287 移住者を運ぶにゃ~
変身魔法を伝授したわしは、皆に変身の維持をさせていたが、思ったより魔力の消費が激しいようなので、小一時間もしない内にコリスがギブアップ。ノエミとワンヂェンも、その数分後には魔力が枯渇しそうになって、ギブアップとなった。
ノエミとワンヂェンには、わしの作った【土玉】を吸収させて魔力が回復したら再チャレンジ。どうしてもノエミは巨乳にならないみたいで、地面に手をつけていた。
からまれると面倒なので、ノエミは無視。コリスに吸収魔法を教え、回復させながらメイバイとリータに魔法のレクチャー。
メイバイは【
そうこうしていると夜が来て、ゴロゴロ就寝。イエスノー枕は、今日も「ノー」だ。
そして翌日……わしは仕事があるので、リータとメイバイを誘って街を出る。移動手段は飛行機。コリスの世話は、ワンヂェンとノエミ、シェンメイにも頼んだので問題はないだろう。
飛行機の移動は短時間。ラサの街近くに降りると車に乗り換え、ウンチョウを拾う。そしてまた飛行機に乗り換えて離陸する。
今日の仕事は、村と街から猫の街に移住する民の移動だ。ついでに猫の国の軍隊、最高責任者のウンチョウとの、防衛プランのおさらいをさせる。
数日前も同じルートで移住の希望を聞きながら、防衛プランを話し合ったのだが沈黙が多かったので、リータとメイバイを誘ったわけだ。わしにはおっさん趣味はないからな。
移動時間も一時間もすれば北東の村に到着。騒ぐ移住者と街に移送する生き物を貨物車両に乗り込ませ、二号車で引いて次の村へ出発。その村でも騒ぐ移住者を積み込み、ソウの街にぶっ飛ばす。
ソウでは昼食を兼ねて小休憩。ソウからの移住者はすでに街の外に出ていたので、リータ達に世話をお願いして炊き出しを行ってもらい、わしとウンチョウは車のまま宮殿まで進む。
馬に乗った兵士が道を作ってくれたが車は目立つので、人が多く集まって来ていた。もちろん無視して宮殿に到着すると、揉み手のホウジツに挨拶する。
「もうかりにゃっか?」
「ボチボチでんにゃ~」
「それで、例の研究はどうなったにゃ?」
「それはもう、お猫様の考え通りになりました。ささ、見てください」
ウンチョウにはガクヒ将軍と話し合うように言って、わしは揉み手で先を行くホウジツに続き、地下に降りる。長い螺旋階段を降り、わしと皇帝が闘った地下空洞に入る。
相変わらず魔力濃度が高いのう。例の物は……一番奥か。あの辺から魔力が出てるっぽいから、そこに棚を作ったんじゃな。
わしとホウジツは一番奥まで歩くと、置いてある宝石や角を手に取る。
「ん……よし。光ったにゃ。これは、誰も魔力を注入してないんにゃろ?」
「はい。お猫様の作ってもらった物を、放置しただけです」
「魔力が満タンになるまでは、どれぐらい時間が必要にゃの?」
「はっきりとはわかりませんが、丸一日。二日も置けば、十分でしょう」
「それにゃあ……」
「はい! ボロ儲けでございます~」
「にゃ~はっはっはっ」
「わ~はっはっはっ」
何故、わし達が高笑いしているかと言うと、商売の話だ。これからトンネルが繋がり、東の国との貿易をするにあたって必要な物……光だ。
トンネルを抜けるには、ケンフから四日掛かると聞いていたので、どうしても光が必要になる。長過ぎるので、照明を付ける事も出来ない。
この光の魔道具を使って、レンタルで金を取ろうと言う訳だ。ここで魔力を補充出来るのならば、人件費の節約になるので東の国が同じ事をしても、価格競争で負ける事はない。
明るい未来に、わし達は笑いが
「さて、研究の成果は出たにゃ。次は鉄だにゃ~」
「そちらは、まったく反応は無いですね。時間が掛かるのかもしれません」
「にゃるほど……」
皇帝が白魔鉱の武器を山ほど持っていたから、ここに保管すればレベルアップするかと思ったが……ハズレか? まだ数日しか経っていないから、これは経過観察かな? 魔力を補充できるだけでも十分な成果じゃしのう。
「まぁ数年単位の長いスパンでやってみるかにゃ」
「ですね。せめて、皇帝の親族や上層部が知っていてくれたらよかったのですけどね」
「帰ったら、書物を探させてみるにゃ」
「お願いします」
