中、操縦不能となった飛行機は、凄い速度で黒い森に突っ込むのであった。
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