「それと、もうひとつ面白い構想があるんにゃけど……乗るにゃ?」
「おお! お猫様の発想は金が湧いて出るようなモノ! このホウジツ、一生ついて行きます!」
「にゃはは。大袈裟だにゃ~。こう言う物を考えているんにゃけど……」
わしの話を聞いて、ホウジツはお金のシャワーが聞こえて来たようだ。それから二人で高笑いしながら地下空洞を出て、長い階段を登る間に各種報告を受ける。
ただ、わしはこれから忙しいので、残りの報告は報告書で確認すると言って、ソウの街をあとにした。
ソウの移住者を乗せた貨物車両は一両増えたが、順調に村訪問を行い、途中、休憩でトンネルに寄る。
トンネルには砦が築かれており、そこにはわしに仕えるようになった責任者のリェンジェがいる。前回来た時はウンチョウを紹介し、挨拶を済ませていた。
猫耳族が軍のトップだと、言う事を聞いてくれないかと思ったが、意外とすんなり受け入れてくれた。おそらく、猫よりマシなんだろう……顔に出ていたからな!
今日、顔を出した理由は、ウンチョウが送った兵の引き継ぎが上手くいったかの確認だ。
「それで、引き継ぎは上手くいったかにゃ?」
「はっ! 皆、長く任務に就いていたので、喜んでおりました」
「まだ国がバタついているから先になるけど、ウンチョウが持ち回りで兵を交代させてくれるから、リェンジェも街に戻れるからにゃ」
「え……いいのですか?」
「もちろんにゃ。休みも必要だからにゃ」
「ありがとうございます! 猫王様の期待にそえるよう、粉骨砕身いたします」
「わしより、ウンチョウを支えてやってくれにゃ~」
「は、はい!」
「それじゃあ、近々トンネルを通過するから、その時はよろしくにゃ~」
挨拶を済ませると、貨物車両を引いて村訪問を再開する。その途中、盗賊に襲われた村に寄り、死に掛けて完全復活していた村長達に拝まれる。
どうやら巨象肉が効いて奇跡的に助かったみたいだけど、前回来た時からめちゃくちゃ拝まれて恥ずかしい。猫神様とかいらんから!
村人から拝まれていたら、ウンチョウが派遣した兵士が目に入ったので、話を逸らす為に質問してみる。
この兵士は、契約魔法で縛られたエンアク将軍が率いており、村々を巡回させている兵士だ。西の山側を南から北に進み、村で五日の奉仕活動と休養をとると、次の村に向かう。
全員、犯罪者だが、奴隷紋で縛っているから村に滞在させても問題ない。戦う事の出来ない者もいるが、これがこの国の法律。無理矢理にでも戦ってもらう。
生き残る事が出来たなら自由の身だが、おそらく軍で雇う事となるだろう。
その兵士は犯罪者なのに、村の者から
よけい戸惑っていたが、猫が喋っているからだろう。
そんなこんなで移住希望者の居た村を回りきり、ギリギリ日が暮れる前に、ウンチョウをラサに送り届けると、ここでも移住者を乗せる。そうしてウンチョウには、また迎えに来ると言って、猫の街に戻る。
猫の街に着いた頃には夜も更けていたので、わしの出した光魔法を頼りに街を進み、炊き出しを行ってから住居にご案内。詳しい説明は明日すると言って、今日の所はシェルターに帰る。
そして翌朝、移住者を集めて猫の街での注意事項を軽くし、各々の仕事の説明をする。
猫の街は現在、産業らしき物は農業しか無い。移住者は農業以外の産業経験者を募ったので、一からこの街の産業を作ろうという算段だ。
ひとまず、商業をする者、工業をする者のグループを分け、その中から担当者を決めてもらう。
担当者が決まると残りの者は住人に街を案内させて、わし達は話し合い。街のどの部分を商業エリア、工業エリアにするかを決める。
居住区は南に集中しているので、北側を二つに分けて考える事にした。
これからラサの街との流通が始まる事を踏まえて話し合うと、商業エリアはすぐに西に決定する。まだまだ人数が足りないので、大通りに面した店しか開店できないが、また区画整備をするかもしれないと付け加えた。
必然的に北側の東を工業地区となるが、鍛冶や音がひどい工場は最北になるように命令する。
ほぼほぼわしが決めてしまったが、何か不満があるようだ。
賢すぎるじゃと? ありがとう。
飲んでいる
猫じゃと? 猫だにゃ~。
ぬいぐるみじゃと? だから猫って言っておろう!
不満の内容は、わしの見た目の不満なので、適当にあしらってやった。
住み分けが終われば、次はいつから仕事を始めるかの話に移る。
工業地区は職場が整いしだい始める事が出来るが、商業地区は貨幣の使用日からとなる。まぁ南側を集中的に修理をしていたので、まだまだ手付かずなので、どちらも時間が掛かるだろう。
お出掛けもあるので、二週間を目処に運営できるように指示を出し、あとは担当者の裁量に丸投げ……任せて、わしはサボる。
コリスの巣に潜り込んで一緒にお昼寝していたら、当然リータとメイバイに見付かって、鬼のように怒られた。
「まったく……」
「シラタマ殿は、目を離すとすぐにサボるニャー」
手が空いたから、ちょっと休んだだけなのに。それをガミガミ言いよって……
「「ガミガミ?」」
「すいにゃせん!!」
心の中で反論したら、二人の怪光線で毛が燃えてしまった。ホンマホンマ。
このままでは説教が延びるので、仕事に行くと言ってコリスと散歩。なのに、二人はついて来てしまった。心の声の散歩に反応したようだ。
仕方がないので、忘れていた街に連れて来た生き物の小屋を作り、同時に世話係で連れて来ていた者に、子供を預けて仕事を教えさせる。
それが終われば、長居をしたくないので次の仕事、クローバー畑のチェックだ。数十ヵ所を他の畑に移植して、面積を広げる。ここまでくれば、もうわしの手はいらないはずだ。牛がぷりぷりと勝手に増やしてくれる。
二人は本当に仕事をしている事にビックリしていたけど、そんなに信用が無いのか? 無いのですね。そうですか。
二人も手伝ってくれたので、移植は早くも終了。ちょっとお茶休憩してもいいですか? ちょっとだけですか。そうですか。
とりあえず休憩していい事になったので、レジャーシートを広げて皆でお茶にする。ちなみにコリスには果汁ジュースだ。
「さてと~……こんにゃもんかにゃ?」
「なにがニャ?」
「仕事の話じゃないですよね?」
「形の話にゃ」
「「かたち(ニャ)??」」
リータとメイバイに、わしの言葉の意味が上手く伝わっていないようで、首を傾げてしまった。
「ある程度、国の形は出来たにゃろ? だから、そろそろ東の国に顔を出そうと思うにゃ」
「あ……国の長どうしの話し合いですか!」
「貿易の話もニャー!」
「そうにゃ。みんにゃと久し振りに会いたいにゃ~」
「東の国に帰ったら、また騒がれちゃいそうですね」
「そうだにゃ~」
「家に帰ったら、またうるさそうニャー」
「そうだにゃ~」
わしとリータとメイバイは、東の国王都での騒がしい毎日を思い出し、懐かしい目で遠くを眺める。
その時間は長くは続かず、コリスがお腹がすいたと急かすので、笑いながら街に帰るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます